これまでのエピソードはこちらからどうぞ。
その七、二番煎じでもいいの?
口切(くちきり)の茶事に、利休が古い丸釜を使いました。利休七哲のひとりが、それに似た釜を探し出して、茶会を催したときのこと。「私が丸釜を出したならば、あなたは四方釜(よほうおがま)をお使いなさい。この釜は私のものによく似ていますが、人真似では面白くもありません」
●口切の茶事 冬の開炉(かいろ)の時期に、茶壺の封を切ることをテーマにした茶事。
その八、砂糖は要らない
飛喜百翁(ひきひゃくおう)という人物が利休を招いたときに、西瓜に砂糖をかけて出したので、利休は砂糖のないところだけを食べて帰りました。
「西瓜には西瓜の味があるのだから、それを生かすのが趣向というもの。茶人として似つかわしくないふるまいです」と笑って語られました。
その九、庭の掃除で
師の武野紹鷗(たけのじょうおう)は、利休を試そうと考えて庭掃除を命じました。
利休が庭に入ると、箒(ほうき)のあとも鮮やかにきれいな状態です。手の入れようもありません。しかし樹を揺さぶったところ、ひらひらと葉が落ちて一段と風情が増しました。そして紹鷗に「仰せのとおりに掃除を終えました」と報告したのです。
紹鷗は利休に感じ入り、すべての秘伝を授けるようにしたのでした。
※12のエピソードは、『長闇堂記(ちょうあんどうき) 』『茶道四祖伝書(ちゃどうしそでんしょ)』『茶話指月集(ちゃわしげつしゅう)』『源流茶話(げんりゅうちゃわ)』『南方録(なんぽうろく)』『茶窓閒話(ちゃそうかんわ)』『松風雑話(しょうふうざつわ) 』といった昔の茶書の現代語訳を参考にして作成しました。
※本記事は雑誌『和樂(2022年12・2023年1月号)』の転載です。