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2025.06.16

ゴミ屋敷になったら引っ越せばいいじゃない? 北斎・93回の仰天転居エピソード │浮世絵師・葛飾北斎を知るAtoZ【H】

約70年にわたって活躍した浮世絵師・葛飾北斎。ただひたすら絵を描くことに執着し続けた北斎の人生は、波乱万丈にして奇想天外! 破天荒な絵師・北斎の人生をAからZの26の単語でご紹介します。今回はH=【引っ越し】!

北斎AtoZ
H=【引っ越し】90歳になるまで93回も転居していた!?


北斎が変わり者であったことを伝えるエピソードに、頻繁に引っ越しをしたことがあります。

その回数はなんと93回(!)。
ほとんどは生まれ育った本所割下水(ほんじょわりげすい)を中心とした現在の墨田(すみだ)区エリアで、1日3回も引っ越しをしたことがあったとか。

生まれ育った界隈を転々としていた

北斎の江戸での行動範囲は、上の図の本所界隈が中心で、左上の大きな敷地の御竹蔵は「置いてけ堀」の地で、現在の両国駅のあたり。そこから下に伸びる水路が現在の北斎通り。地図上の番号に住んでいた時期は以下のとおり。

1.誕生の地、本所割下水 2.幼少期を過ごした松坂町 3.49歳、83歳、88歳のころに住んだ亀沢町 4.50歳のころ住んだ両国橋近辺 5.61歳のころ住んだ緑町 6.80歳のころ住んだ石原片町 7.81~85歳を過ごした榛馬場(はんのきばば) 8.86歳のころ住んだ石原町 地図のエリア以外にも、浅草界隈、九段下(くだんした)、錦糸町(きんしちょう)、清澄白河(きよすみしらかわ)などに住んでいたことが確認されている。『江戸切絵図・本所絵図(えどきりえず・ほんじょえず)』景山致恭、戸松昌訓、井山能知 尾張屋清七 嘉永2~文久2(1849~1862)年 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1286679 (参照 2025-06-07)

最後に暮らしたのは、かつて住んでいた家。以前、北斎が住んでいた時に荒れ放題にしたため、長らく借り手がいなかったのだそうです。

そんな暮らしぶりだったので、天保7(1836)年に刊行された、各ジャンルの著名人の住所を紹介した『広益諸家人名録』に、北斎は「居所不定」と記されるというありさまでした。

どうしてそんなに引っ越したのかというと、作画に追われて掃除をするひまがなかったからだとか。

引っ越しすぎて、江戸の人名録の住所欄には「居所不定」

右ページの3番目に書かれた葛飾北斎の名の右側に「居所不定」の文字が見える。『広益諸家人名録(こうえきしょかじんめいろく)』西邨[宗七] 編 須原屋佐助 天保7(1836)年 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2543329 (参照 2025-06-07)

絵を描くことが第一だった北斎にとって、家は生活よりもむしろ絵を描くための場所。
今でいう〝ゴミ屋敷〟になってしまうと、掃除するのではなく、別の家に移っていたのだとか。

現存する北斎の作品は3万点を超えています。
そこから。1日に手がけていた作品数を考えると、およそ1~2作を仕上げていたことになります。
たとえ早描きといわれる北斎でも、それだけの作品を毎日描き続けるとしたら、生活がおろそかになるのも仕方のないことだったのかもしれません。

転々とした家で熱心に筆をとる北斎

左側にいるのは、絵師としての才能を受け継いだ、出戻り娘の応為(おうい)。世界的アーティスト北斎の制作現場は、驚くほど質素。『北斎仮宅之図(ほくさいかたくのず)』 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1286947 (参照 2025-06-07)
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和樂web編集部


構成/山本 毅 ※本記事は雑誌『和樂(2017年10・11月号)』の転載・再編集です。 アルファベットに用いた葛飾北斎の絵は、『戯作者考補遺』(部分) 木村黙老著 国本出版社 1935 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1874790 (参照 2025-06-04)
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