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2025.06.10

和のスパイス“実山椒”を万能ソースに。梅雨も夏も爽やかに乗り切るレシピ【今宵、お酒さそう料理を】

家にこもる理由をくれる雨。案外好きなのである。雨の音に耳を傾けていると自然と心も穏やかになる。せっかくなら、そのままゆっくり一杯やる夜を迎えたい。さて、何を作ろうか。こんな時、私は料理人の田中 桂(かつら)さんを訪ねる。桂さんは、旬の食材を使った万能ソース作りと、お酒に合うアレンジメニューを生み出す達人なのだ。今宵も、桂さんに教わった季節に寄り沿うシンプルレシピ、そっとお届けします。

実山椒ソースで爽やかに。

小俣:桂さん、この時期どんなお料理を楽しんでいますか?

桂:青梅も実山椒も、「青い実」を食べるというのは今の季節ならでは。実山椒は、塩漬けを万能ソースにしておくと、いろんなお料理に合わせて楽しめるので毎年やっています。

実山椒にはしっかりとした主張があるので、何と合わせても「実山椒を食べている」感が強くなってしまうけれど、ソースにすることで他の食材と調和したお料理に仕上げられるようになるんです。いろんな味わいで爽やかに季節のお料理が楽しめるのでオススメです。

小俣:梅雨から夏のジメジメ期、爽やかな気分にしてくれるお料理は嬉しいですね。ではさっそくソース作りからお願いします!

◆実山椒ソース

野菜、お肉、お野菜の料理どれにも使える万能ソース。そのまま餃子や生春巻きのタレとして使っても、夏気分高まるサルサソースにしても美味しい。

(材料)
【材料a】
・たまねぎスライス 150g
・米油 45g(50cc)
・にんにくスライス 3〜4枚
【材料b】
・実山椒の塩漬け 100g
・醤油 大さじ1/2
・酢 大さじ1
ーー
・塩 小さじ1/2
※塩は、出来上がりのソースの味を見て、少し濃いめの味に仕上がるように調節して加える。

<作り方>
1.【材料a】を弱火で炒め、たまねぎが透明になったら火からおろし、粗熱を取る。
2.ミキサーやブレンダーの容器に1と【材料b】を入れて、ペースト状にする。
3.冷蔵庫で半日寝かせる。
★保管:冷蔵庫で2週間ほど(半日寝かせた後に冷凍し、長期保存も可能)。

たまねぎは、これくらいの透明感まで炒める(飴色にはしない)。

小俣:桂さんのお料理、火をつける前に食材を全部フライパンに入れるんですね。

桂:そうなんです。火をつける前に入れちゃってOKです。少しニンニクを入れると、実山椒のスースー感が締まります。玉ねぎまで加えて火にかけます。フライパンが温まるまでは強火で、あとは弱火で火を通しましょう。

火の通った食材をブレンダーにかける。なんだか「ずんだ」みたい。やや形が残るくらいのペースト状に。塩は、ペーストになってから加える。種類はお好みで。桂さんはヒマラヤ塩を使っていました。

冷蔵庫で半日馴染ませたら出来上がり。表面にカットしたクッキングシートを落として、空気に触れにくい状態にすることで傷みにくく。

冷蔵で2週間ほど保管可能ですが、長く使いたい場合は冷凍庫へ。ジップロックなどの袋に入れ伸ばして凍らせれば、その都度必要な分だけパキッと折って使えます。

【ソースの塩加減は「強め」で。】
桂:ソースの塩加減は、実山椒の味と渡り合える量に。お料理する時にソースだけで味が決まるようにできると後が楽チンです。ここでしっかり塩の効いたソースにしておきましょう。

小俣:では、さっそくソースを活用したお料理お願いします! ひと皿目は、この季節にときめく食材が並んでいますね〜。

◆パイナップルとセロリのマリネ 実山椒の香り

切って和えるだけ!
これからの暑くなる時期にぴったりの、爽やかフルーティな一皿。コッテリしたものを食べたあとの口直しにも。

(材料) ※分量はお好みで
・パイナップル:一口サイズにカットする
・セロリ:5mmスライスにカットする
・実山椒ソース
・ブラックペッパー

<作り方>
1.カットしたパイナップル、セロリ、実山椒ソースをボウルに入れてよく混ぜる。
2.器に盛り、ブラックペッパーを振る。

台湾パイナップルが好きで、この時期はよく丸ごとサイズで買っちゃう! という桂さん。
セロリの筋が気になる場合は、こんな感じで包丁を当てて引くと綺麗に取り除けるそう。5mmくらいのスライスに。
柔らかい果物はさっくりと混ぜるのが基本ですが、パイナップルとセロリは身がしっかりしているので、味を染み込ませるつもりでよく混ぜています。盛り付けたら、最後にブラックペッパーを。

桂:食材から水分が出てしまうとイマイチになるので、食べる直前に混ぜるのがおすすめです。

◆アスパラガスの鶏肉巻き蒸し 香味野菜と実山椒ポン酢添え

続いては、ひんやり美味しいお肉料理。ゼラチン質のところもたまらない!

(材料)
・鶏もも肉 1枚(300g)
・アスパラガス 2〜3本
・料理酒 大さじ1
【材料a】(合わせておく)
・実山椒ソース 大さじ1
・ポン酢 大さじ1/2
__
・香味野菜:お好みの量。※食べやすい大きさにカットしておく。

<作り方>
1.アルミホイルの上に鶏肉を置き、観音開きにする。(厚みを均等にする)
2.1に料理酒を振り、アスパラガスを乗せて巻く。
3.30分間蒸して、冷やす。
4.1cmの輪切りにして器に盛り、香味野菜、合わせておいた【材料a】を添える。

鶏肉の皮が大きい時は広げる。分厚いところを開く。開いたら、お酒を振る。
巻く時のポイントは、巻き始めをギュッときつめにすること。巻き終わりは下側に。こうすることで、巻いたままの形を維持できる。アルミホイルで包んで左右を捻ったら蒸し器へ。

桂:蒸し器がなかったら、水を入れた上に網を敷いたフライパンでもできますよ。 鍋の中で蒸気が回っているくらいの煮え加減で蒸します。

30分ほどかけて蒸しあがったら粗熱を取り、アルミホイルに包んだまま冷蔵庫で冷やす。この状態で2日間保存OKなので、前日に作っておいて翌日に食べることも。

カットする時は、崩れやすい端からではなく、真ん中から包丁を入れると綺麗な断面に。

香味野菜は、みょうが、セリ、ミツバ、かいわれ大根などお好みで。ペアリングのおすすめは甲州ワイン。香りの強い野菜にも合わせやすく和の食材にもなじむのだそう。

【材料a】を合わせて作った実山椒香るポン酢を器の中心に盛り付けて、出来上がり!

【盛り付けのポイント】
小俣:巻物を綺麗にカットするには「端ではなく、まずは真ん中から包丁を入れる!」に唸りました。ロールケーキやお寿司……いろんな巻物を切る時に生かせますね。
どうしても出てしまう、端の崩れたところはどうされていますか?

桂:せっかく作ったものは全て目でも楽しんで食べたいですよね。形の崩れた部分は別の方法で美味しさを伝えみようかと。両端はどうしても崩れるので、わざと崩して別の盛り付けにすると良いです。

小俣:ほう、わざと崩す……(ドキドキ)。

こちらが、わざと崩した両端部分。ボウルに移し、【材料1】と絡めてお皿の上に。別のお料理に変身を遂げている……!?

桂:これは「杉盛り(すぎもり)」と呼ばれる日本料理の盛り付けで、茶会席などでも使われます。円錐状に食材を重ねて杉のように。

小俣:最初のお料理とガラリと印象が変わりました。崩れちゃったからしかたなく……ではなく、崩れているからこその魅力がある1皿になっていて、みんな活躍してて美しいなぁ。

実山椒と乳製品、イイ組み合わせ

この日の食卓には、2皿に加えて実山椒ソースを使った爽やかなディップがパンに添えられていました。

桂:この白いディップは、水切りしたヨーグルトに実山椒ソースを混ぜたものなんです。実山椒ソースは乳製品と混ぜると痺れが和らぐので、おすすめです。
ココナッツミルクで煮込み料理をする時に入れても美味しくって、実山椒の香りにフォーカスしたくてミルク系とあわせるという作戦でお料理することもありますよ。

小俣:実は私、痺れ感が強いスパイスがあまり得意ではなくて。今日のソースはスパイスと言っても刺激の主張ではなく、お料理と一体になって季節を運んできてくれる口当たりと香りが堪能できることが嬉しかったんです。実山椒が怖くなくなりました。ヨーグルトと和えられたこのディップは、その調和の象徴という感じがしました。まろやかだけど、実山椒をしっかり味わってるぞ、爽やかな気分がたまらないぞ〜と。

甲州ワインの特徴、相性

小俣:最後に、この季節のお料理とお酒の相性についてもおすすめポイントがあれば教えてください。今日は、香味野菜と甲州ワインの組み合わせを紹介いただきましたね。

桂:私は甲州ワインが大好きで。和食にもよく合うなぁと思うんです。甲州は和の柑橘系の香りと苦味が特徴で、ジメジメした季節を爽やかにするハーブ系やトロピカルなフルーツとも相性抜群です。柑橘系の香りだから食材と関係性を結びやすいというのもあるのかもしれません。
香りが柔らかくて、海外の葡萄品種のような個性が立っている感じと違う佇まい。どちらのワインも魅力的ですが、香りがぶつかりにくいので、和のお料理に合わせやすいなと感じます。

小俣:なるほど、お互いを讃えあう感じですね。

桂:そうそう! それから、近年流行っているオレンジワインも和食に合わせやすいですね。お醤油系にすごく合うと言われています。ポン酢にも。我が家は昨晩、豚肉のソテーと合わせて飲みましたが良い時間になりました。甲州ワインは鶏肉、オレンジワインは豚肉という感じかも。深く悩まずに、色々なお酒とまずは楽しんでみてくださいね。

雨の日は、部屋でゆっくりとお酒とお料理を。食卓で季節を味わいたいですね。

___

▼これまでの桂さんによる旬の食材を使った万能ソース&アレンジレシピ。
簡単なお料理にソースを加えるだけで、グッと季節の味わいが増してお酒も進みます。
◆秋の夜長レシピ、生姜とスパイスのソースで広がるワイン時間。
◆酒の肴にもおかずにも。食卓に春を知らせる「ふきのとうソース」レシピ
◆思い立ったらピクニック! 手軽・美味しい・ときめくオープンサンドレシピ

訪ねた料理人


田中桂(たなか かつら)
お酒さそう料理人。辻日本料理専門学校を卒業後、創作懐石料理、家庭料理をメインに、エスニックやビストロでも経験を積む。池尻大橋にて季節料理・酒処”さそう”店主をつとめた。お料理教室の講師、サントリー寺子屋、NHKラジオレギュラー出演、料理雑誌ダンチュウや食楽、料理通信にてレシピ公開を手がけるなど活動は多岐に渡る。

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小俣荘子

淡路島生まれ、横浜育ち。海が見えると安心する。ある夏、腕に火傷を負って治療のため長袖必須に。猛暑に溶け落ちる窮地を浴衣に救われ涼しく過ごす。以来、昔ながらのものを日常に取り入れるのが面白くなり、入り口探しがライフワークとなる。紙でできたものと小さいものに目がない。旅先の美術館カフェでぼんやりする時間が好き。 https://linktr.ee/omata_shoko
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