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2025.07.28

「揖保乃糸」の製造は1社じゃない? 生産量日本一、播州手延べ素麺の秘密に迫る【「そうめん」大研究・1】

手でよりをかけて麺を延ばしていく「手延べ」の技法は、中国から伝わったものが、日本で独自に発展しました。熟成時間を置きながら、何度もよりをかけられた麺は、細いのに弾力があり、口あたりはなめらか。手間がかかるのを承知の上で、麺づくりに励む各地のつくり手をご案内。地域性、こだわりの違いを知るのも楽しい!

「揖保乃糸」の聖地・兵庫県たつの市で学ぶ、「そうめん」の名品を生む風土と歴史

江戸時代後期、兵庫県たつの市を中心とする播州(ばんしゅう)地方で本格的な素麺(そうめん)づくりが開始。そこで生まれた「揖保乃糸(いぼのいと)」の現在の年間生産量は約2万トン。全国の手延べ素麺の40%を占めます。日本一の生産量を保ちながら、おいしさをキープできる理由とは、いったい?

左/たつの市を流れる揖保川。水車で小麦を挽いた時代は、この豊かな水量に助けられた。右/たつの市のシンボル龍野城。竜野脇坂藩5万3000石の城下町の面影を残す。武家屋敷や古い民家、醬油蔵など見どころたくさん。

古くは奈良時代から…、つるりとおいしい「手延べ麺」

奈良県三輪(みわ)や京都から製麺技法が各地に伝わったといわれる日本の素麺の歴史。
産地の特徴には、「水に恵まれている」「小麦がとれる」「塩と油が得やすい」そして「冬場の冷え込みが厳しく、乾燥に適している」などが挙げられますが、たつの市はもともと小麦の産地。一級河川・揖保川(いぼがわ)が流れ、赤穂(あこう)の塩が入手しやすく、雪や雨が少ないなど、好適地の条件が整っていました。

揖保乃糸資料館「そうめんの里」近くの「素麺神社」は、大神(おおみわ)神社から分祀。製麺に携わる人々の拠り所として、明治初期から愛されてきた。鳥居の扁額は、桶に入る渦状の麺があしらわれている。

実は「揖保乃糸」は一社が製造するのではありません

「揖保乃糸」を管理するのは「兵庫県手延素麺協同組合」(以下、組合と記す)で、実際に素麺をつくるのは約390軒の製造者。すべての原料は組合から支給され、出来高に応じてつくり手が組合から加工賃を受け取ります。

完成品は特約販売店を通じて販売。このようなシステムは全国でもここだけ。広報担当・天川(あまかわ)亮さんは「仕入れや売り上げに頭を悩ますことなく、生産者は製麺に専念。これが品質維持につながり、長年の評価につながっているのでは」と分析します。

麺づくりの現場でも、面白い出会いがありました。製造者代表・福井浩二さんの工場に現れたのは、組合所属の「検査指導員」。福井さんが撮影に手間をとられた際には機械の相手をするなど、大活躍。
「検査指導員は、製造者でもあるんです。だから現場の動きがよくわかる。素麺の品質管理、製品検査を行うのが主な仕事ですが、麺づくりの指導も行います」と天川さん。

製麺シーズン中は、明け方に生地をこねることから始まり、食事もままならないほど工程がたくさん。そんなつくり手に寄り添う組合の配慮があり、助言もあって「揖保乃糸」の味が保たれているのでした。

「手延べ麺」はこうして出来上がります!

縄状により合わせ、引き延ばすときもよりをかけて麺を細くするのが手延べ素麺の製法。延ばしても切れないように、「揖保乃糸」では生地の熟成を5回行っています。
機械の力を利用しながら、繊細な動きは手で。最終的には24本もの麺生地が編み込まれて、「揖保乃糸」はコシのある麺になります。

原料の小麦粉は「揖保乃糸」専用にブレンドしたソフトなものを使用。小麦の香りがあり、なめらかでいてコシが強い麺の秘密はここにも!
乾燥、切断、結束を終えた素麺は製品検査を経て、組合の専用保管倉庫へ。

熟成を終えた麺。8の字にかけて延ばしていきます。機械で引いては戻すを繰り返し、最後は手でグイッと延ばします。

2代にわたって素麺づくりに励む福井浩二さん。延ばした麵がくっつかないように箸で素早くさばきます。

昔は天日干し。今は室内乾燥にかわりました。厳しい検品は6束がセット。検査指導員は触れただけで製麺時の状態がわかるとか!

揖保乃糸資料館「そうめんの里」のレストランで人気です



上から、そうめんチャンプル、そうめん巻き寿司、冷やしそうめん。

●「揖保乃糸」についての問い合わせ先
電話:0791-62-0826(平日8時~17時/兵庫県手延素麺協同組合)

●「揖保乃糸」を地元で学ぶ、食べるなら揖保乃糸資料館「そうめんの里」
住所:兵庫県たつの市神岡町奥村56
電話:0791-65-9000
公式サイト:https://www.ibonoito.or.jp/soumennosato/

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和樂web編集部


撮影/石井宏明、伊藤 信(取材) スタイリスト/城 素穂 構成/藤田 優、古里典子(本誌) ※本記事は雑誌『和樂(2024年8・9月号)』の転載・再編集です。
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