「揖保乃糸」の聖地・兵庫県たつの市で学ぶ、「そうめん」の名品を生む風土と歴史
江戸時代後期、兵庫県たつの市を中心とする播州(ばんしゅう)地方で本格的な素麺(そうめん)づくりが開始。そこで生まれた「揖保乃糸(いぼのいと)」の現在の年間生産量は約2万トン。全国の手延べ素麺の40%を占めます。日本一の生産量を保ちながら、おいしさをキープできる理由とは、いったい?

古くは奈良時代から…、つるりとおいしい「手延べ麺」
奈良県三輪(みわ)や京都から製麺技法が各地に伝わったといわれる日本の素麺の歴史。
産地の特徴には、「水に恵まれている」「小麦がとれる」「塩と油が得やすい」そして「冬場の冷え込みが厳しく、乾燥に適している」などが挙げられますが、たつの市はもともと小麦の産地。一級河川・揖保川(いぼがわ)が流れ、赤穂(あこう)の塩が入手しやすく、雪や雨が少ないなど、好適地の条件が整っていました。

実は「揖保乃糸」は一社が製造するのではありません
「揖保乃糸」を管理するのは「兵庫県手延素麺協同組合」(以下、組合と記す)で、実際に素麺をつくるのは約390軒の製造者。すべての原料は組合から支給され、出来高に応じてつくり手が組合から加工賃を受け取ります。
完成品は特約販売店を通じて販売。このようなシステムは全国でもここだけ。広報担当・天川(あまかわ)亮さんは「仕入れや売り上げに頭を悩ますことなく、生産者は製麺に専念。これが品質維持につながり、長年の評価につながっているのでは」と分析します。
麺づくりの現場でも、面白い出会いがありました。製造者代表・福井浩二さんの工場に現れたのは、組合所属の「検査指導員」。福井さんが撮影に手間をとられた際には機械の相手をするなど、大活躍。
「検査指導員は、製造者でもあるんです。だから現場の動きがよくわかる。素麺の品質管理、製品検査を行うのが主な仕事ですが、麺づくりの指導も行います」と天川さん。
製麺シーズン中は、明け方に生地をこねることから始まり、食事もままならないほど工程がたくさん。そんなつくり手に寄り添う組合の配慮があり、助言もあって「揖保乃糸」の味が保たれているのでした。
「手延べ麺」はこうして出来上がります!
縄状により合わせ、引き延ばすときもよりをかけて麺を細くするのが手延べ素麺の製法。延ばしても切れないように、「揖保乃糸」では生地の熟成を5回行っています。
機械の力を利用しながら、繊細な動きは手で。最終的には24本もの麺生地が編み込まれて、「揖保乃糸」はコシのある麺になります。
原料の小麦粉は「揖保乃糸」専用にブレンドしたソフトなものを使用。小麦の香りがあり、なめらかでいてコシが強い麺の秘密はここにも!
乾燥、切断、結束を終えた素麺は製品検査を経て、組合の専用保管倉庫へ。



揖保乃糸資料館「そうめんの里」のレストランで人気です



●「揖保乃糸」についての問い合わせ先
電話:0791-62-0826(平日8時~17時/兵庫県手延素麺協同組合)
●「揖保乃糸」を地元で学ぶ、食べるなら揖保乃糸資料館「そうめんの里」
住所:兵庫県たつの市神岡町奥村56
電話:0791-65-9000
公式サイト:https://www.ibonoito.or.jp/soumennosato/

