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2026.10.08

う、うまい…パン派のライターをも米派に変えた青森米「青天の霹靂」を徹底取材!

運命の人に出逢うと体に雷が走る、なんて言うが、出逢ってしまったのだ。しかしそれは人ならぬもの。といっても妖怪のたぐいではない。青森が誇る米、「青天の霹靂(せいてんのへきれき)」である。

未知との遭遇

それまでどうも米に執着が持てなかったのだ。おいしい米を紹介されても、おいしいねえ、で終わってしまっていた。

が、ある日誤って雷神を口に入れてしまったようなのである。頭のてっぺんから足の先まで電流が、しびびび、と走った。
見えたのは、穏やかに晴れ渡る広い空と収穫間近な稲穂の海。それを嬉しそうに眺める椿色の着物の姫君。
ーーむろん、これは現実の光景ではない。が、そんなイメージが一気に広がるほど、鮮烈な味だったのだ。

GoogleのAI、Geminiに作成してもらった画像(画像作成未学習の機器を使用、プロンプトに既存の著作物・クリエイター・実在人物等を指定せず、状況の詳細指定および修正指示複数回、手動でトリミングや彩度・明度調整を行った)。イメージそのままではないが、だいたいこんな感じだった

上品、繊細、透き通る、優しいが軸がしっかりしている。それが「青天の霹靂」に抱いた感想である。ふりかけも海苔も要らない、ただただこの美しいガラス細工のような味に浸っていたい。この米以外の味が加われば、それは「夾雑物(きょうざつぶつ)」となってしまう――そこまで思った。

青天の霹靂とは、辞書的な意味では「きれいに晴れていた空に突然起きる雷、突然起きた思いがけない出来事」であるが、まさにまさに、こんな初対面だったのである。

「青天の霹靂」は、いかにして「青天の霹靂」となったのか

パン派だった人間をも虜にした「青天の霹靂」。一体どんなコンセプトで、どんな経緯で開発されたのだろう。
気になりすぎて、ついに取材を決行してしまった。

あふれ返る青森米愛にお付き合いいただいたのは、青森県産業技術センター農林総合研究所・水稲品種開発部長の森山 茂治(もりやま しげはる)氏。
青森米の魅力やコンセプト・開発秘話などを、「はれわたり」「まっしぐら」などのブランドも含めて伺った。

「青天の霹靂」はこんなお米

―― 「青天の霹靂」の、上品で透き通るような味に衝撃を受けました。今までにない米を目指した、とのことでしたが、開発の経緯をお教えいただけますでしょうか?

森山 茂治氏(以下敬称略、「森山」):「青天の霹靂」が育成される前までは、青森県は東北地域の中で唯一、日本穀物検定協会が発表する食味ランキングで最高位の「特A」評価を取得していない県でした。北海道も同様だったのですが、「青天の霹靂」の育成途中で北海道産「ななつぼし」「ゆめぴりか」が特Aを取得し、先を越されてしまいます。そのため、青森県では「特A」評価の早期取得を、といった気運がピークに達していました。

このような状況のなか、青森県では県産米のイメージアップと評価向上の牽引役となるような新たなブランド米品種の開発を喫緊の課題と捉え、2013年から「あおもり米新品種『特A』プロジェクト事業」を展開することとなりました。

青天の霹靂(旧系統名:青系187号)の草姿(画像提供・青森県産業技術センター農林総合研究所)※禁転載

森山:事業開始前の段階で有望視されていた系統が5つありましたが、そこから「青天の霹靂」を含む2系統を選定してプロジェクトが始まります。気象条件に恵まれた津軽地域の9か所で現地試験を実施するとともに、農林総合研究所で食味を重視した栽培法と土壌改良資材の施用方法等について検討し、新品種生産のマニュアルの作成を目指しました。

初年目の試験や試食の結果をもとに、2年目となる2014年は候補系統を「青天の霹靂」一点に絞り込み、最適な栽培条件で前年と同じ9か所の現地圃場で試験を実施しました。その年の11月には公募により選定された「青天の霹靂」の品種名も発表します。
そして、2015年2月に発表された2014年産米の食味ランキングで、「青天の霹靂」は参考品種ながら初出品で「特A」取得を果たし、長年の夢をようやく達成することができました。

―― 中島みゆきの『地上の星』が聞こえてくるようです……!たくさんの人の祈りのこもった物語があったのですね。

森山:「青天の霹靂」はその良質米を消費者に届けるために栽培マニュアルを作成し、そのマニュアルに沿って栽培するとともに、栽培基準、出荷基準を設けております。タンパク質含有率が高くなると粘りが弱くなり、食べたときに雑味を感じやすくなりますので、タンパク質含有率が低い良食味米が生産できるような栽培マニュアルになっています。「上品で透き通るような味に衝撃を受けました」とのことですが、タンパク質含有率の低いお米だったからそう感じられたと思われます。

―― 我々消費者の口に入る「青天の霹靂」は、選び抜かれたエリートだったのですね!開発の試行錯誤段階で、これが大変だった、印象的だったといったエピソードはありますか?

青天の霹靂 実証圃調査風景(画像提供・青森県産業技術センター農林総合研究所)※禁転載

森山:「青天の霹靂」の育成について、私は担当者ではなかったのですが、当時の担当者は必ず「特A」を取得しなければならないというプレッシャーと闘っていたと思います。そのため、試験研究のみならず、県庁、農協、現場の普及指導員など、関係者が良食味米生産に関わるあらゆる知見を結集し、品種開発、栽培技術の確立(マニュアル作成)、普及地帯の特定などを行い、「青天の霹靂」を育てた結果、「特A」を取得することができました。当時の担当者の努力には頭が下がる思いです。

―― 「青天の霹靂」は、まさに青森の魂のお米、だったのですね!

青森米の代表的な3品種「青天の霹靂」「はれわたり」「まっしぐら」

―― 青森の別ブランド米「はれわたり」も、とてもおいしく感じました。こちらはどんな特徴があるのでしょうか?

森山:「青天の霹靂」は、温暖な気象条件に恵まれた津軽地域に作付けが限定されていますが、気象条件が厳しい太平洋側の県南地域でも、「特A」を取得できる極良食味米を育成してほしいとの要望がありました。また、当時の主力品種「つがるロマン」に胴割れ(どうわれ。穂が出た後の高温や乾燥により、米粒に割れ目が入ってしまうこと)が頻繁に発生する問題も以前からあり、これに替わる品種が望まれていました。

玄米・籾:左 つがるロマン、中 青天の霹靂、右 まっしぐら(画像提供・青森県産業技術センター農林総合研究所)※禁転載

森山:2018年から、青森県は新品種導入を目指し、県重点推進事業「あおもり米新品種導入に向けた現地実証試験」を立ち上げて、試験を繰り返しました。その結果、「はれわたり」は胴割れの発生が明らかに少ないこと、粘りが強くて軟らかく、舌触りが滑らかで食感が良く、これまでの青森米にはないタイプであることが確認されたのです。以降も研究を重ねて、2021年に品種登録出願し、2022年に奨励品種に指定されてプレデビューし、2023年から本格デビューしています。

―― 2023年の本格デビューから今年で4年目、「はれわたり」も希望の星ですね。

森山:味の特徴としては、「青天の霹靂」がさっぱりしたタイプであるのに対し、「はれわたり」は粘りが強く柔らかいのが特徴で、タイプが異なる極良食味品種となります。

―― たしかに、「はれわたり」からは力強さも感じました。

森山:はれわたりは、2022年産に参考品種として特A評価を受けて以降、2025年産まで4年連続で特A評価を得ています。

―― 納得のおいしさです。青森には他に「まっしぐら」という品種もありますね。

森山:「青天の霹靂」「はれわたり」は、極良食味品種として育成されましたが、「まっしぐら」は業務用の品種として育成されました。「まっしぐら」が育成される以前、当時の業務用の主力品種には「ゆめあかり」「むつほまれ」という2品種がありましたが、いもち病に弱かったり耐冷性が低かったりといった弱点を持っていました。それを克服した品種が「まっしぐら」で、生産者にとって栽培しやすく、さらに食味も両品種より向上しています。ほどよい粘りと硬さで「つがるロマン」に劣らないおいしさを持ち、さらに炊飯特性やブレンド特性に優れることから、業務用として人気の高い品種となっています。また、2019年産米で「特A」を取得したこともあります。

―― 「特A」の品種が青森から続々誕生しているのですね!

標本株:左 つがるロマン、中 青天の霹靂、右 まっしぐら(画像提供・青森県産業技術センター農林総合研究所)※禁転載

―― 青森米の特徴や、ここを楽しんでほしい、といったポイントはどこでしょうか?また、ほかにも、おすすめのブランドがありましたら、ぜひお教えください!

森山:タイプの異なる3品種、「青天の霹靂」「はれわたり」「まっしぐら」をそれぞれの好みや気分に合わせて味わってほしいと思います。また、上記3品種以外にも、下北地域を中心とする早生地帯で生産されている「ほっかりん」、中生の「あさゆき」といった品種があります。この2品種の食味は、軟らかく粘りが強いという特徴がありますが、青森県外で店頭に並ぶことがないので、ネット通販等でご購入いただければと思います。

―― こちらも要チェックですね!

青森のお米は、こうして育っている

―― 産地によって同じブランドでも味が変わると聞きます。青森ならではの強みというのもあるのでしょうか。

森山:青森県は、大きく分けて、中心に位置する八甲田山よりも日本海側の津軽地域、太平洋側の県南地域、本州最北の下北地域に分けられます。津軽地域は青森県内では温暖な地域、県南地域は冷涼な北東風の「やませ」が発生しやすいため冷涼になりやすい地域、下北地域はさらに冷涼な地域となります。

―― 県内でも、少しずつ気候が違うのですね。

森山:はい。それぞれの気象に合わせて品種が作付けされています。「青天の霹靂」については津軽地域限定で、「はれわたり」は津軽地域と県南地域を中心に作付けされています。「まっしぐら」は県内全域で作付けされています。また、下北地域では「まっしぐら」に加え、冷涼な地域でもおいしく育つ「ほっかりん」が作付けされています。青森県ではそれぞれの地域に合った品種が作付けされ、様々な品種を味わえるのが特徴だと思います。

―― なるほど。気象条件によって適した品種が違ってくるのですか。

森山:また、同じ産地であっても土壌条件の違いによって味に違いが出てきます。青森県では、その産地・土壌条件に合わせて施肥基準量を定めており、産地による差が小さく良質米が生産されるように栽培指導しています。

あらためて、お米バンザイ!

―― 「日本人のコメ離れ」が叫ばれて久しいですが、パンや麺などと比べて、お米にはどのような魅力があるとお考えですか?

森山:お米は、さまざまなおかずに合わせやすく、品種によって粘りや軟らかさ、味わいが異なるため、料理や好みに合わせて選ぶことができます。また、米そのものにはグルテンが含まれていないため、グルテンを避ける必要がある方にとっても、主食の選択肢のひとつになります。

(注:米粉を使用した加工食品には、小麦由来の原材料が含まれている場合があります。食物アレルギーのある方は、商品の表示をご確認ください。)

―― 品種ごとの味わいを楽しめるだけでなく、それぞれの食生活に合わせて選べることも、お米の魅力なのですね。

森山:当研究所では麺やお菓子に向く高アミロース米の米粉用品種「あおもりっこ」という品種を育成しています。麺はまだ製品化されていませんが、県内のお菓子屋さんでは「あおもりっこ」の米粉を利用したグルテンフリーなお菓子(クッキーなど)が売られています。

―― 米粉用の品種があるのですね!「あおもりっこ」という響きもかわいらしいです。これから新米の季節になりますが、新米と古米で、それぞれ炊き方のコツなどがありましたらお教えいただけますでしょうか?

森山:一般的な話として、新米の場合は水を少なめ、古米の場合は多めにして炊くということになりますが、実際に炊いてみて、それぞれの好みに合わせて水加減を調整して頂くのがよろしいかと思います。

―― 好みの炊き方を試行錯誤していくのも楽しそうですね。そういえば、森山さんは小さな時からお米がお好きだったのですか?

森山:実は、私は子どもの頃、白いごはんがあまり得意ではありませんでした。

―― えっ?意外です。今、水稲の品種開発に携わっている森山さんにも、そのような時期があったのですね。

森山:はい。その後、青森県では品種改良や栽培技術の向上が重ねられ、今では全国に誇れるおいしい品種が育成されています。生産者の皆さんも、それぞれの品種の特性を生かし、おいしく品質の良いお米を消費者に届けるため、日々努力されています。

―― 「青天の霹靂」をはじめ、青森のお米、本当においしいです!研究や生産に携わる多くの方々の努力が、稲穂のように黄金に実ったものだったのですね。

森山:私も今ではお米が大好きになり、品種開発の仕事に携わっています。お米は、日本の食生活を長く支えてきた身近な主食です。おいしいごはんには、毎日の食卓を豊かにし、人を幸せな気持ちにしてくれる力があると思います。ぜひ、青森県のおいしいお米を味わっていただきたいです。

―― おいしいものを食べる幸せ、おいしいものをおいしいと感じられる幸せ。この年になって、それがようやく少し分かってきたような気がしています。ご多忙のところお時間をいただき、本当にありがとうございました。

これ以上、雷に打たれないために

これさあ、反則だよねぇ?こうやってまた炊飯器を開けさせられちゃうわけでしょ~?大問題だよ。
そんなことを人気お笑いタレントのネタよろしくブツブツ呟きながら、炊きたての「青天の霹靂」2杯目をよそう。

今まさに食欲の秋まっ盛り、加えて新米の季節でもある。「ほっかりん」と「あさゆき」はまだ食べたことがないから、取り寄せてみようか。ああ、「あおもりっこ」のお菓子も食べてみたい。

――危険である。危険極まりない。健康診断の結果に「電撃だっちゃ!」されないよう、重々気をつけていかねばと改めて震える、四十路の神無月なのであった。

取材協力:青森県産業技術センター農林総合研究所・水稲品種開発部長 森山 茂治氏
参考文献:
・『日本国語大辞典 第二版』小学館
・『デジタル大辞泉』小学館

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あきみず

人生の総ては必然と信じる不動明王ファン。経歴に節操がなさすぎて不思議がられることがよくあるが、一期は夢よ、ただ狂へ。熱しやすく冷めにくく、息切れするよ、と周囲が呆れるような劫火の情熱を平気で10年単位で保てる高性能魔法瓶。日本刀剣は永遠の恋人。愛ハムスターに日々齧られるのが本業。
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