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2019.09.15

人間界で暮らしていた500匹の猿が登場!? ユニークでかわいい猿の禅画

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「禅–心をかたちに–」展で話題の禅!禅画で『猿』はどう描かれたのでしょう?

人間の世界で暮らしていた500匹の猿のボスが、月夜の井戸の水面に映った月を見て、月が死んで井戸に落ちたと思い込みます。月を救い出すため、それぞれ尻尾をつかんで木から井戸へ届くようにするのですが、木の枝が折れて猿は井戸に落下。これは、もともと不可能なことがわからない愚かさを語った釈迦の説法(せっぽう)のひとつです。それに基づくのが「猿猴捉月図」(えんこうそくげつず)。それから派生した「猿猴図」には説法のとおりに手長猿が描かれていて、いずれも個性的。まさにかわいい♡禅アートの極致(きょくち)です。

雪村周継(せっそん しゅうけい)

雪舟が活躍した室町時代の代表的絵師のひとりが、禅寺修行で絵を学び、禅機図をはじめとした作品を多数手がけた雪村。「猿猴捉月図」の基本にのっとって、2匹の手長猿が月をとらえようと竹につかまって助け合いながら懸命に手を伸ばしています。

一幅 紙本墨画淡彩
室町時代後期(16世紀)
37.4×85.5㎝
所蔵:福岡市美術館(松永コレクション)

白隠!長谷川等伯!禅とは?を説いた猿の絵大集合

白隠慧鶴(はくいん えかく)

薄墨でさらさらと描きながら「猿猴捉月図」の本質を見事にとらえ、賛にて寓話の説明をしているところなど、さすがは白隠といった趣。漢語で賛が描かれているところを見ると民衆向けではないようです。井戸をのぞき込む猿の無邪気であどけない表情はピカイチ!

一幅 紙本墨画
江戸時代(18世紀)
117.3×57.4㎝
所蔵:永青文庫

白隠!長谷川等伯!禅とは?を説いた猿の絵大集合

長谷川等伯(はせがわ とうはく)

国宝『松林図』(しょうりんず)で有名な等伯の「猿猴図」は、当時の水墨画の手本とされた牧谿(もっけい)にならったもの。毛の質感が巧みに描かれていて、手長猿らしい本格派!今にも動き出しそうです。

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重要文化財 六曲一双  
安土桃山時代(16世紀)
各154.0×361.8㎝   
所蔵:京都 相国寺

狩野山雪(かのうさんせつ)

江戸時代の京狩野派(きょうがのうは)で活躍した狩野山雪の「猿猴図」は寓話を再現するより、手長猿のかわいさを優先したような印象です。それでいて、毛の質感や動きなどに狩野派らしい正統性があり見とれてしまいます。

一幅 紙本墨画
江戸時代(17世紀前半)
所蔵:東京国立博物館

白隠!長谷川等伯!禅とは?を説いた猿の絵大集合

狩野興以(かのうこうい)

狩野興以は桃山時代から江戸時代にかけて活躍した狩野派の絵師で探幽(たんゆう)の後見役。井戸の月ではなく、空に浮かんだ月に手を伸ばす猿は、解釈の面白さが光っています。なんとまぁ、あどけないことでしょうか。

一幅 紙本墨画
江戸時代(17世紀)
128.7×43.7㎝
所蔵:栃木県立博物館

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