これはマンガかゆるキャラか? と、思わずヘナヘナと力が抜けてしまう戯画を発見しました。江戸時代に活躍をした絵師・耳鳥斎(にちょうさい)が描いた“脱力おじさん”です。眺めているだけで口元がゆるみ、心がやわらかくほぐれる「おじさんコレクション」。どうぞご堪能ください!
耳鳥斎の脱力おじさんコレクション
「十夜会図」
江戸時代後期 紙本墨画淡彩 24.6×47.8cm 熊本県立美術館
「は〜」と調子っぱずれの唄でも歌うように経を念じる僧侶。檀家(だんか)たちの背中は、笑いをこらえているようにも…ユーモアあふれる戯画の先人・与謝蕪村の影響も感じられます。
「絵本古鳥図賀比」
文化2(1805)年 木版色摺 24.8×17.3cm 国立国会図書館
養生と不養生、知者と念者など、世の中にある「正反対のもの」を集めた版画集。とぼけた人物描写を引き立てる画面構成がお見事!この、あっけらかんと口を開けた描写は、「十夜会図」にも登場する耳鳥斎の十八番です。
「かつらかさね」
享和3(1803)年 木版色摺 縦25.5×横18cm 国立国会図書館
上方の年中行事を描いた読本の挿絵。リズム感のある描写と構図の面白さが魅力です。与謝蕪村や大田南畝(おおたなんぽ)などの賛が添えられた、贅沢な豪華本!
「絵本水や空」
安永9(1780)年 木版墨摺 23.5×16.5cm 国立国会図書館
私たちの眼を一瞬でくぎ付けにする脱力歌舞伎役者。ベロンと舌を出したおじさんは「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」で、藤原時平(ふじわらのしへい)を演じた中嶋三甫右衛門(なかじまみほえもん)。目と口だけで表情を描くマンガ的なテクニックが冴えわたっています。
「天狗寿老鼻頭くらべ」
江戸時代後期 紙本墨画 87.0×26.5cm 京都府所蔵 京都府京都文化博物館管理
天狗と寿老人が鼻と頭の長さを競い合ってるという珍しい図柄。両者とも団扇を高々と掲げ、「オレの勝ち」と告げている様子がなんともおかしいですね。