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2019.09.26

9/28公開!映画「春画と日本人」に見る忖度の構造、大墻監督インタビュー

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2015年秋、東京都文京区の私立美術館・永青文庫にて「春画展」(9月19日~12月23日)が開催されました。この展覧会の成功までの道のりを追いながら、春画という文化と近現代の受容史をひもといた映画「春画と日本人」が、2019年9月28日より、ポレポレ東中野を皮切りに全国で順次公開(※18歳未満入場禁止)されます。監督の大墻敦(おおがき・あつし)さんへの取材をベースに、映画「春画と日本人」についてご紹介します。


映画「春画と日本人」予告編

イギリスの「Shunga展」と日本の「春画展」

2015年の永青文庫の「春画展」のキャッチコピーは「世界が、先に驚いた。」でした。それは「春画展」開催から遡ること2年前、本家本元の日本より先に、彼のロンドンの大英博物館で、春画の企画展「Shunga : sex and pleasure in Japanese art」(2013年10月3日〜2014年1月5日、以下「Shunga展」)が開催され、世界中から注目されたことを指しています。

鳥居清長「袖の巻」(映画「春画と日本人」より)
細長い画面を用いた斬新な春画、鳥居清長「袖の巻」の一図。八頭身美女の群像を得意とした清長が、圧倒的な構成力で描いた、男と女。「Shunga展」および「春画展」の目玉のひとつとなった。(映画「春画と日本人」より)

春画とは、日本における男女の交合図のこと。性交の様子を描いた絵画は古くから世界中に存在しますが、春画と言った場合、性交を主題とする江戸時代以降の絵画を指すのが一般的です。他国のエロティック・アートとの大きな違いは、極端な性器の誇張表現とあふれるユーモア、そしてその担い手が一流の描画力をもった狩野派の絵師や浮世絵師たちであった点にあります。「Shunga展」は、165点に及ぶ作品を通して、近世日本独自の大らかな性のありようを伝えました。

大英博物館の「Shunga展」には、複数の日本の研究者やコレクターが関わっており、日本への巡回展の話も挙がっていました。ところが、肝心の会場がなかなか決まらず、結果として日本巡回の話は頓挫(とんざ)してしまいます。

近年出版された春画本とShunga展と春画展のカタログ
古書店で修正だらけの春画を見て育った筆者は、春画本の新刊に常に「いま買わねば」という危機感を持っていた。2013年当時、大英博物館の「Shunga展」の日本巡回が見送られたとの報を耳にし、わざわざ英国から取り寄せた鈍器のような「Shunga展」の公式カタログが右上。英文なので、ほぼ読めていない。

そこで「Shunga展」の開催に協力した人々を中心に「春画展日本開催実行委員会」が発足し、新たに日本での「春画展」が企画されました。しかし、公立・私立を問わず、どの美術館・博物館もなかなか会場を提供してくれません。そうした状況を見かね、最後に名乗りを上げたのが、永青文庫の細川護煕理事長でした。

映画「春画と日本人」は、この「春画展」開催の苦難の道のりの記録であるとともに、春画をタブー視してきた日本の近現代史を振り返ります。なぜ、これほどに春画の企画展の日本開催が難航したのか。なぜ、無修正の春画本が最近まで出版できなかったのか。

書いた人

東京都出身、亥年のおうし座。絵の描けない芸大卒。浮世絵の版元、日本料理屋、骨董商、ゴールデン街のバー、美術館、ウェブマガジン編集部、ギャラリーカフェ……と職を転々としながら、性別まで転換しちゃった浮世の根無し草。米も麦も液体で摂る派。好きな言葉は「士魂商才」「酔生夢死」。結構ひきずる一途な両刀。