時計師のこだわりが爆発! からくり時計も登場!
美術工芸品となれば、後はもう独創性と遊び心を発揮するのみです。アラーム時計、オルゴール時計、からくり時計など、現代の私達にも馴染み深い仕組みはおてのもので、当時すでに作られています。さらに趣向を凝らしたものになると、卦算時計(けさんどけい)、印籠時計など、ちょっぴりマニアックな作品も生み出されました。
卦算時計(セイコーミュージアム) 卦算(けさん)とは文鎮のこと。卓上時計としての機能を持ちながら文鎮にも使用できるというスグレモノ。物書きにはたまらない一品?!
べっ甲蒔絵枠時打印籠時計(セイコーミュージアム) 当時誰もが持ち歩いた印籠(薬入れ)に時計機能がついたもの。印籠時計は持ち運びがしやすいため数多く作られましたが、こちらは水戸藩主徳川斉昭(1800-1860)の所持品と伝えられ、美術品としても評価が高いとか。
また特筆すべきなのは、和時計を作っていたのは一流の時計師たちばかりではなかったということです。江戸時代のベストセラー本、「機巧図彙(からくりずい)」という専門書には、和時計の部品が丁寧に図解され、構造や作り方まで解説されています。中にはこの本を片手に、自身の生活には必要ない(?!)和時計を独学で作り上げた一般人もいたかもしれないのです。
「機巧図彙」(寛政8年)より。(国立国会図書館デジタルコレクション)
ついにたどり着いた超絶技巧の最高峰:万年時計
和時計の最高峰と国内外で称賛される時計があります。いわゆる万年時計です。万年時計は、正式名称を「萬歳自鳴鐘(まんねんじめいしょう)」といって、一度ゼンマイを巻くと、以後250日間も動き続けることからそう名付けられました。作ったのは、江戸時代後期の発明家、「からくり儀右衛門」こと田中久重です。機械の設計のみならず、1000点を超える部品をほとんど一人で自作したというから驚きです。
文字盤は六面からなり、和洋の時刻文字盤、二十四節気、七曜、十干十二支、月の満ち欠け、日付などが表示されています。さらに天頂部には、正確な日本地図の上を太陽と月が運動するプラネタリウムまでついているのです。
構造や機能のすばらしさもさることながら、七宝や彫金による細やかな模様を施した贅沢な外装部は、誰もが息を飲む美しさです。
萬歳自鳴鐘(複製)(東芝未来科学館)