日本で千年以上の長~い歴史をもつ治療法「お灸」。みなさんは、体験したことがありますか?
「お灸って、お年寄りがやる古臭いものでしょ?」とお思いのそこのあなた!実は、お灸は現代人が日々悩まれている、肩こり、腰痛、頭痛、ストレス、不眠などの辛い症状に、とっっても効果的な治療法なんです。
お灸の治療は鍼灸院で受けられるだけでなく、ドラッグストアなどでお灸を購入して、自分でできる「セルフお灸」もあります。「でも、難しいんでしょ……?」いえいえ、それが超簡単!
今回は、滋賀に本社を構え、日本一のお灸生産量を誇るお灸メーカー「せんねん灸」で、お灸の歴史や効能、自宅でできるセルフお灸のやり方を教えていただきました!
取材に訪れたのは、大阪の天神橋筋商店街すぐそばにある「せんねん灸ショールーム大阪」。「せんねん灸」発売元のセネファ株式会社次長・射場射之吉(いばいのきち)さんにお話を伺いました。この記事を読んで、今日からセルフお灸を始めましょう!
信長や秀吉も愛用?お灸の歴史!
──お灸はいつ頃日本に伝わったんですか?
射場さん:お灸は2千年以上前に中国で発祥しました。日本に入ってきたのは、奈良時代、仏教とともに伝えられたといわれています。平安時代には、天皇陛下や今でいう総理大臣にあたる方をはじめとした、いわゆる公家と呼ばれる高貴な方だけの特別な薬でした。
その後、戦国時代に入り、織田信長と豊臣秀吉が滋賀県の伊吹山(※)に、お灸の原料であるヨモギをたくさん植えたんです。そこでヨモギがたくさん採れるようになり、江戸時代には一般の民衆の間でもお灸が広く使われるようになって、現在の令和まで脈々と受け継がれる伝統医学になりました。
お灸の原料は1m50cmのヨモギ!
──お灸はどのようにして作られるんですか?
射場さん:お灸の原料はヨモギです。ヨモギの種類は百種類ほどあるのですが、お灸に使われているのは、背丈が1メートル50センチ以上になる「オオヨモギ」という種類です。夏は約30℃、冬は約-10℃になる寒暖差の激しい地域で自生しており、基本的には栽培ができません。
そのため、かつてもぐさの産地として有名だった伊吹山では、温暖化の影響でオオヨモギが自生できなくなり、現在は新潟県の糸魚川周辺で自生しているものを収穫してお灸の原料にしています。お灸に使われる「もぐさ」(※)は、このヨモギの葉の裏に生えている綿毛だけを集めて作ります。ヨモギが100キログラムあったとしても、たった500グラムしか採れない貴重な薬草です。
収穫は1年に1回7月頃。収穫したヨモギは一日天日干しした後、一週間日陰干しします。それを火で加熱し、杵つきで粉砕して、石臼でさらに細かく砕き、唐箕(とうみ)という機械にかけて、「温灸」と「点灸」に振り分けます。
温灸は、葉緑素や枝葉が混じった状態。これは時間をかけて燃えるので、直接肌に乗せて使うとやけどしてしまうため、台座が必要です。江戸時代は、にんにくやしょうがの輪切り、みそなどを下に置いてお灸を据えていたそうです。「せんねん灸」の台座付きお灸の中にはこの温灸が入っています。点灸は、綿毛の部分だけ。サッと燃えるため直接肌に置いてお灸を据えることができます。
お灸の効能とは?
──お灸はどうして効くんですか?
射場さん:東洋医学では、人間の体を健康に保つために、「気(エネルギー)」、「血(血液)」、「水(体液)」の3つの大きな流れがあると考えられています。
この「気血水」のバランスが整えられていると体の健康が維持されますが、どこかで何かの不具合があると、冷えや肩こり、腰痛などといったさまざまな症状が出てきます。
人間の体には、頭の上の「百会(ひゃくえ)」から足の裏の「湧泉(ゆうせん)」まで、361カ所のツボがあります。
先ほどの「気血水」の流れを人間の体内を走る電車の路線に例えると、ツボは「駅」です。「気」の電車、「血」の電車、「水」の電車が滞りなく走っていたらいいんですけど、どこかで不具合があって止まっている。そういう時に、流れが止まっているツボ(駅)のところに、熱刺激を与えて流れを正常な状態に戻すのがお灸です。
人間は体の一箇所に刺激を感じると、そこに外部から攻撃を受けたと脳が錯覚を起こし、血行を促進させるとともに、血液中の白血球を増やして抵抗力を高めます。こうすることで、自己免疫力を高め、健康を保つといわれているのが基本的なお灸の働きなんですね。刺激を何で与えるかの違いで、鍼や指圧も同じ仕組みです。お灸の場合は熱で刺激を与えます。こちらを見てください。
──わー!全部お灸ですか?たくさん種類がありますね!
射場さん:下のところに、温度別の順番を載せているんですけど、一番温度の低いもので40度ぐらいからスタートしてるんですよ。人間の体温は36度ちょっとなので、これだとぬるいんですね。真ん中で48度ぐらい、ちょっと熱いです。一番温度の高いものになると53度ぐらい。小刻みに温度を設定しています。
ですが、実はどの温度を使っていただいても、効果は一緒なんですよ。
──えっ!ぬるくても熱くても効果は一緒なんですか!?
射場さん:そうなんです。よく熱い方が効く、と思っている方がいらっしゃるんですが、先生方の研究で「そうではない」という結果が出ているんです。なので、お灸を選ぶ時は、自分の一番心地よいと思う温度のものを選んでいただくといいと思います。
簡単!セルフお灸を体験!
射場さん:では、実際にセルフお灸をやってみましょう!
1:まずは、お灸の裏のシールを剥がす
射場さん:まずは、台座を持っていただいてお灸の裏側のシールを剥がします。
──はい!(ペリッ)
2:ライターでお灸に火をつける
射場さん:お灸を人差し指に付けて、ライターを反対の手に持ち、お灸に火をつけてください。ライターを立てて持って、横からお灸を近づけると手が熱くないです。1、2、3とゆっくり数えていただいたら、もう火がついています。
──1、2、3!
3:ツボにお灸を置く
射場さん:そしたら、台座を回してひねるように取って、万能ツボ「合谷(ごうこく)」に乗せてみましょう。
──(このへんかな…?)
4:台座が冷めるまで待つ
射場さん:火が燃えている間は温度を感じないんですね。火が消えて、煙がなくなって、「あ、終わったなぁ」って思う頃に、40度前後の温度がホワホワとしてきます。燃えているのはもぐさなんですけど、真ん中に白い線香が見えると思います。これがお香の香りですね。
──ほんのり温かくなってきました~!どのくらい待てばいいんですか?
射場さん:台座を持って熱さがなくなったら、終わっているサインです。大体5~6分ですね。台座が冷めたら、水を入れたコップなどにお灸を捨てて火を消してください。
──あ、もう熱くないです。(ポイッ!)簡単ですね~!ツボはどうやって調べればいいんですか?
射場さん:こちらの『ツボブック』(デジタル版はこちら)には、代表的な100種類の症状に対応するツボを掲載しています。この本を見ながら、ご自身の気になる症状のツボにお灸ができます。ピンポイントでツボを押さえられなくても、お灸は直径3センチ、500円玉くらいの範囲で熱感が広がるんですよ。
──疲れやすい、冷房にあたりだるい、不眠症、偏頭痛、風邪、肩こり、胃もたれ、ストレス……。色んな症状がありますね~。
射場さん:最近は在宅ワークで、腰痛や肩こりの症状が辛いという方がたくさんいらっしゃいますね。また、冷えやむくみ、月経痛といった、病院に行くほどではないし、薬には頼りたくないという女性に多いお悩みにもお灸はおすすめです。
アロマ灸に火を使わないお灸!?初心者におすすめのお灸5選
お灸がはじめての初心者でも使いやすい、おすすめの商品を射場さんにお伺いしました。お灸デューにぴったりな5種類のお灸をチェックしましょう。
定番!ドラッグストアで買える!「せんねん灸」オフシリーズ
まずは、ドラッグストアなどでも購入できる定番商品「せんねん灸オフ」シリーズ。中でも、「ソフト灸 竹生島」は温度の設定が低めで、初心者の方や熱いのが苦手な方、皮膚の弱い方にもおすすめの商品。 こちらを試して、より熱いものがいいという方には、「レギュラーきゅう 伊吹」もあります。
熱くない!ふんわり漂ういい香り!アロマのお灸
お次は、私も体験したこちらのカラフルなお灸。「はじめてのお灸moxa」シリーズは、中にアロマエッセンスが入っていて、お灸の最中にほんのりとアロマのいい香りが漂います。香りは、くだもの、はな、緑茶、香木の4種類。温度は全商品の中で最も低く設定されているので、初心者でも安心です。
煙の出ないお灸&火を使わないお灸
こちらは、進化型のお灸2種類。左側は「せんねん灸の奇跡」シリーズ。何が「奇跡」なのかというと、もぐさを炭化することで、煙が出ないように開発された無煙お灸なのです。お灸のにおいが苦手な方や、髪の毛や服ににおいがつくのが気になる方におすすめ。
右側の「火を使わないお灸 太陽」は、カイロと同じ原理で酸化鉄が空気に触れることで発熱し、もぐさシートを蒸して浸透するタイプのお灸。ライターは必要なく、約40~50度の温度が約3時間持続します。服の下に貼ることができるので、仕事や家事をしながらお灸をすることもできて便利!
器具を使って、背中のお灸も自分で!棒温灸
最後は、「せんねん灸琵琶湖 B型」。オリジナルの器具に棒状のもぐさをセットし、器具をツボに当てて使います。一度火をつけると長時間お灸ができ(1回20分程度推奨)、背中や腰など自分ではお灸を据えづらい場所にも簡単に当てることができます。棒もぐさのセットの仕方で温度の調整も可能。低めの温度に設定して、子どもにも使用できるそうです。
ドラッグストアなどで手に入る「せんねん灸オフ ソフトきゅう 竹生島」以外の商品は、「せんねん灸」のオンラインショップ、もしくは、ショールーム(長浜、銀座、大阪、京都、名古屋、博多)で購入が可能です。
日本の伝統的な民間医療「お灸」で、辛い体の不調をこまめにセルフケアしよう!
「熱い」イメージがあったお灸ですが、初心者向けのお灸は「ほんのり温かい」程度の温度でした!
お灸は中国で生まれ、奈良時代から日本で使われてきていますが、その長い歴史の中で日本独自の進化を遂げてきたそうです。丁寧な製造工程を経て作られる日本のもぐさの品質の高さは、世界に類を見ないとか。折角、日本で先人たちが脈々と培ってきた伝統文化「お灸」を使わないのは、勿体ない……!
やり方はとても簡単なので、ぜひみなさんも、「ちょっとしんどいな……」という時は、今回の記事を参考に、セルフお灸でお灸を日々の生活に気軽に取り入れてみてはいかがでしょうか?ツボを探すときは、ツボの位置の解説動画が見られるこちらのサイトも便利です。
「はじめてで心配……」というあなたには、「せんねん灸」の全国のショールームやオンラインで無料お灸教室も随時開催されていますので、こちらもチェックしてみてください。
せんねん灸ショールーム大阪概要
住所:大阪市北区天神橋3丁目3-3南森町イシカワビル1階
営業時間:10:00-18:00
休館日:月曜日(月曜日が祝日のときは営業)
アクセス:大阪メトロ 堺筋線・谷町線南森町駅 5番出口より徒歩2分、JR東西線大阪天満宮駅 地下鉄3番出口より徒歩4分
公式webサイト:https://www.sennenq.co.jp/company/osaka.html