ドラマ『恋する母たち』に落語家役で出演の阿部サダヲが話題になっています。バツ3で、仲里依紗演じる主婦と不倫関係になるという役柄にもかかわらず、「色気がスゴイ!」「カッコイイ」と女性たちから熱い支持を受けているのです。その要因は、粋で中身がイケメンに描かれているから。
私は別の目線で阿部サダヲにメロメロになっています! それは、ドラマの落語の実演シーンが素晴らしいから! 喋り口調といい、間合いといい、「えっ、どなたかの師匠の元で修行したんですか?」と思うほどのクオリティの高さ! 阿部サダヲ落語に興味を持ったら、年末年始は落語に触れてみるのもいいかも! オススメをご紹介しま~す!
季節ごとに演じられる落語がある
落語は季節感を大事にする世界です。落語家の衣装の着物も、季節に合わせて袷(あわせ)、単衣(ひとえ)、薄物(うすもの)と変わるので、その姿を見るのも楽しいものです。
春には花見を舞台にしたもの、夏になれば怖い怪談噺(かいだんばなし)、秋になれば旬の秋刀魚が出てくるもの、そして冬にはやはり、ふさわしい演目があるのです。
着物と同じで、少し先取りして演じることも。落語で季節を感じるって、粋ですよね!
オススメ3選
かつての日本では、年末になると正月用の餅を業者から調達した道具で、自分たちでついて用意していました。そんな時代に、見栄をはっておバカなことをする夫婦の噺。
『尻餅』 年の瀬、長屋に住む夫婦は隣近所からぺったんぺったんと、餅をつく音が聞こえてきて、いたたまれない気分になります。それは、今年は年を越すお金がなくて餅つきができないから。せめて餅をつく音をさせて近所に見栄をはろうと一計を案じます。
夜中になって、亭主が一人で何役も演じて、近所に聞こえるような大きな声で餅つきをしているかのように演じます。餅つきの準備が整ったところで、驚くことに女房の尻を出すようにと要求。寒空のなか、お尻を丸出しにされた女房は文句を言いますが、見栄のためだと我慢します。尻を臼に見立てた餅つきで、ぺったんぺったんと音を響かせる馬鹿馬鹿しさ。苦境も夫婦で笑い飛ばすたくましさを感じる内容です。
年末ジャンボ宝くじは庶民にとって、大金持ちへの大きな夢。それは落語の世界でも同じようです。上方発祥の演目で、上方落語と江戸落語でそれぞれ名前が違います。
『宿屋の富』(上方落語では、『高津の富(こうずのとみ)』)
宿屋にふらりと泊まりに来た小汚い男。「オレは大金持ちで、もてなしを受けるとくつろげないからほっといてくれ」と言い、さらに景気のいいホラ話をして、主人を信じ込ませます。すると主人は「売れ残りの一枚の富くじを買ってくれ」と頼んできます。後へは引けなくなった男は、全財産の一分の大金で買い取ると、「当たったら、半分やる」と調子のいい約束までする始末。はたして、くじは当たるのかどうか?
毎年1月25日に天満宮で行われる祭りに出かけた子どもと父親とのやりとりを描いた演目。一筋縄ではいかない子どもと父親の攻防がユーモラスです。落語家が演じる子どもの演技が見物です。
『初天神』 新しくこしらえた羽織を自慢したい男が初天神へと出かけようとします。すると女房から息子も連れていってくれと頼まれて、しぶしぶ親子で出かけることになります。「あれこれと買ってくれと言うなよ」と男は釘を刺しますが、息子は利口者。うまく丸め込まれて、飴を買わされます。今度は凧を買ってくれとねだる息子。またも息子の作戦で買わされることになり……。
近くで落語会をやっていない! という人は、DVDで見るという手もありますよ! 落語には、ダメダメ人間だけど、愛すべき人たちがたくさん登場します。落語の世界に触れて、あははと笑って、年末年始を過ごしましょう!