ろうそくの優しい光を見ると、なんだかほっとします。人には感じないほどの弱い風で炎がゆらめいているのを眺めていると、落ち込んでいたことも忘れられるような。
そういえば、小さい頃にお盆でお墓参りに行ったとき、提灯(ちょうちん)に火が燃え移って慌てたことが何度かありました。あれはちょっと怖かったなあ。そのときお寺にあったのは灯籠(とうろう)で……。あ、ひな祭りのときに飾る照明は「ぼんぼり」っていうんだっけ。
ん? 日本の灯りっていくつか聞いたことがあるけれど、どんなものでどんな違いがあるんだろう?
ということで、調べてみました!
灯籠(とうろう)って?
灯籠は、木・竹・石・金属などで作られた照明器具で、「灯楼」「燈籠」「灯篭」などと書かれることもあります。
置くタイプ、釣るタイプなどいくつかの種類があり、屋外の照明として現在でも神社やお寺・庭園などで見ることができます。
置き灯籠には蛍灯籠(ほたるどうろう)、雪見灯籠(ゆきみどうろう)など、季節を感じられる名前のついたものも。透かし彫りが施される釣り灯籠には、華麗なデザインのものが多く見られます。
現存する古いものは各タイプとも奈良に多く、何気なく入ったお寺や神社にあった、なんてこともあるかもしれません。
興福寺所蔵の、ユーモラスな表情が人気の天燈鬼(てんとうき)・龍燈鬼(りゅうとうき)が持っているのも、灯籠です。
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行灯(あんどん)って?
植物油や魚油・ろうそくなどを入れた火皿を、枠に和紙を張った風よけで覆ったのが行灯で、おもに室内で使用します。
行灯にもいくつかの種類があり、縦長の箱状や円筒形、置き型や掛け型、光量の調節ができるものなどが知られています。
ちなみに、怪談の化け猫が舐めるのは、この行灯の油。安価な魚油を燃料に使用することも多かったためだといいます。
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提灯(ちょうちん)って?
ちょうちん、と聞くと、お酒が飲みたくなる人もいるかもしれません。おでんや焼き鳥などを肴に一杯飲める、あの屋台につけられている「赤ちょうちん」も、提灯の1つです。
チョウチンアンコウという名前の魚も、この提灯をぶら下げているように見えることから命名されたといいます。
提灯は細い割竹ひごをらせん状に巻いて紙を貼り、上下に口と底部分を取り付けた折りたたみ式の照明器具です。赤ちょうちんのように看板として使ったり、夜道を歩くときの携帯照明として使ったりします。
ぼんぼりって?
ひな祭りの歌で知った人も多いかもしれない、ぼんぼり。漢字では「雪洞」と書きます。とても素敵!
床に置くろうそく台や、手持ちタイプのろうそく台の周囲を紙や薄布などで覆ったもので、火が覆われてはっきりとは見えないことからの発想「ほんのり」から変化した言葉なのだそうです。はじめは火を覆うものを広く「ぼんぼり」に分類していたとか。また、柄と台座をつけた小型の行灯もぼんぼりと呼びます。
風よけの火袋(ひぶくろ)は六角筒が一番多く、円筒形・四角形・なつめ形・みかん形なども見られます。珍しいものでは、前面が開いている反射形や、ガラス製の火袋などもあります。
参考文献:
・『小学館 全文全訳古語辞典』小学館
・『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館
・『デジタル大辞泉』小学館
・『世界大百科事典』平凡社
アイキャッチ画像:勝川春章『役者夏の富士』メトロポリタン美術館より