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大人だけが知っている!「静寂の京都」

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2021.10.28

クイズ!お花畑と花畑、何が違うの?「お」の違いだけじゃないんです!

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人間は矛盾に満ちた存在です。そんな人間の作った季語ですから、ときにアレレ??と思うこともあります。今回は季語のトリビア、重箱の隅をつついてみます。

季語って結構「なんでやねん」というのが多いですよね!

「お花畑」は夏 「花畑」は秋の季語

「お」がつくとつかないとでは大違い。「お花畑」は夏の季語で、キンポウゲやチングルマ、ハクサンフウロ、コマクサなど高山植物が咲き乱れる様子を言います。「花畑」は秋の季語、秋の花の畑です。秋の七草というように、秋の草の花には華やかな中に寂しげな風情がありますね。花野、花園、花圃、花壇も秋の季語になります。いずれも草の花です。

「お」ひとつで……なんでやねん!

お花畑より鳥たたば空無限     福田蓼汀
お花畑地の貧しさに嶮しさに    津田清子
彳(たたず)めば昴が高し花畑   松本たかし

歌川広重『富士三十六景 甲斐大月の原』 国立国会図書館デジタルコレクション

▼秋の七草を詳しく紹介している記事はこちら!
7つ全部言えますか?平安貴族も愛でた雅な「秋の七草」徹底解説!

「いも掘り」は秋 「焼きいも」は冬の季語

いもは漢字で「芋」と書くと里芋、「藷」はさつまいも、「薯」は山芋、じゃがいものことといいますが、「芋」はいも類の総称でも使われています。幼稚園の秋の遠足の定番、いも掘り。土の中からごろごろ出てくるさつまいもに子供たちの歓声が上がります。その通り「いも掘り」は秋の季語です。

木枯らしが吹く夕方、「焼きいも~~石焼きいも~~~」の声が聞こえてきます。新聞紙につつまれたアツアツの焼きいもを抱えれば帰り道はスキップしたくなるくらい。はい、「焼きいも」は冬の季語です。そうです! さつまいもは秋に掘っても焼くのは冬まで待たなくてはいけません!

えっ、掘ったらすぐ食べたいのに! なんでやねん!

甘藷を掘る一家の端にわれも掘る    西東三鬼
焼藷を買ひ宝くじ買つてみる      逸見未草

珍古楼主人 輯『甘藷百珍』 国立国会図書館デジタルコレクション
※芋に関して色々載っている書籍でした。著者による”絶品”は「でんがくいも」が筆頭

「雷」は夏 「稲妻」は秋の季語

雷は条件がととのえば一年中あるのですが、雷だけだと夏の季語になります。ところが、「ピカッ・ゴロゴロ・ドーン」とセットのはずの稲妻はなんと秋の季語になるのです。稲妻の稲の字にご注目ください。古来稲妻の光が稲の稔りをもたらすとされています。

ちなみに、江戸時代の遊女がかんざしをたくさん挿していることも「稲妻」と言ったらしいです。似てる似てる!


「新吉原江戸町壱丁目和泉屋内」(『錦絵帖』より) 国立国会図書館デジタルコレクション

遠雷や睡ればいまだいとけなく     中村汀女
山川を打ちゆがめたる大雷雨      上村占魚
稲妻のかきまぜて行く闇夜かな     向井去来
いなびかり北よりすれば北を見る    橋本多佳子
いなびかりひとと逢ひきし四肢照らす   桂信子

葛飾北斎『冨嶽三十六景 山下白雨(さんかはくう)』 メトロポリタン美術館

生き物いろいろ

―哀れ蚊―  秋

秋になっても生き残って人間様を狙う蚊のことを哀れ蚊といいます。ぷいーんときてしつこくまつわりつくので憎らしいものですが、それも蚊の生の営みと思えば哀れであります。
ちなみに季語で哀れがつく虫は蚊のみです。乾涸びた蚯蚓も鱗粉の剥げた蝶もお腹を天に向けたまま蟻にひきずられていく蟬も哀れとはいいません。

えぇ、哀れなのは蚊だけ!? 蚊に刺された跡が何カ月も消えない私も哀れと言って!

哀れ蚊やねむりぐすりも気安めに    石川桂郎
哀れ蚊を憐みて後憎みけり       相生垣瓜人

喜多川歌麿『四季の花』より メトロポリタン美術館
この絵では、蚊ではなく雷から身を守るために蚊帳に入っています。蚊帳は雷から身を守るものと信じられていたそうです

―枯蟷螂―  冬

枯蟷螂(かれとうろう)は茶色いカマキリのことで冬の季語となっています。動きも緩慢としてまさに命も枯れてしまったかのよう。
実はカマキリの色は保護色で、季節に関係なく周囲が茶色の環境にいれば茶色に、緑色の環境なら緑になります。

ピンクの部屋で育てたらピンクに……?

枯蟷螂日のある方へ動き出す     守谷順子
枯れきりし蟷螂赤き眼を残す     井上倭子

喜多川歌麿『画本虫撰 バッタと蟷螂』 メトロポリタン美術館

―凍て蝶―  冬

冬の蝶が日当たりのいい場所でじっとしていることがあります。これを凍て蝶と呼んでいます。本当に凍っているわけではありませんが、動きのない様子が凍ての字に表されています。

鋭い観察力と感性豊かな発想に、ハッとさせられます。

倒れずにゐる凍蝶の二枚翅     辻田克巳
凍蝶となりねむりたし手術の夜   朝倉和江

久保俊満『さまざまな蛾と蝶』 メトロポリタン美術館

―老鶯―   夏

老鶯(おいうぐいす・ろうおう)は夏のうぐいすのことです。歳をとったうぐいすのことではありません。うぐいすは春告鳥、匂鳥、経読鳥などと呼ばれ春の生類の代表的な季語ですが、夏になったとたん老鶯と呼ばれます。夏は鶯の繁殖期にあたり、山地に帰り営巣するので、平地ではみかけなくなります。

繁殖中なのに「老」だなんて!

老鶯や行くほどに減る渓の水    佐藤紅緑
老鶯や出湯のあまりが谷に落つ   秋元不死男

魚屋北渓『梅に鶯』 メトロポリタン美術館
春の花とともに鳴く鶯の作品は豊富ですが、”老鶯”は探しても見つかりませんでした

眠れない夜に歳時記を開いてこんなツッコミをしているとますます目がさえてしまいますが、秋の夜長、それもまたよいのではないでしょうか。

知らないことばかりで面白かった~!「なんでやねん」が止まりませんでした!

参考文献
『カラー図説日本大歳時記 春・夏・秋』講談社
『基本季語500選』山本健吉 講談社学術文庫
『新歳時記 虚子編』三省堂

アイキャッチ画像
歌川貞虎『風俗秋七草』 メトロポリタン美術館

書いた人

千葉県市川生まれ、縁あって京都の旅館に嫁ぎました。大学時代から俳句に親しみ、この10年は連句も楽しんでいます。熱しやすく冷めやすい性格ですが、俳句と連句は長続きしています。俳誌「春塘」編集長。チーズを偏愛し、チーズプロフェッショナルの資格あり。 好きなもの:あんこ、チーズ 嫌いなもの:ナメクジ(天敵)

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大学で源氏物語を専攻していた。が、この話をしても「へーそうなんだ」以上の会話が生まれたことはないので、わざわざ誰かに話すことはない。学生時代は茶道や華道、歌舞伎などの日本文化を楽しんでいたものの、子育てに追われる今残ったのは小さな茶箱のみ。旅行によく出かけ、好きな場所は海辺のリゾート地。