あなたは、『ひらパー兄さん』を知っているだろうか? 品と風格を兼ね備えながら、人々を爆笑の渦に巻き込む、その唯一無二の存在を!!
関西人で知らない人はいないと言われるほど浸透している、ひらパー兄さん。和樂web編集スタッフに尋ねると、驚いたことに皆知らないと言う。
「な、なに~!?」これは、もっと世間に知らしめなくてはと、地元・浪速女の瓦谷が、取材を敢行しました!!
いざ、ひらパー兄さんの本拠地へ!!
ひらパー兄さんの「ひらパー」とは、大阪府北東部に位置する枚方市(ひらかたし)の遊園地、「ひらかたパーク」を指します。平成8(1996)年にリニューアルオープンした時に、短縮語の「ひらパー」が通称名となりました。以来地元では親しみを込めて、ひらパーと呼ばれています。
子どもの頃に訪れ、また結婚して子どもが誕生してからも家族で通った、ひらパー。久しぶりに懐かしの場所へと赴きました。鼻息荒く、意気込む私の様子に少々引き気味ながら、ひらかたパーク事業部営業チームの田中逸馬(たなかいつま)さん、岡田理花さんが、対応して下さいました。
ひらパーは、創業109年の老舗遊園地!菊人形が名物だった!
ひらパー兄さんを紹介する前に、ひらパーの歴史についても、知ってもらいましょう! なんと創業して100年以上になる遊園地なのです。ひらパーの前身は、明治43(1910)年に開業した「香里園遊園地」でした。その2年後、現在の場所に移転して「ひらかたパーク」として開業します。ずっと営業を続けている日本の遊園地の中で、日本最古※として知られています。
「ひらかたパークと言えば、菊人形をイメージされる方も多いと思います」と田中さん。菊人形とは、菊の衣装を着た人形で、江戸で生まれて、明治時代に興行として全国に広がりました。ひらかたパークは開業と同時に一番の呼び物として菊人形に取りかかり、徐々に大規模なものになり人気を集めました。
「資料には、舞台がせり上がって場面が変わる大がかりな演出もしていたと記録されています。人形は人間と同じサイズの実物大なので、人形が乗る船などもそれに合わせた実寸大で、見応えがあったと思います。イベントホールに100体もの菊人形が並んでいたようです。菊人形に使う小菊の生産農家が減ってしまったこともあって、100年近く続いた大菊人形展は、残念ながら現在は行っていません」と、田中さんが当時の様子を話して下さいました。大菊人形展は終了しましたが、毎年秋に数体の菊人形を制作して展示や、菊つけの実演を行っているそうです。
私は子どもの頃に大河ドラマをテーマにした大菊人形展を見た記憶があります。菊の香りと、迫力に圧倒されました! ちょっと怖い! と感じたのは、実物大だったからかもしれないなぁ。今も技術の継承が続いているのは、嬉しいですね。
ひらパー兄さんの口癖は、おま!
かつての目玉は菊人形でしたが、今やひらパーを世に知らしめる存在と言えば、ひらパー兄さんです! え、なに、なに? ゆるキャラ? いいえ、そうではありません。ひらパー兄さんは、着ぐるみではなくて人間です。しかも皆が知るスターが扮する、広報キャラクターなのです。
「ひらパー兄さんのオファーを、地元の枚方市出身の岡田准一さんにという案が出た時には、当時の担当者は、果たして受けてもらえるのだろうかと心配したそうです。快く受けて頂けることになって、ほっとしたと話していました」と田中さん。
私は、岡田さん扮するひらパー兄さんが、初めてテレビコマーシャルに登場した時の衝撃が、今でも忘れられません。「ええ!うそでしょ!」そして見慣れてくると、「面白い!」と映像を見るのが楽しみになりました。コミカルなひらパー兄さんの決めせりふ「おま!」も、印象に残ります。
「最初から『おま!』をお決まりのフレーズにするのが決まっていたようです。関西弁の『おます』が短くなった言葉ですね」と、田中さんが解説して下さいました。「おます」は、「~です」と使ったりするので、「ひらパー兄さんでおま!」は、「ひらパー兄さんです!」みたいな感じですね。
ひらパー兄さん誕生には、1通の手紙が関係していた!
平成23(2011)年に東日本大震災が発生すると、その後しばらくは日本全体が重苦しい空気に包まれていました。岡田さんにひらパー兄さんの依頼をしたのは、ちょうどそんな時期だったそうです。
「『枚方から関西を、関西から日本を元気にしたい』という手紙を岡田さんに出しまして、その熱意に応えて、快諾して下さったようです」と田中さん。就任が決まったお披露目のポスターには、その手紙の文章がそのまま印刷されています。岡田さんの地元への愛と、ひらパーの熱意が結実したことが感じられて、感動的です。
CMのギャグから、来園者数100万人超えの快挙!
平成25(2013)年に、岡田さんがひらパー兄さんに就任すると大きな話題を集めましたが、翌年にはびっくりするようなキャンペーンが展開されました。ひらパー兄さんである岡田さんを園長に就任させ、来園者が年間100万人を超えなければ解任というストーリーを打ち出したのです! コマーシャルの中で、岡田さんが見せた驚きの表情が、今も脳裏にあります。
そして、人気スターの進退をかけるドキドキするようなキャンペーンが起爆剤となって、無事に100万人超えを達成します。同じようなファミリー向けの遊園地が来園者の獲得に苦戦し、閉園に追い込まれるケースもある中で、これは大きな出来事でした。
大阪人の知恵から生まれたアイマスク
岡田さんが実際にアトラクションに乗る映像がコマーシャルで流れると、自分も同じ物に乗ってみたいと思わせる効果が大きいようです。100万人超えキャンペーンでは、アイマスクを装着してアトラクションに乗るという斬新なアイディアもありました。
「アトラクションをバージョンアップさせようと思うと費用がかかりますし、安全面でも審査があるので、実現が難しいです。そこで、今まであるアトラクションに、アイマスクをしてもらって乗る企画を考えたんです。目が見えないので、それだけでスリルが増します」と田中さん。
地上50メートルから急降下する絶叫マシン「ジャイアントドロップメテオ」に、アイマスクをしたお客さんが並んで乗り込むコマーシャルは、シュールでした。しかも、このアイマスクの表面には、岡田さんの目がプリントされているのです!
この企画は人気を呼んで、キャンペーン期間中にアイマスクがよく売れて、増産する程だったとか。現在はアイマスクを付けてアトラクションには乗れませんが、人気が続いていることから、園内のショップや、公式ウェブサイトで販売を続けています。「キャラクターグッズを買って、面白いノリに参加する気持なんだと思いますね」
コロナ禍で、遊園地の存在意義を考えた
ひらパーでは夏にはプール、秋・冬にはイルミネーション、冬にはスケートと、年間を通して楽しめる工夫をしています。順調に営業を続けていた中で、思いもかけないアクシデントがやって来ました。そう、新型コロナウイルス感染拡大による影響です。
「休業要請が出て、休園していた期間は、何ができるのかと模索をする日々でした」と田中さんは率直に当時を振り返ります。全国の遊園地がオンライン上に結集した『おうち遊園地』にも仲間入りしました。
「外出ができるようになった時に、遊園地を選択の一つにしてもらいたいという思いがありました。現在は休園はしていませんが、入園者数に上限があるので、この状態でできることを考えている最中です」
ひらパー兄さんの面白さを広めたい
岡田理花さんは、子どもの頃に家族で訪れていたひらパーに、大学生になった時に友人と久しぶりに来てみて、「意外と楽しめる」と新鮮に感じたそうです。「学生さんたち、若い世代にもひらパーの楽しさを伝えたいですね。ひらパー兄さんは、本当に面白いので、SNSなども使って、もっと広めていきたいです」
岡田さんが主演を務めるドラマや映画とのコラボポスターも人気があります。最新作は土方歳三役を演じる映画『燃えよ剣』とのコラボです。剣の先になぜかイカが刺さるというパロディが、話題を集めています。
「地方の遊園地に、全国的なスターの岡田さんが関わって下さって、有り難いですね。お蔭でひらパーの知名度も上がったように思います。コマーシャルの撮影現場では、より面白くしようと、自らアイディアを出して下さったりします。私たちはこどもから大人まで楽しんでもらえる、おもちゃ箱のような場所を目指しているので、ひらパー兄さんから面白さや楽しさを感じてもらって、来園してもらえると嬉しいですね」
どうですか? ひらパー兄さんと、ひらパーが気になってきましたか? 関西へ訪れた時は、是非立ち寄ってみて下さいね。
ひらかたパーク基本情報
住所:大阪府枚方公園前1-1
営業時間:10時~閉園時間は月により異なる。
入園料:大人(中学生以上)1600円、こども(小学生、2歳から未就学児)900円
入園料+フリーパス:大人(中学生以上)4600円、小学生3900円、2歳から未就学児2700円
休園日:時期により異なる。
アクセス:京阪電鉄「枚方公園駅」より徒歩約3分
公式ウェブサイトhttp://www.hirakatapark.co.jp/
◎新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2021年11月現在、入園券の販売枚数を制限しています。事前に公式ウェブサイトから購入ください。