江戸時代に幕府公認遊郭として君臨した「吉原遊郭」。地獄と極楽が共存する独特の世界では、様々な文化が生まれ、人々の注目を集めました。
なかでも高級遊女が着飾って供を引き連れて歩く「花魁道中」は、吉原の名物でした。この花魁道中で、ある1日だけ特殊な着物を着たそうです。
それは、どんな着物だったでしょうか?
1.金色の着物
2.真っ赤な着物
3.白無垢
さて、答えは……。
3の白無垢です!
八朔とは?
花魁道中で白無垢を着たのは、「八朔(はっさく)」と呼ばれる8月1日のみでした。この日は、かつて徳川家康が江戸入りした日で、そのため諸大名や旗本は白帷子(しろかたびら)を着て登城する決まりとなっていました。これを真似て、吉原の遊女たちも白無垢を身につけたのでは? という説が有力だそうです。
▼八朔について詳しくは、こちらから
現代の東京につながる八朔と江戸気分高まる夏の隅田川【葉月候】
白無垢にまつわる遊女のアナザーストーリー
遊女たちが白無垢を着たのには、別の説もあります。ある太夫が白い着物を着て、病気で寝込んでいました。ところが八朔の日に一番の馴染み客が来たため、病を押してその白い着物のまま道中に参加したそうです。その姿を見た人々が感動したため、この出来事以降は、白無垢姿が八朔の風物詩になったというのです。
病気で寝ていた白い寝間着で、恐らく髪型なども整えてはいなかったことでしょう。それでも義理堅い遊女の心意気に、人々は胸を打たれたのかもしれませんね。
参考書籍:『吉原遊郭のすべて』双葉社、『日本大百科全集』小学館、『世界大百科事典』平凡社
アイキャッチ:『東都三十六景 吉原仲之町』二代目歌川広重 国立国会図書館デジタルコレクション