Culture
2019.09.10

胸キュンで胸熱!落語に命をかける男たちの物語『昭和元禄落語心中』【漫画】

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『昭和元禄落語心中』は、戦前からバブルの時代まで、繊細な表現を守る孤独な落語家八雲と、破天荒で豪快な天才肌の落語家助六との、愛憎まみれる人生が物語の中心です。昭和初期に落語の世界に入った二人は固い友情で結ばれますが、八雲は助六の芸に嫉妬し始めます。恋人の芸者みよ吉に支えられ、成長していく八雲。しかし二人は別れることとなり、やがて助六とみよ吉が結ばれますが、共に謎の事故死を遂げてしまう。

この物騒なタイトル通り、命がけで落語の世界でもがく姿が描かれています。落語というと笑いの芸能の印象ですが、「ホームコメディではない落語の側面を描きたかった。落語には喜びや楽しみだけではない多様な感情が描かれています」と作者はインタビューで語っています。

『昭和元禄落語心中』雲田はるこ(講談社)

ハマる理由は落語家の姿にあった

落語というとテレビ「笑点」のイメージから大喜利と勘違いしている人もいますが、落語家が1人何役も演じながら、身振りと手振りのみで話を進め、聞き手は自身の想像力でその世界を膨らませていく芸です。演者と観客との共同作業で展開されていく一期一会の瞬間の芸。この深さとはかなさに気づいてからは「なんて贅沢な芸能なんだ!」と、私もどんどん落語が気になりはじめました。

ひょんなことから落語を好きになり、気づいたら落語会を開催するまでどっぷり沼にハマってしまうほどに。何度見ても飽きることがなく、毎回発見のある落語ですが、どうしてこれほど心惹かれるのか?まず芸能としての面白さは一番ですが、私にとっては「師匠」と「弟子」の関係。そして落語家同士の切磋琢磨する様子がなんとも言えず魅力的なのです。

かつてお芝居をかじっていた私は、演出家が指導者ではありましたが、「師匠」とはちょっと違う。ある落語家さんは、憧れの落語家さんに弟子入りしたくて、劇場に待ち伏せして土下座したと聞きました!ど、土下座!!男が男の芸にほれて自分の人生をかける!!なんなんだ、これは!!とびっくりしたのを覚えています。その落語家さんが発する「師匠」という言葉の響き。何だか自分でもよくわからない羨望とジェラシーが沸き起こったものです。

書いた人

幼い頃より舞台芸術に親しみながら育つ。一時勘違いして舞台女優を目指すが、挫折。育児雑誌や外国人向け雑誌、古民家保存雑誌などに参加。能、狂言、文楽、歌舞伎、上方落語をこよなく愛す。ずっと浮世離れしていると言われ続けていて、多分一生直らないと諦めている。