絶世のイケメンでしかも帝の息子。手に入らないものは何もないようなハイスペック主人公「光源氏」でも、恋愛には数々の失敗がありました。源氏物語で多数繰り広げられる恋愛シーンの中でも、ちょっと残念な迷場面に焦点を当ててご紹介します。
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源氏物語の恋の迷場面
光源氏の恋の迷場面を4つご紹介します。源氏物語の舞台となる平安時代と現代では時代背景や常識が異なるため、戸惑う部分もあるかと思いますが、温かな気持ちで読んでいただけますと幸いです。
『空蝉』の巻~光源氏、人妻に振られる~
『空蝉(うつせみ)』の巻は、光源氏17が才の頃を描いたもの。若く輝くように美しい光源氏に手に入らないものはなく、調子に乗った彼は人妻にまで接近します。その女性の名前が空蝉です。
彼女は決して美人とは言えませんが、つつましく嗜みのある上品な女性で、そんなところに光源氏は惹かれていきます。しかし、寝床に忍び込んだところを逃げ出され、仕方なくその場にいた別の女性と一夜をともにします。振られたからと言って何もせず帰ってしまっては、イケメン貴公子のメンツが保たれないと思ったのでしょうか・・・。
空蝉とは蝉の抜け殻を意味する言葉で、彼女が抜け殻のように衣服だけ残し、寝床から立ち去ってしまったことからこのように呼ばれるようになりました。光源氏はその残された衣服を持ち帰ります。
『末摘花』の巻~美人だと思ったら・・・~
『末摘花(すえつむはな)』の巻では、光源氏は18~19才。既に恋人のひとりを亡くすなど辛い恋愛も経験していますが、懲りずに美女を追い求めます。そんな光源氏が目を付けたのが、落ちぶれた宮家のお姫様。光源氏の中では「寂しい生活を送るはかなげな美女」と勝手に脳内でイメージされ、ライバルの男性と競うようにアタックします。
ついにライバルを出し抜いて姫君と恋人になりますが、明るい場所でよく顔を見ると美人ではありませんでした。しかも彼女は驚くほど世間離れしていて、手紙や服装のセンスもイマイチ。それでも光源氏は彼女を見捨てることなく、貧しい彼女の世話をし続けました。
こちらの絵巻は『蓬生(よもぎう)』の巻で、久しぶりに光源氏が末摘花のもとを訪ねたシーンです。右手に見える家屋がボロボロなのにお気づきでしょうか。光源氏が左遷されている間末摘花はかなり困窮していましたが、一途に光源氏を待っていました。その姿に光源氏は心打たれ、彼女を生涯を通じて支援したのです。
『花宴』の巻~光源氏、政敵の娘に手を出し島流しに~
『花宴(はなのえん)』の巻では、光源氏は20才になっています。宮中で桜の宴が催され、その帰りに自分の実の父の若妻に会いに行こうとしたところ、通りがかったのが朧月夜(おぼろづきよ)という女性。この女性は、光源氏の失脚を狙う政敵の娘でした。しかしそんなことにお構いなく光源氏は朧月夜と関係を結びます。
これに怒ったのは朧月夜の父親の右大臣です。右大臣は朧月夜を皇太子へ嫁がせるつもりだったのに、光源氏に手出しされたことでその計画が白紙になってしまいました。右大臣家を怒らせた光源氏は、京都から須磨(現在の兵庫県神戸市須磨区)に島流し同然に移り住むことに・・・。しかし光源氏はたくましくも島流し先で新しい恋人を見つけました。ただでは転ばない光源氏、アッパレです。
『柏木』の巻~妻の不倫相手の子をわが子として育てるハメに~
『柏木(かしわぎ)』の巻では、一気に時代が飛んで光源氏は48才になっています。この頃光源氏は親子ほど年の離れた女性を妻として迎えていますが、なんとその妻は同年代の若い男性と不倫関係に。
こちらの絵巻は、光源氏が妻の不倫相手の子どもをわが子として抱き上げるシーンです。光源氏にはすでにたくさんの孫がいましたが、その実の孫たちよりも美しく感じられるこの子に、何とも複雑な胸中。晩年にしてこのような仕打ちにあうとは、過去の奔放な恋のしっぺ返しがまとめてやってきたのでは・・・と考えてしまいます。
光源氏が浮き彫りにする、女性たちの美しさ
まだまだ面白いシーンはたくさんありますが、今回はおかしな恋に焦点を当ててご紹介しました。源氏物語の面白いところは、プレイボーイ光源氏が数多くの女性と関わることで、その女性一人ひとりの感性や芯の強さ、心の内面などが浮き彫りにされ、どの女性も「美しい」と感じられる点ではないかと思います。
参考:日本古典文学全集『源氏物語』小学館
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