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永遠のふたり 白洲次郎と正子

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Culture
2019.09.08

農耕なしの「縄文的定住スタイル」が社会持続の秘訣?縄文時代の食事・仕事・暮らし方を解説

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一万年サステイナブルの秘密④ 縄文的「円環する命」

貝塚から見つかる人骨は、屈葬の形をとり丁寧に葬られ、周りには土器や石器が副葬されています。「屈葬」とは、膝をお腹に抱えた、胎児と同じ姿勢で葬ることです。これは、亡くなった人がもう一度胎児に戻る、再生を意識した葬法だと言われています。

自然の再生サイクルをよく知っていた縄文人は、人も獣も生活の道具である土器や石器も、みな森から生まれ、役目を終えれば土に還っていき、時が満ちればまた役目を担って還ってくる、と考えたのかもしれません。縄文的サステイナビリティは、そんな「円環する命」という考え方にも支えられていたのかもしれません。

約8千年前の飛ノ台貝塚より出土した男女の合葬人骨。貝塚の下から、抱き合うような形で発見されたとか。(飛ノ台史跡公園博物館)

日本列島人の魂の原点に思いを馳せる

自然はできるだけ加工せず、人間のほうが自然の細かな声に耳を傾けながら、自由自在になりわいを変えて生きるー。縄文時代の叡智はことごとく、「いかに自然環境に負荷をかけずに、人間社会を充実させることができるか?」という問いからはじまる、現代のサステイナビリティ学を「地で行く」ようなものです。

「縄文人の世界」秋の広場より(新潟県立歴史博物館)

3000年前の縄文時代など、遠い遠い昔のようでもあります。しかし、その後日本で展開されるどの時代よりも圧倒的に長く続いた縄文時代が、日本列島人の心の基盤を作ったことは間違いありません。今でも日本人は、この列島の豊かな自然を「カミ」として敬い畏れ、それはアニミズムとしての神道に名残を残しています。また、食事の前に必ず「(お命を)いただきます」と唱え、「御御代付け」「おかいさん」と、食物に人間のような敬称をつけて呼ぶ文化も、食物を命の循環として捉える縄文文化の名残かもしれません。

縄文的サステイナビリティ、それは「自然保護」というようなエコな倫理観によって成り立っていたのではありません。むしろ、今でも私達の心の中に脈々と生きる「自然を敬い畏れつつ、寄り添う心」がなせる、当然の結果だったのではないでしょうか。

画像提供・協力
新潟県/新潟県立歴史博物館
千葉県/船橋市教育委員会・船橋市飛ノ台史跡公園博物館
青森県/三内丸山遺跡センター
鹿児島県/上野原縄文の森

「縄文的サステイナビリティ」後編:縄文的交易術がすごい! 日本列島全域に及んだネットワークが語る「1万年の天下泰平の世」の秘訣!?

書いた人

横浜生まれ。お金を貯めては旅に出るか、半年くらい引きこもって小説を書いたり映画を撮ったりする人生。モノを持たず未来を持たない江戸町民の身軽さに激しく憧れる。趣味は苦行と瞑想と一人ダンスパーティ。尊敬する人は縄文人。縄文時代と江戸時代の長い平和(a.k.a.ヒマ)が生み出した無用の産物が、日本文化の真骨頂なのだと固く信じている。