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永遠のふたり 白洲次郎と正子

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Culture
2019.09.08

農耕なしの「縄文的定住スタイル」が社会持続の秘訣?縄文時代の食事・仕事・暮らし方を解説

この記事を書いた人

犬は家族であり、大切なビジネスパートナー

縄文人の「グルメすぎる」食生活を支えたのは、豊かな自然や彼らの知恵だけではありません。縄文遺跡から出土する動物の骨の中には、他とはちょっと扱いが違う「特別な」動物がいます。犬です。縄文時代の犬の骨は、多くの場合まとまって出土し、丁寧に埋葬された跡が見受けられます。手向けられたと見られる花の花粉が出土する場合もあります。

狩猟をそのなりわいの大きな柱とした縄文人にとって、犬はペットである以前に、大切なビジネスパートナーでした。しかし、犬の墓を見てみると、どうやら足腰が弱り狩猟犬としての役割を終えた老犬でも、その命を全うするまで大切に飼育されていたようなのです。宗教的な信念があってか、あるいは現代人のように家族的愛情を抱いていたのかはわかりませんが、縄文人にとって犬が他の動物とは違う、とても特別な存在だったことは間違いありません。

貝塚はゴミの山じゃない! 縄文的自然との一体感

縄文時代の食生活、と聞いて多くの人がイメージするのは「貝塚」ではないでしょうか。日本全国で、およそ2700の貝塚があるといわれています。この「貝塚」、貝殻や獣や魚の骨だけでなく、破損した土器や石器などが積み上げられていることから、縄文人のゴミ捨て場だと考えられている一方、それを疑問視する研究者もいます。というのは、貝塚によっては、貝殻が丁寧に整列されているところもあるばかりか、人骨が見つかっている貝塚も多くあるからです。

貝塚は、ゴミ捨て場であると同時に、お墓でもあったのでしょうか。いや、「お墓でしかなかった」のではないでしょうか。他の生物の命を奪わなければ一日も暮らせない現実の中で、縄文人は、人も獣も魚も貝も、命あるものはみな同列と考え、貝塚から丁寧にあの世へと「送った」のかもしれません。

千葉県の取掛西貝塚。手前の動物の骨の集まりは、約1万年前当時の、日本最古とみられる儀礼跡です。(船橋市教育委員会)

書いた人

横浜生まれ。お金を貯めては旅に出るか、半年くらい引きこもって小説を書いたり映画を撮ったりする人生。モノを持たず未来を持たない江戸町民の身軽さに激しく憧れる。趣味は苦行と瞑想と一人ダンスパーティ。尊敬する人は縄文人。縄文時代と江戸時代の長い平和(a.k.a.ヒマ)が生み出した無用の産物が、日本文化の真骨頂なのだと固く信じている。