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Culture
2019.12.03

大田区の町工場を体験できるイベント「おおたオープンファクトリー」に大人も子どもも大興奮!

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東京都大田区。ドラマ『下町ロケット』の舞台になったこともあり、「大田区はすごいらしい」と聞き知っている方も多いのではないでしょうか。そう、大田区ってすごいんです。1ミクロンの誤差も許されない世界で勝負する町工場から、最先端マシンが並ぶ工場まで、多種多様の工場が集合しているんですから。

そんな区内の町工場を公開するイベントが、「おおたオープンファクトリー」(参加費無料)。2012年から毎年実施し、2019年で9回目。今年は約4000人が訪れ大盛況となったイベントの様子と、大田区のものづくり最新事情をレポートします!

おおたオープンファクトリーって?

2019年の「おおたオープンファクトリー」は、11月16日(土)に実施されました。当日は、インフォボックス(下丸子駅・武蔵新田駅)、WAZA cafe(工和会館)、くりらぼ多摩川でガイドブックを配布。参加者は自由に工場を巡ります。

イベント本部となる、「工和会館」(下丸子駅徒歩4分)では、職人によるトークショーや技術体験を実施。ピタゴラスイッチ風のドミノの実演などが人目を引いていました。オリジナルのカプセルトイ(300円)や、トートバッグ(500円)に各工場の缶バッジを集める遊びなど、プチプラ価格で楽しめる企画もたくさんで、ここだけでも十分な見ごたえアリ!

会場となる大田区内約20社の工場では、普段は非公開の内部を大公開。珍しい機械や工具に、みんな興味津々です。普段はきっと無口な職人さんなのでしょうが、イベント当日はものづくり体験をさせてくれたり、素朴な疑問に答えてくれたりと温かな雰囲気で迎えてくれました。

すごいのは、JAXAの人工衛星部品までを手掛ける「北嶋絞製作所」のヘラ絞り体験コーナー。

ヘラ絞りとは、円盤状に加工した金属に「ヘラ」と呼ばれる工具を押し当てて変形させる技術のこと。現役職人によるマンツーマン指導を受けながらヘラ絞り体験ができるのです!

それから、かっぱ橋道具街や浅草(台東区)で食品サンプルショップやギャラリーを展開するイワサキ・ビーアイも本社は大田区。体験コーナーでは、海老や野菜の天ぷらづくり体験が大賑わいでした。

これ、食品サンプルなんですよ。おいしそうじゃないですか?

意外と知らない大田区のものづくりの歴史

京浜工業地帯に属する大田区は、3000を超える工場を有する都内最大の“ものづくりタウン”。東京と横浜という大都市の中間地であり、道路は第一・第二京浜、産業道路が通り、空路はなんといっても羽田空港がある唯一の区! 産業立地条件はかなり有利です。

大田区のものづくりの歴史をさかのぼると、江戸時代に行きつきます。このあたりは海苔の一大生産地でした。その後、明治時代に東京瓦斯(ガス)大森製造所が開業、大正時代に東京湾沿いなどに工場が進出。昭和初期から軍需産業が盛んになり、急速に工業化していきました。そしていつしか、「設計図面を紙飛行機にして大田区に飛ばすと、製品になって返ってくる」というたとえ話が生まれました。

最近では、一般工業だけでなく航空宇宙や医療などの成長産業にチャレンジする企業もみられます。たとえば、「安久工機」では、大学との共同で心臓の代わりに働く「人工心臓」の開発を進めています。工場前の広場には、人工心臓とそれにつながる実験装置が置かれていました。

聞くと、「人工心臓による血液の流れなどを調べる装置で、これを使うことにより動物実験を減らせました」と教えてくれました。人や動物を幸せにするテクノロジーに超期待!

同社では、依頼を受けて製作するもの以外に独自開発のアイテムもいくつかあります。たとえば、インクではなく蜜蝋(みつろう)を使用する「ラピコ」という視覚障がい者用の筆ペン。視覚障がい者は自分のイメージを確かめながら、熱で溶けた蜜蝋で線を描ける設計になっています。蜜蝋で描いた線はプクっと盛り上がって固まるため、指でなぞれば文字や絵を認識できるという逸品。

「おおたオープンファクトリー」イベントでは、コースターに自分で絵を描く体験会を実施し、子どもたちに人気となっていました。色もカラフルで、創作意欲が刺激されますよね。

ものづくりの強みは「仲間回し」

大田区のものづくりには、ほかにはない特徴があります。それが、「仲間回し」。ある1社がメーカーから製品製作を受注すると、地域の工場同士で工程を分担して生産する仕組みのことです。たとえば、自分のところでは「切削」しかできないとしても、「穴開け」や「研磨」など、自社にはできない加工が得意な工場が近くにあるため、仲間と連携しながら大きな仕事を成し遂げられるのです。
「おおたオープンファクトリー」でも、希望者に仲間回しを体験してもらうべく、設計図面を手に工場を巡りながら材料に加工を施し、製品として「輪ゴム銃」を完成させるイベント(有料)を実施し、人気を集めていました。

「設計図面を紙飛行機にして大田区に飛ばすと、製品になって返ってくる」というのは、この横受けネットワーク「仲間回し」のおかげなんですね。最近は、後継者不足などの問題から廃業する工場も少なくないそうです。とはいえ、ラトビアから大田区に移住しオーダーメイド自転車工房を構えるなど、新しい動きも生まれています。

それに、「おおたオープンファクトリー」には、目を輝かせた子どもがたくさん。日本のものづくりを支える町工場の技術力、しっかり継承されますように!