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Culture
2020.03.31

ギョギョ!「猫は魚が好き」の定説は日本だけ?歴史から真相と理由を探る

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「猫は魚が好き」という定説が根付いている日本。
でも、この定説は、日本ならではのものらしい。
これを初めて知った人には衝撃的な出来事となる。
特に、猫と暮らしている人にとっては。

古くから肉食で知られている猫。
世界各国の猫事情を見ても、ネズミ退治のために飼われてきたという側面の長い歴史も持っており、現在もその目的で飼われているところもある。
こうした事実を見ても猫は、小動物の生肉を食べる肉食であるのがわかる。
そして、このような食事を通して、生きていく上で欠かすことができない栄養素となっている動物性の高タンパク質を効率的に摂取している。

しかし、日本の漫画でお決り的に猫が口にくわえているのは、小動物の肉ではなく、魚!
一方、西洋のマンガだと、トムとジェリーのように猫がネズミを追いかけているものが多い。

日本でペット用品のお店に行けば、日本製の猫用のご飯やおやつには、カツオやマグロなどの魚のフレーバーのものが多く、主原料に魚を使っているものも少なくない。一方、キャットフード先進国の欧米などの海外ブランドのものは、魚よりも鶏肉、羊肉、牛肉などの動物の肉を主原料に高タンパク質で猫本来の食事に近い栄養構成になっているものが多い。
また、欧米のぺット用品のお店では、魚といえばサーモンなどの白身の魚がベースとなったキャットフードが多いが、それでもチキン、ビーフ、羊、アヒル、七面鳥などの肉ベースのものの方が圧倒的に多い。

では、いったい「猫は魚が好き」という定説が日本に根付いたのはどういう経緯なのだろうか?
そして、これは本当なのだろうか?
それを知るには、日本で猫が飼い猫として人間と暮らすようになった歴史の中に大きなヒントがあるかもしれない。

猫と日本人

ネズミ退治役として日本へやってきた猫


日本へ家猫がやって来たのは、我が国に仏教が伝来する6世紀半ば頃。
なんと、猫は、主に中国から船で運ばれてくる仏教の経典などの重要な書物をネズミによる被害から守るためにその退治役として一緒に乗せられて日本へやって来たと伝えられている。
一般的には、この猫たちが日本の家猫の原点と言われることが多い。

しかし、近年になって、長崎県壱岐市(いきし)の遺跡で弥生時代中期頃の家猫とみられる2匹分の骨が出土されている。この件は、研究家がまだ調査中らしい。

世界的に見れば、アフリカ北部や西アジアに多く生息していた家猫の先祖と言われているリビアヤマネコを人間が飼いはじめたのは、今からおよそ1万年前。
穀物の栽培を始め、食物を保存しながら定住生活を開始した際に、保存してある穀物類をネズミの害から守るためにネズミ退治役としてリビアヤマネコを家畜として飼い始めたのが家猫の起源とされている。これを初期に行ったのがエジプトとされており、この技術が狩猟生活から農耕生活へ移った世界各地の民族へ広まっていったようだ。
だから、弥生時代から家猫はいたかもしれないという説も有力視されているとのこと。

富裕層のペットとしての飼い猫

しかし、現存する文献などによれば、日本の書物で家猫が最初に登場したのは、平安時代初期に薬師寺の僧の景戒によって書かれた「日本霊異記」こと「日本国玄昉善悪霊異記(にほんこくげんほうぜんあくりょういき)」。
ここに書かれているのは、奈良時代、もしくは、それ以前に伝承されたとされている日本最古の説話集。
この書物の中に登場するタヌキに景戒は注釈をつけて「ねこ」と記しているので、飛鳥時代や奈良時代には既に日本に家猫がいたのではないかと言われている。

平安時代になると、宇田天皇の日記である「寛平御記(かんぴょうぎょき)」には、その父の光考天皇からプレゼントされた黒い猫の漆黒のように美しく艶やかな毛並みなどについて、今でいう愛猫自慢のブログのような内容が書かれている文章もあるとのこと。
これは、日本で1番古い飼い猫の記録と言われている。

ここからも分かるように、当時、家猫は希少な生き物だったので、ペットとして飼うことができたのは高い身分の貴族や限られたほんの一部の人だったのだ。今でいう富裕層が希少な種類の高価な動物をペットとして飼う感覚と同じ。この時代には、「源氏物語」、「枕草子」、「更級日記」、「今昔物語」など、家猫が登場するものも結構ある。

そして、驚くことにこの当時の人々は、この貴重な生き物が逃げないように、首輪に紐を付けて屋内で繋いで飼っていたようだ。猫は飛び上がったり降りたりという上下運動をしないと非常にストレスがかかってしまう生き物でもある。紐につながれることでその動きも制限されてしまえば、猫にとっては非常にストレスがかかる暮らしであったのではないだろうか。

そして、この当時、ペットとして飼われていた猫がどんなものを食べていたのかと言えば、紐につながれていれば、よっぽどの幸運が巡ってこない限りネズミ捕りもできないので、人間に与えてもらった食べ物を主食として食べていたとみられている。
この時代、仏教の教えが日本の生活習慣のようになっていたこともあり、食生活においても獣肉を食べることが表向き禁止されていたとのこと。よって、この当時の日本には、獣肉を食べる習慣がなかった。だから、ネズミ捕りをしない猫は、主に魚で動物性タンパク質を摂取していたようだ。

ペットとしての飼い猫もネズミの退治役へ


ところが、室町時代になり街が整備されて都市化が進んでいくとネズミによる被害も深刻になっていった。この問題を改善するために豊臣秀吉は、猫を屋内で紐につながないようにという命令を出し、猫にネズミ退治をさせてこの問題の解決を試みたという逸話も残っている。
これによりこの問題はかなり改善されたが、猫の数は増えたらしい。

庶民もペットとして猫を飼える時代の到来

その影響もあってか江戸時代になると、裕福な町民や商人などもペットとしてやネズミ退治のために猫を飼えるようになったとのこと。猫を飼う経済的な余裕がなかった人でさえ、ネズミ退治の効果があるという猫の絵をお守り代わりに購入して、家の入り口などに貼っていた家も結構多かったらしい。猫は大人気。
この時代では、これまでの時代よりも猫の存在が庶民にも身近な存在となってきていた。

さらに、猫が一般庶民でも飼えるようになる引き金となったのが、徳川綱吉によって発令された「生類憐みの令」。この法令の1つに猫を屋内で紐につないだまま飼ってはいけないというような内容のものがあったので、猫は放し飼いで飼われるようになり、再び猫の数が急増。これにより、江戸時代の町民文化が栄える頃には、庶民でも猫をペットとして飼えるようになったと言われている。

猫まんまでは栄養不足

そして、この当時、一般庶民に飼われていた猫が食べていたものは、人間の食べ残し。当時の一般的な庶民は、一汁一菜の質素な食事をとっている人が多かったとのこと。毎回、魚を食べることができたわけではなかったようだ。いうなれば、おかずに魚がある時は、メインディッシュの御馳走のような感覚。人間でさえもおかずが十分になかったので、その分、お米だけでカロリーを摂取していたとのこと。そんな人間の食べ残しを猫は食べていたので、魚が無い日だってあった。そんな時は、トッピングとして鰹節がかかっていれば、猫にとっては幸運だったようだ。

まさに、これこそ、猫まんまの起源。ご飯にみそ汁のダシを取った後の煮干や焼き魚を食べた後の骨を乗せ、最後に鰹節、または汁ものをかけたものが猫まんまとして定義されていることが多い。
江戸時代の浮世絵を見ると、鰹節と猫がモチーフに描かれているものも少なくない。

猫は、高い動物性タンパク質が生きていくうえで欠かせない生き物。
人間の魚の食べ残しがその日の猫のご飯の中にあれば、猫は必死になってその食べ残しから真っ先に貴重な動物性タンパク質を摂取していたに違いない。だから、その姿を見れば、猫は魚が大好き!と勘違いしてしまう人もいただろう。
この時代の一般庶民は、現代よりも食生活が豊かではなかったので栄養不足で寿命が短かった。そのおすそわけで生きていた猫の寿命も当然、現在よりもかなり短かった。

肉食が解禁される時代の到来!


明治時代になると、文明開化によって食生活も変化。
1872(明治5)年、表向き禁止されてきた肉食が解禁となる。
しかし、この時代、肉は高級なもの。庶民が四六時中、手軽に食べられるものではなかった。日本人が現代のように肉を手軽に食べれる欧米的な食生活になったのは、近代に入り、飽食時代になってからのこと。

それまでは、肉より魚を食する家が多く、魚の消費量も多かった。だから、飽食時代に突入するまでは、いわゆる猫まんまが飼い猫のご飯となっている家庭も少なくなかったとのこと。
猫のご飯が一気に多様化して国内外の優れたものが世に浸透し、猫のおやつだけではなくサプリメントまで充実してある良い時代になったのも実はここ10年位の話。

日本人の食生活が猫本来の食生活を変えてしまっていた


ここまで見てきても分かるように、猫は日本にやって来てから、1度も魚が好きだ!なんて言ったことはない。日本人が肉ではなく魚を食べていたから、そのおすそわけをもらっていた猫も魚を食べて、わずかな動物性タンパク質をそこから必死に摂取してどうにか生き延びていた。猫が魚をそうして必死に食べているそのシーンが時代を超えて多くの日本人の脳裏に刷り込まれているので、いつの間にかそれが、猫は魚が好き!とか、猫と言えば魚!などと勘違いな伝言ゲームのように日本人の脳に刷り込まれていってしまったようだ。

だから、昔の猫は、ネズミを捕って野性的に暮らしていた猫の方が、猫本来が必要としている栄養も補われやすかったので、おそらく毛艶や眼の色も美しかったに違いない。もしくは、昔はネズミも多かったので、ネズミを捕食することで粗食を補っていたのだろう。

つまり、昔の日本人が、肉ではなく魚をよく食べていた!という日本の食文化によって、飼われていた猫も飼い主の食生活に準ずるものになったのだ。
生まれた時からよく魚を食べていた猫であれば、なおさら一生涯にわたって魚をよく食べる猫となりやすい。
このことは、猫全般にみられることで海外の猫でも同様のことが起こる。
トウモロコシが主食のメキシコではトウモロコシを食べている猫もよく見かけ、イタリアなどではトマトソースがかかったパスタを、酪農が盛んなフランスやスイスなどではチーズを食べる猫も多い。
だからといって、それが好物というわけでもないのが猫らしい。

生後3か月で決まる猫のおふくろの味

なぜなら、猫は、生後2か月から3か月までによく食べたものを生涯、その後もよく食べると言われているだけで、それが好物とは限らないからだ。
猫は、通常、母猫にこの期間に食べてよい物、腐った食べもの、危険で毒な食べ物の見分け方などをはじめ、独り立ちして生き抜いていける術を全て徹底的に教え込まれると言われている。そして、一般的には雄猫の方を母猫は早めに独立させるらしい。
この期間によく食べた食べ物が、その猫のおふくろの味のようなものになるので、真っ先に安心して食べられる安全なものでありながら、母親を思い出す食べ物となるのだ。

普段口にする食べ物が肉体や精神に影響している

やはり、猫には生きていく上で獣肉が欠かせないと我が愛猫を見ていてもつくづく思う。
魚でも猫が生きる上で欠かせないタンパク質は取れるが、動物の肉ほど豊かなタンパク質を効率的に摂取しづらい。また、魚と言ってもイワシ、サバ、アジなどの不飽和脂肪酸が多い青魚は、食べすぎるとイエローファットなど猫の健康を害する症状も発するので危険。だから、キャットフード先進国の欧米などの海外では、魚がベースとなっているものは、サーモンなどの白身の魚を使用しているものが圧倒的に多い。

また、特にドライフードは、安いものほど穀物類が多く含まれていて、これが室内飼いされている猫を太らす原因にもなっているし、猫の消化器官にも負担をかける。本来、猫は、生肉を内蔵ごと食べてしまう肉食用に体の構造ができている。そのような猫本来の食事を可能な限りしていれば、しなやかな筋肉で引き締まった猫本来の美しい肉体や跳躍力などを高齢でも保っている室内飼いされている家猫も少なくない。

現在は、そのようなキャットフードも昔よりは手に入りやすくなっているので、ありがたい。
また、ドライフードでも、人間が食べることができるグレードの肉を使用し、冷凍ではなく、さばいたその日にドライフードにする無添加でノーグレイン(穀物類不使用)の優れたキャットフードやオーガニックのものも増えている。
私はどんなキャットフードであれ、自分の猫に食べさせる前には、まず、自分が猫目線で食べてみるのだが、このような優れたものは、人間目線で食べても楽しめるような品質のものだと思う。

ノーグレインで無添加の動物の肉メインのお食事に変えると、すぐに猫の毛艶が良くなり、しなやかな筋肉でぐっと体が締まり、跳躍力も増し、目の色も美しくなるという話はよく聞く。愛猫を見ているだけでも、いかに普段口にする食べ物が肉体や精神に影響しているかがよ~くわかる。
そして、言うまでもないが、これに加えて、こまめに水分を摂取させるように工夫することや尿をチェックすることも飼い猫に大敵である腎臓病から愛猫を守るうえで欠かせない。

人間の言葉をしゃべりだす現代の飼い猫たち


最後に、再びびっくりする人もいるかもしれないが、猫は一生に1度、人間の言葉で喋り出す時があるらしい。
それがいつかは分からないが、それを経験している人間も非常に多い。
現代の家猫は昔よりもかなり食べ物も良くなり、サプリまで摂取している猫も少なくなく、人間と同様に長寿になっている。
そして、一生に1度どころか、1度話し出せば、2度も3度も起こるので、日常となるようだ。猫語の名残りは多少あるけれど人間とおしゃべりをしている猫も意外と多い。
ベビー・サイン・ランゲージならぬ、キャット・サイン・ランゲージで猫と意思疎通を図っている人々も少なくない。

また、猫が地球に存在している理由も昔とは異なっているんだとか。
私から見れば、すべての猫は天使のような存在に見える。
猫との出会いだって、不思議でステキなドラマティックな出会いをする人が多い。翼の折れた天使のような猫を救って、再びその羽をはばたかせさせている人間も少なくない。

まずは、お宅の愛猫に聞いてみて!
「どっちが好き?魚?肉?」って。
人間とおしゃべりする猫であろうとなかろうと、当たり前のこととして毎日色々と話しかけていれば、ある日、突然、人間の言葉を話し出す…。
その前に、人間が猫語をマスターしている場合も多いけど、猫が人間の言葉を話し出すことを心のどこかで恐れている人には、その機会に出会えるのは、その猫の一生につき1度だけとなるらしい。

書いた人

猫と旅が大好きな、音楽家、創作家、渡り鳥、遊牧民。7年前、ノラの子猫に出会い、人生初、猫のいる生活がスタート。以来、自分の人生価値観が大きく変わる。愛猫を連れ、車旅を楽しむも、天才的な方向音痴っぷりを毎度発揮。愛猫のテレパシーと自分の直感だけを頼りに今日も前へ進む。