谷中は有名カフェの多いエリアですが、その中でも最近ひときわ人気なのが〈喫茶ニカイ〉。
名物メニューは透明感のあるクリームソーダ。それに加え、古民家の2Fフロアをリノベーションし、80年代J-POPをBGMにした空間は若い世代にも受けています。また、谷中にあるステンドグラス店の「nido(ニド)」が手がけたランプがテーブルや店内を彩り、店同士のつながりも感じられるのが良いところです。
谷中散歩で押さえておきたい美しいビジュアルのクリームソーダを中心に、メニューや店内の様子、店に込めた思いなどをご紹介します。
水色のクリームソーダにフランス産のヨーグルトアイス
「喫茶ニカイ」の名物メニューは、「ニカイのクリームソーダ」。
一見すると、いわゆる「映え」を狙っているメニューのように思えるかもしれませんが、透き通るような淡いブルーのクリームソーダに口をつけると、その認識の範疇に収まらない味わいだと気づくはず。
SNSの投稿でも「今まで飲んだ中で、いちばん美味しいクリームソーダ」と語るお客さんの声も少なくないのだとか。
「喫茶ニカイ」独自のクリームソーダを作りたいと、オープン直前までメニューを考案したとのこと。通常のクリームソーダは目が覚めるような鮮やかなグリーンですが、カフェのテーマカラーであるブルーのシロップを使い試作を重ねました。
そして、クリームソーダにはバニラアイスが定番ですが、あえて王道からずらし、ヨーグルトアイスをチョイス。クリーミーだけどどこか爽やかなフレーバーは、実はなんとフランス産!
「喫茶ニカイ」はアイスの種類が豊富で、その中でもクリームソーダに1番マッチしたヨーグルトフレーバーが選ばれました。
実際に頂くと、甘さを抑えたソーダにまろやかな酸味のきいたヨーグルトアイスが絶妙!思ったより重たさはなく、ボリュームのある見た目と反して食後にもペロリといけちゃいます。
先に詳しく説明してしまいましたが、最大のこだわりは、「見た目の可愛さだけではなく、きちんと美味しい」こと。その評価は、実際に来たお客さんのInstagramなどの投稿からもお墨付きです。
そして「ニカイのクリームソーダ」のビジュアル面での最大の特徴は、アイスに旗が刺さっていること!!なんとなく、懐かしい感じがしませんか?
この旗のアイデアは、カフェのオープン直前に、たまたま目にしたお子様ランチの国旗を見て思いついたんだとか。
大人になると、そうそうお子様ランチを食べる機会はないものの、あの旗を見て気分がぎゅーんと上がる人も少なくないのでは。
「ニカイのクリームソーダ」を見てワクワクするのは、そんなノスタルジックな感情も思い起こさせてくれるからなのかもしれません。
また、看板メニューのクリームソーダの雰囲気が楽しめる、青いゼリーにヨーグルトアイスがのったミニゼリーもありますよ!
ソーダとアイスの組み合わせは10種類も!
こだわりのクリームソーダから、さらにこんな展開も。ドリンクとアイスのバリエーションが豊富で、それぞれのマリアージュが楽しめます。
たとえばレモンスカッシュにマスカルポーネのアイスなら、レモンチーズケーキのフレーバーに。ジンジャエールにパッションフルーツのアイスなど組み合わせの妙が感じられるドリンクメニューもたくさん!
谷中の味を堪能できるサンドイッチ
「喫茶ニカイ」はフードメニューも充実しているので、ランチにもおすすめです!
特にイチオシなのが、「ダブルのりたまコンビーフサンド」。
トロトロの半熟の目玉焼きからこぼれる濃厚なオレンジ色に目を奪われます。
谷中「ラ・スール・リマーレ」の食パンを使い、フィリングには半熟目玉焼き2個に海苔が2枚、「千駄木 腰塚」のコンビーフと薄切りベリーハムを。かなりのボリュームに見えますが、トロトロの半熟卵と組み合わさってさらに濃厚になったコンビーフが後を引く美味しさ。あっという間に完食しちゃいました。
親戚の家で寛ぐような感覚で
「喫茶ニカイ」は、築50〜60年の古民家の2Fにあります。
入口に看板はあるものの、1Fがうつわ屋なので戸惑うかもしれませんが、店へ入ると中ほどに2Fへ昇る階段があります。
懐かしさと新しさの共存する空間づくりで、どこかおじいちゃんやおばあちゃんの家で寛ぐような居心地の良さをコンセプトとしています。
昭和に建てられた家の建材に注目すると、窓にはすりガラスがそのまま使われていて、店内に柔らかな自然光が差し込んでいます。
古民家のレトロさをアップデートしたインテリア
空間を彩るのは、天井から吊るされたステンドグラスのランプ。
こちらは谷中にあるステンドグラス専門店「nido」のアイテムで、各テーブルに置かれたキャンドルホルダーは「nido」の特注品です。
ステンドグラスのテーブルランプから光が透けて見える色合いもきれい!
レトロモダンなブルーがこのカフェのテーマカラー。壁には無数の額縁がずらりと並びます。どこか物語のワンシーンのような世界観で、カフェ特集のムック本で表紙にもなっています。
BGMに使われているのはレコードプレイヤー。昭和歌謡を聞いていると、なんだかカラオケにでも行きたくなるのはわたしだけでしょうか。
うつわ店併設のカフェからリニューアルした喫茶店
「喫茶ニカイ」のオープンは2019年。もともとは1Fにあるショップ「kokonn(ココン)」で、東欧雑貨とうつわを扱いながらカフェを併設していました。次第に国内作家を中心としたうつわがメインとなり、カフェスペースが縮小されることに。その後リニューアルオープンという形でできたのが、「喫茶ニカイ」です。
さきほど紹介した額縁は東欧雑貨店の頃に仕入れたものを使い、料理には1Fで扱う作家のうつわを使用しています。
バラバラに見えるものたちが実は密かにつながりを持っているのが、「喫茶ニカイ」を唯一無二の存在にしている最大の要素なのかもしれません。
それは、「喫茶ニカイ」と「kokonn」のオーナーである櫻井崇雄さんのこだわりからも伝わってきます。
好きなものから生まれるクリエイティブ
自身の「好きなもの」への思いをもとに、店舗運営やオリジナルグッズの製作など幅広く活動する櫻井さん。
前述の他に「ネギが好きだから」と始めたねぎ焼き屋「ト灯」、そしてイラストレーターの師岡とおるさんとのプロジェクト「NONBEE!」など、その活動の原点となるのは「好き」という気持ち。
会社員を約10年経験し、その後自分の好きなことを仕事としていった結果生まれたのが「喫茶ニカイ」でした。
「喫茶ニカイ」で使われているうつわにもこだわりがあるのは、うつわが好きでうつわ店を営んでいるから。
「うつわも前からお好きだったんですか?」と聞くと、実は飲食店を始める際にうつわの生産地を巡って作家と出会い、徐々にその魅力にはまったのだとか。
どんどん話が広がってしまいましたが、何が伝えたいかというと、「喫茶ニカイ」のメニューから空間づくりまで全てに思いが感じられるからこそ、熱い支持を得られているのではないかということです。
お酒が進むメニューも?
「喫茶ニカイ」ではフレンチトーストも人気のスイーツメニューではありますが、実はお酒が進む渋いメニューもあるんだとか。
その背景には、「喫茶店であって喫茶店じゃない」という裏のコンセプトが隠されています。
「喫茶店だけどもつ煮込みがうまい、とかおもしろいなって。名物メニューで『塩もつ煮込み』もあるんですよ」と話す櫻井さん。
きれいなクリームソーダに惹かれて来たものの、知れば知るほど奥の深い「喫茶ニカイ」なのでした。
■喫茶ニカイ
住所:東京都台東区谷中6-3-8-2F
電話:03-5834-2922
営業時間:11時〜18時
公式Instagram:@kissa.nikai