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大人だけが知っている!「静寂の京都」

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Gourmet
2022.04.08

老若男女に愛される文化の発信地。東京・谷中「カヤバ珈琲」の進化系たまごサンドのひみつ

この記事を書いた人

こちらは谷中の大人気スポット「カヤバ珈琲」のたまごサンド。

喫茶店のたまごサンドといえば、真っ白な食パンに黄色いたまごがフィリングされているのを想像する人が多いのではないでしょうか。

たまごサンドは、マヨネーズで和えたサラダタイプと、たまご焼きタイプの2種類があるけど今回はたまご焼きタイプ!


レトロやノスタルジックという文脈で語られがちな「カヤバ珈琲」ですが、実はとってもチャレンジ精神旺盛なんです。

昔ながらの喫茶店の風情を保ちつつ、どんな風に進化して愛され続けているのか。そのひみつに迫りました!

上野恩賜公園や美術館に行ったあと近くを散策するのに、よくここの前を通ります!

ゆっくりと時間をかけて味わいたい。名店のたまごサンド

「カヤバ珈琲」の名物メニューといえば、なんといっても「たまごサンド」。

ひとくちかぶりつくと、ハードパンならではのしっとりとした食感にほのかな酸味が味わい深い一品。

熱々のぶあついたまご焼きは、挟んだパンからも焼きたての温もりが伝わり食欲をそそります。

おいしそう〜!


だし巻きたまごのようなふわふわで、ちょうどいいとろっとした食感にうっとり。ソースにはディルマヨネーズを加え、ハーブの爽やかさをプラスしています。

ディルマヨネーズ!!


ワンプレートに添えられたグリル野菜とスープを合わせていただくと、思った以上におなかいっぱいに。質・量ともに満足度の高い名物メニューです。

白い磁器に青色の模様がついたラウンドプレートにハードパンという見た目にも麗しいビジュアル。

ザ・喫茶店らしからぬ、スタイリッシュな「カヤバ珈琲」の「たまごサンド」ですが、これには理由がありました。

さまざまな人が集まる場所だからこそできる「あたらしい提案」を

もともと白い食パンを使った「たまごサンド」をリニューアルしたのが約2年前。

新型コロナウィルス感染症対策による一時休業を機にメニューを再考し、名物メニューをブラッシュアップすることに。

「近くに『VANER』というサワードウブレッドの美味しいベーカリーがあるので、サンドイッチに使いたいなと思ったんです」と話すのは、「カヤバ珈琲」運営マネージャーの成瀬 真理子さん。

パン好きにこそ知られているサワードウブレッドですが、変更した時は戸惑う常連客の声もあったとか。

サワードウブレッド、少し酸味のある生地ですね!大人の味って感じがします!


「老若男女が集まる『カヤバ珈琲』だからこそ、あたらしいものを提案できる土壌があります。最初のうちは食べ慣れなくても、美味しいからきっと受け入れてもらえるはず」と、当時を振り返ります。

その予想通り、常連客からは「パンは変わったけど美味しいね」と嬉しい感想を頂いたそうです。

それから、ハードな食感のパンに変えた理由はこんなところにも。

「サワードウブレッドって、しっかりとした食感で食べごたえを感じられる反面、ふつうの食パンよりも食べ終わるまでに時間がかかります。もちろん従来のいわゆる『喫茶店のたまごサンド』も美味しいけれど、食べやすい反面、サクッと食べ終わってしまいますよね。

一時休業をきっかけに、観光地の人気店というよりは、お客さんにゆっくり過ごしていただける空間に戻したいというのもあったので、時間をかけて味わえるサワードウブレッドにしました。白いパンのたまごサンドは他店でもおいしいものがたくさんありますしね」と、成瀬さん。

自分は食べるのが早いからありがたいです(笑)


メニューの挑戦はもうひとつ。

「カヤバ珈琲」には喫茶店の定番メニューであるブレンドコーヒーが存在しません。

コーヒーは4年前からノルウェー発の「フグレン」が扱うシングルオリジンの珈琲豆のみを使い、浅煎りのフルーティーさを味わう提案を続けています。「喫茶店のコーヒー=深煎りの苦い珈琲」というイメージと真逆をいくスタンス。

コーヒーのみテイクアウト可能

「『浅煎りもアリだな』って思ってもらえるきっかけになればいいなと。『フグレン』はシングルオリジンしか出さないので。産地ごとの特長を生かす香味焙煎なので、そういうこだわりを引き出せるように、レシピも毎日少しずつ変えているんですよ。今日の天気や湿度を確認して、飲みながら調整しています」と成瀬さん。

その挑戦はお客さんにも伝わり、「浅煎りは初めてだったけど美味しかった!また今度注文するね」とお褒めの言葉をいただくことも。そういったお客さんの言葉に幾度も励まされたと言います。

学生時代スタ○でアルバイトしていたのですが、深煎りが苦手で……。飲んでみたい!

建物に残された「カヤバ珈琲」の歴史

大正5年(推定)築の建物は、もともと店舗兼住宅として建てられたといわれています。ミルクホールやかき氷店などを経て、昭和13年より「カヤバ珈琲店」としてスタートしました。

写真提供:カヤバ珈琲
ほんとうに、そのままの形で残っているんだなぁ…


平成18年に一旦閉店しましたが、その後、地元の常連客や通っていた芸大生からの惜しむ声をきっかけに復活。地元のNPO団体のサポートを受けながら現在まで営業を続けています。

先代の頃に通っていた元芸大生だったお客さんから、「消しゴムのごみをまとめておかないと怒られたのよ〜」と、かつての先代の人柄がうかがい知れるエピソードを教えてもらうこともあるそう。先代の女性マスターは、穏やかで優しいタイプというよりは、地元のお母さん的な存在だったようです。

学生の溜まり場だったのかな。アオハル!

「カヤバ珈琲」で見たい!レトロ建築の注目ポイント10

そんな「カヤバ珈琲」の建物には、見どころがいくつも存在します。

まずは外観から。

「出桁(だしげた)造り」と呼ばれる、商家建築に特徴的な装飾は、昔とほとんど変わっていません。


「カヤバ珈琲店」時代から現代まで使われている、ひまわりのような明るいトーンの黄色い看板。

看板のフォントが可愛い!


角にある「Coffee カヤバ」と書かれた看板も当時のまま。

ロゴは木製の看板にも使用されています。

1階は建築当初から店舗として設計されていたようで、当初は呉服屋だったという説もあるとか。

窓がたくさん!自然光がたっぷり入って気持ちよさそう〜


当時からそのままだという床にも注目を。ひび割れも時間の経過の証し。

扉にも注目を。額縁のような窓枠がつらなる洋風の扉は、四隅に三角のモチーフがつけられたモダンなデザイン。

そして、扉の右で使われているすりガラスは、現在では作り手がいないと言われている貴重なガラスです。

扉の上部に貼られているプラスチックのPOPもいい味出してるフォント!

カウンターの煉瓦壁は、当時の高さから上3段分を追加で積み上げており、下段は当時の煉瓦を使用したものです。

細くて急な昔ながらの階段を登ると、座敷があります。よくみると敷居がふたつ。もともと2部屋あったことがわかります。

気になる方は視点を下に向け、かつてあったであろう「ふすま」の敷居を探してみてはいかがでしょうか。

昔から続けているメニューも。

建物の過去に思いを巡らせながら、当時から続けているメニューもご紹介します。

「ルシアン」はコーヒーとココアを合わせた、穏やかな甘さのドリンク。コーヒーが苦手な人も飲みやすいメニューです。ココアほど濃厚でまったりせず、まろやかな甘みなのでフードとの相性もばっちり。

また、フードメニューでは「ハヤシライス」もおすすめだとか。隠し味にコーヒーを使っているのは、先代の頃から変えていないこだわりです。

平日のモーニング限定メニューでは「あんバタートースト」もじわじわと注目を集めているとのこと。

写真提供:カヤバ珈琲

モーニングは11時までなので、早起きして谷中散歩もいいかもしれませんね。

このお店で1日をスタートできたらすごく気持ちよさそう!

大胆に変えるところと、変えないところを。

この2年間でより、お客さんが飲食店へ足を運ぶことの有り難みを実感したと話す成瀬さん。

「飲食に対する価値観が変わっているので、美味しいものを食べることや、誰とどう過ごしたいかをみんなが考えるようになった気がしています。
そういうときに、ゆっくり味わえるもの、ゆっくり楽しむとさらに味が出てくるものをお出ししたいなって。今は、変化も馴染んで受け入れてもらえているかな?と感じています」

私もこの2年間で、人と触れ合う時間がどれほど大切か思い知らされています。


穏やかな時間を過ごしたお客さんは、満足そうに店を出ていきます。取材でお邪魔した際も、店を出るお客さんが、こちらが入るまでしばらくドアを抑えてくれる姿も。そういうちょっとした心配りは、穏やかな場所から生まれてくる産物でもあるように感じます。

本来、喫茶店というのはふらっと立ち寄れる場所ですが、「カヤバ珈琲」では前日までの予約を受け付けるサービスを開始しました。

「昔ながら」に甘んじず、昭和から続く歴史を絶やさずに看板を守る。お客さんのニーズを細やかにすくい取り、試行錯誤の中で新しいサービスを取り入れる柔軟な姿勢。

「カヤバ珈琲」のそんな思いが、老若男女からの人気を博しているのかもしれません。

■カヤバ珈琲
住所:東京都台東区谷中6-1-29
電話:03-3823-3545
営業時間:月-金/8:00-18:00
土日/8:00-19:00
公式Instagram:@kayabacoffee

書いた人

浅草育ちの街歩きエッセイスト。『いつかなくなる まちの風景を記す』をコンセプトに、年間500軒の店巡りで好きな店を語るWebマガジン〈かもめと街〉の執筆を中心に活動。喫茶店などレトロなものに惹かれる。消えゆくタイルを集めた写真集『まちのタイル』を自主製作で販売。散歩好きなのに地図が読めない方向オンチ。 ■Webマガジン〈かもめと街〉https://www.kamometomachi.com ■写真集『まちのタイル』https://kamometomachi.booth.pm/items/3904655