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2019.11.12

うなぎの名店3選!東京、名古屋、大阪、鰻重を食べるならこの店が間違いなし

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江戸時代前期の元禄年間にできたといわれる蒲焼き。以来、およそ300年もの間、変わらないつくり方でうなぎは料理されています。老舗で食べれば、歴史ある座敷の雰囲気も相まって、時間旅行気分になります。長年愛される理由は、お店が大切にしている数々の技ともてなしにあります。東京、名古屋、大阪で、名店の舞台裏を拝見しました。

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うなぎの裂き方は東西まるで逆。江戸の背開きに対して、大阪では腹開き、名古屋では両方が混在しています。江戸には侍が多く、腹を割くのは切腹を思わせるので、背から開くようになったとも、江戸のうなぎは焼いたあとに蒸すので、腹から裂くと、腹の薄い部分が端になり、焼いているうちに破れやすいからともされています。

では、各地ではうなぎをどのように焼いているのでしょうか。その焼き方を、東京の『重箱』、名古屋の『錦三丁目 いば昇』、大阪の『本家柴藤』で教えていただきました。

江戸の味を今に伝えるタイムカプセルのような『蒲焼き』

重箱2-min
東京・赤坂で江戸時代から続く老舗『重箱』では、8代目主人の大谷晋一郎さんが、毎日の火加減に気を配ります。「うなぎを焼くときには、強い炭と弱い炭を使い分けています。強い炭とは、備長炭を多く使って800℃くらいの高温にすることです。最初に生のうなぎを焼くのを『しらを入れる』といいますが、そのときはうちわで強くあおぎます。たれをつけてからは軽くあおぎながら、弱い静かな炭で焼きます」

強い炭で焼くのは5分。表面に脂が噴いてくるまで焼き、そのあとすぐに蒸籠で蒸します。時間はうなぎの質によるため、加減を指先で計りながら蒸します。その後、たれをつけて焼きます。たれは3回、たれの入ったかめに串ごとつけます。たれは醬油とみりんだけでつくる江戸前。すっきりしています。「1回目で色を付け、2回目で味をのせ、3回目で照りを出します。脂と炭火をうまく調和させて照りを出しています」

アイキャッチ2たれをつけて弱い炭で焼く。

たれをつけてからは頻繁に焼く場所を変えます。炭火の温度が場所によって違うので、均一に焼けるようにうなぎのほうを動かしているのです。「蒲焼きはすでに完成している料理。工夫といえば、お客様の心地よい間で出すことですね」と言う大谷さん。

『重箱』では、焼きたてを食べてもらうことが、最も重要だと考えています。蒲焼きができたタイミングで炊きたてのご飯を出します。「うなぎとご飯は夫婦もの」と言うそうですが、このご飯も魔法のようにおいしく炊けています。

重箱(じゅうばこ)

薬味をかけたり、お茶をかけたり、多様な食べ方が楽しい『ひつまぶし』

いば昇1
名古屋でうなぎといえば、ひつまぶしが有名です。刻んだ蒲焼きがおひつのご飯の上にのせてあり、客が各々茶碗によそって薬味をかけたり、お茶をかけたりして食べるものです。この楽しい食べ方は、『いば昇』の3代目が考えたものだそうです。

うなぎは腹から開き、頭を落とします。これを5匹金串に刺して、炭火で焼きます。途中で大きなかめに入ったたれにつけます。たれは、たまりとみりんで仕立てた名古屋好みの味です。

DMA-_V7A7196たれがしみたご飯。つい3杯は食べてしまう。

「見た目の色は濃いですが、しょっぱいわけではありません」とご主人の木村知正さん。かりっと焼かれたうなぎに、うまみと甘みのあるたれがからみます。うなぎが軽く焼き上がっていて、お茶をかけてしっとりした具合になるのもちょうどいいようです。こちらでは、長焼きと呼ぶ蒲焼きも、長いままではなく、切って供します。

錦三丁目 いば昇
(にしきさんちょうめ いばしょう)

仕上げはご飯の間でふっくら蒸す。関西特有の『間蒸し』

本家柴藤1
大阪の老舗『本家柴藤』は、享保年間(1716〜1735年)創業、現在は15代目の柴藤成利さんがうなぎを焼いています。元は、将軍家に魚を献上する川魚商で、大坂城に近いところで料理屋を開業しました。今は高麗橋にありますが、以前は淀屋橋にあり、川に面した座敷と船の中の座敷で営業していました。うなぎをご飯の間に入れて蒸す『間蒸し』を考案した老舗です。

DMA-_V7A6824途中で縫い串と呼ばれる串で、うなぎを縫うように打っていく。

大阪では、うなぎの腹を開き、頭はつけたまま金串で5本のうなぎを刺して、炭火で焼きます。焼けるにしたがって縫い串と呼ぶ金串を打っていきます。水分が飛びすぎないように水を少しかけることも。途中でたれを3、4回かけ、さらに焼いていきます。うなぎの質にもよりますが、だいたい20分くらいで焼き上がります。

たれは、たまり、みりん、灘の酒などで仕立てます。奥のほうに甘さのある上品なたれが、直焼きのうなぎによく合います。「関西の料理屋さんは、前身が川魚屋さんというところが方々にありますよ」と14代夫人の柴藤滋子さん。川魚生簀料理屋が江戸時代に発達し、その中から料亭になるところと、うなぎに特化していくところが出てきたのでしょう。

本家柴藤(ほんけしばとう)

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暑い夏は老舗のうなぎで江戸っ子気分いっぱいに