「おわかりいただけただろうか?」
そんなテロップが出そうな巨大な「寛永通宝」(かんえいつうほう)の砂絵が香川県観音寺市にあります。ちなみに「かんのんじ」ではなく「かんおんじ」と読みます。地元では古くから砂絵を見た人はお金持ちになれると伝わっており、実際に超ラッキーな億万長者も現れたパワースポットとして注目されているそうです。金運アップと聞けばじっとしていられません。まさにタイムイズマネー!謎を探るべく早速現地に向かいました。
いつ誰が何のために作った砂絵?
JR観音寺駅からタクシーに乗り5分ほどで「琴弾公園」に到着します。公園内の白砂青松が広がる松原には縁起が良いとされる“根上りの松”も。これは幸先の良いこと……。
松原をしばらく散策していると、有明浜の白砂に描かれた砂絵に到着しました。砂浜にくっきりと浮かび上がる「寛永通宝」のサイズは縦122m、横90m、周囲345mの巨大な楕円形で、その砂絵の全貌は山頂の展望台からしか見ることができません。
この巨大な砂絵、いつ誰が何のために作ったものなのでしょうか?研究者の間でも諸説紛々、入り乱れているのですが公的な書類が残っていないため事実は砂の…いえ闇の中なのです。これほどまでの大掛かりな造形にも関わらず出自が全く不明とは、まるでナスカの地上絵のようです。
巨大砂絵は一晩で造られた説
市や観光協会で表示しているものには、「1633(寛永10)年に時の高松藩主生駒高俊公が県内巡視の折、村民が歓迎のため一夜にして彫り上げたということになっております」とされています。展望台にある立て札にも同様の記載が。いくらお殿様を歓迎するためとはいえ、1夜にしてこんな巨大な砂絵が出来上がるものなのでしょうか。加えて寛永通宝が流通したのはその3年後の1636(寛永13)年からであり、生駒公が来訪したという記録も残されていないという。謎は謎を呼ぶばかりです。
もう一つ、江戸末期に造営された説もあります。観音寺市史(昭和37年編さん)によると、幕府が諸藩に沿岸警備の増強を命じた際に、丸亀藩は荘内と有明浜の2か所に砲台を築造することになり、京極朗徹公が来訪した際に普請奉行が「藩主の一興に供せんがため掘らせた」という説です。しかしこの説についても領主を歓迎するなら家紋などにするのでは?よりによってなぜ銭形を掘ったのか?と研究者の間からも疑問符がつけられています。さらに砂絵はもともと銭形ではなく、豊臣家の象徴の「ひょうたん」が描かれていたという説も。当時の生駒家は親豊臣派で、徳川幕府になってからも豊臣家の再興を願っており、1633(寛永10)年の幕府巡検使の際に、倒幕のシンボルである「ひょうたん」が見つかってはならないと、慌てて現在の銭形に造り変えたという説もあるのです。慌てても間に合ったのが不思議です。
残るは明治時代の写真だけ
更に観光協会の事務局長・藤原正清さんによると「確実なのは、1900(明治33)年に撮影されたとされる写真が残っているようです。1987(昭和62)年4月と2019(平成31)年1月の2回、観音寺市内においてシンポジウムが開催され、色々な説が上がりましたが証明する文献などが見当たらず結論は出ておりません」とのこと。謎は謎のままの方が楽しいような気がしてきました。
さてそれでは最も砂絵がきれいに見渡せる琴弾山の山頂にある展望台に登ってみることにしましょう。山頂には一方通行の道を沿ってアクセスすることができますが、隣接する「琴弾八幡宮」の381段ある石段を登った先にある本宮からも行くことができます。
「琴弾天満宮」のいわれによると、703(大宝3)年、嵐の過ぎ去った夜に、海岸に一隻の船が現れて、妙なる琴の調べにうっとりした人々が、琴の主を船とともに山頂にひきあげ、神殿を建て、琴弾八幡宮」を祀ったと伝わっています。琴を祭神とすることから、技芸や勝利の神として多くの人々が参拝に訪れるほか、滝沢馬琴の「椿説弓張月」の舞台にもなっている神社です。本宮の裏手にある石段を下ると展望台はすぐそこです。
これは懐かしの時代劇のオープニング映像?
展望台にある「象が鼻」という岩の上に登ると、穏やかな瀬戸内海と美しい松原の絶景が眼下に広がります。そしてその美しい景色をバックに浮かび上がるのが「寛永通宝」の文字が刻まれた見事な銭形の砂絵です。実際は楕円形ですが、展望台からは真円に見えるようになっています。こんな緻密な設計も誰が考えたのでしょうね?そしてこの砂絵、時代劇ファンならおわかりでしょう。北大路欣也主演の「銭形平治」のオープニングに登場したのがこの砂絵です。この場所で主人公の平治が捕りものをしている撮影も行われたそうです。
幻想的なライトアップもおすすめ
お天気に恵まれれば一番くっきり見えるのが14時頃、また、日没~22時までのライトアップもお勧めです。通常はグリーンですが、期間限定でゴールドやブルーにライトアップされることもあります。
市民や観光客による”砂ざらえ”
ここで「雨風の影響は?どうやってこの砂絵の景観が保たれているのだろうか? 」と疑問になりませんか?実は銭形砂絵の手入れとして、年2回、春と秋に市民や観光客がスコップや鍬などで砂を上げたり、形を整える「砂ざらえ」という作業が行われています。春は毎年4月29日、秋は10月の最後の日曜日か11月の第一日曜日に行っていましたが、令和2年は新型コロナの影響で春は中止となり、秋は市の職員のみで行いました。
砂絵のご利益で8億円×2本が出た?
銭形砂絵は、昔から「これを観たものは健康で長生きしてお金に困らない」と言われていました。この噂が一気に有名になったのが2013(平成25年)年。観音寺市内の宝くじ売り場「観音寺チャンスセンター」で当時のロト7史上最高賞金8億円が同時に2本出たのです。当選した人が銭形砂絵を観た後に宝くじを買ったという噂が伝わり、金運のパワースポットとして注目が集まっているのです。また2019年8月にはロト6の最高賞金6億円も出たのだそう。これは偶然の一致でしょうか!
展望台では砂絵を撮影し、早速スマートフォンの待ち受け画面にしている人も見かけました。みなさんもパワースポットである「銭形砂絵」を見て金運アップした後、高額当選の出た「観音寺チャンスセンター」で宝くじを買えば、ビッグチャンスが訪れるかも知れませんね。
観音寺市HP
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観音寺観光協会HP
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観音寺チャンスセンター
香川県観音寺市観音寺町甲1171-14
営業時間:10:00〜18:00
観音寺チャンスセンター