「天下三名槍(さんめいそう)」と呼ばれる3つの槍をご存知でしょうか。蜻蛉切(とんぼきり)、日本号、そして御手杵(おてぎね)。それぞれ個性の異なるかたちとユニークなエピソードを持つ槍は、今日まで愛されてきました。今回は、そのひとつ御手杵と主人である結城晴朝(はるとも)の暮らしていた茨城県結城市をガイドします。
御手杵ってどんな槍?
江戸時代には「西の日本号、東の御手杵」と称されていた屈強な槍・御手杵。鞘(さや)がまるで杵のような形をしていることから「御手杵」の名前がつきました。
御手杵が生まれたのは、室町時代。下総国(現在の茨城県結城市)の大名だった結城家17代当主・晴朝が、鍛冶師・五条義助に作らせたものです。
最大の特長は、巨大な槍身。全長約3.8mと、槍のなかでも桁外れのサイズでした。
御手杵は、子孫の手により長らく東京で保管されていましたが、東京大空襲の際、所蔵庫が焼夷弾の直撃を受け、多くの宝物と共に焼失してしまいました。保管していた当主は「戦火を避けるために地面に埋めるように」と留守の間、家臣たちへ申しつけていたのですが「お家の宝にそんな扱いはできない!」と家臣たちは頑なに聞かず、皮肉な結果を招いてしまったのでした。
御手杵の展示されている結城市へ
結城市は、茨城県の西部に位置する市。
茨城県はもとより関東でも有数の古い城下町で、市内には神社と蔵造りの町並みが多く残っています。
東京から結城市へのアクセス
東京から結城市へのアクセスは、車の場合、国道4号線経由で約1時間40分、東北自動車道経由で約1時間50分。電車の場合、東京駅から東北新幹線を利用すると60分でアクセスできます。
※訪れる際はぜひ各駅の時刻表をチェックしてみてください。JR結城駅時刻表、JR小田林駅時刻表、JR東結城駅時刻表
いざ、御手杵を拝見!
結城駅から徒歩15分、御手杵の展示されている結城蔵美術館にやってきました。
古くからある「本蔵」と「袖蔵」の2つの建物を利用した施設。本蔵は地元で活躍するアーティストをはじめとした新しいアートの展示ギャラリー、一方、袖蔵は結城市の歴史と文化が分かる貴重な資料の展示スペース。今回のお目当「御手杵」は、袖蔵の2階に展示されています。
さて、こちらが待望の御手杵。写真に納まらないほどの巨大で堂々たる姿に、圧倒されます…!
展示されている御手杵は、2002年に有志によって復元されたレプリカ。結城氏初代・朝光の没後750年祭にあわせて、2003年に結城市に贈呈されました。
柄は艶のある黒色で、大きな鍔(つば)が付いています。いくつかあるレプリカの中で、鍔が付いているものはこちらの展示品のみなんだそう。
ちなみに、結城市では美術館の他に休憩所「ふじの蔵」でもレプリカを見ることができます。こちらは半屋外に展示してあるので、気軽に記念撮影もできそうです。
御手杵のある結城蔵美術館 基本情報
住所: 〒307-0001 茨城県結城市結城1330
電話番号: 0296-54-5123
営業時間: 9:30~18:00(4月~10月) 、9:00~17:00(11月~3月)
定休日: 木曜
入館料: 無料
アクセス:
・JR「結城駅」より徒歩15分
・佐野・藤岡ICから車で40分
御手杵のある結城市の見所は?
見所その1「見世蔵(みせぐら)」
見世蔵とは、外壁を土塗り漆喰仕上げで作られた木造防火建築の蔵のことで、本来の保管庫の役割に加えて店舗や住宅として使われている建物を指します。こういった見世蔵は、結城が商業都市として大きく発展した明治時代初期から大正時代にかけて建造されたもので、今でも約30棟が現存。これは全国有数の規模になります。
見所その2「結城紬(ゆうきつむぎ)」
結城紬は、日本最古の手づくりのよさを持つ絹織物。かつて朝廷に上納された「あしぎぬ」は、手でつむぎだした太糸の絹織物のこと。さまざまな紬織物の原形とされています。昭和31年には「糸つむぎ・絣くくり・地機(じばた)織り」の3工程が国の重要無形文化財として指定、平成22年にはユネスコ無形文化遺産にも登録されました。
※以前、雑誌「和樂」でも結城紬を紹介いたしました。
結城市の観光スポット
産地問屋・奥順が営む「つむぎの館」
結城紬の歴史と伝統を学べる場所。明治40年創業の産地問屋「奥順」が営むつむぎの館は、結城紬の歴史や制作工程を学べる資料館や、常時200点以上の結城紬の反物を鑑賞できる展示場、結城紬の小物をお土産に購入できるショップがあります。また体験工房では、本格的な機織り体験を楽しむこともできます。
※機織り体験は要予約のため、詳しくはWebサイトをチェックしてみてください。
【つむぎの館 基本情報】
公式サイト: http://www.yukitumugi.co.jp/
住所: 〒307-0001 茨城県結城市大字結城12-2
電話番号: 0296-33-5633
営業時間: 9:30〜17:00 ※入館は16:30まで
定休日: 火曜
和菓子店「真盛堂」
結城蔵美術館から歩いて5分のところにある和菓子店・真盛堂。
こちらでは、結城市の名物・ゆでまんじゅうを購入できます。
ゆでまんじゅうは、江戸時代末期にこの辺りで疫病が流行した際、疫病平癒を願ってお供えされたもの。今も夏のお祭の日には各家庭でゆで饅頭を作り、無病息災や五穀豊穣を願う習わしがあるんだそう。モチモチとした食感で、小さな見た目に反してボリューム感たっぷり。ちなみにお店から歩いて1分のところにあるカフェ「甘味茶蔵 真盛堂」で、ゆっくり休憩することもできます。
カフェでは、ゲーム「刀剣乱舞」のキャラクター・御手杵をイメージしたパフェも提供中!
【真盛堂 基本情報】
公式サイト: http://shinseidou.info/
住所: 〒307-0001 茨城県結城市結城1362
電話番号: 0296-33-3645
営業時間: 8:00〜18:30
定休日: 木曜日(祝日は営業)
パンの販売「ぱんや ムムス(mums)」
2017年にオープンした、ぱんやムムス。国の登録有形文化財である「旧黒川米穀店邸宅」をリノベーションした建物は、堂々としたたたずまい。店内は天井も高く、広々とした空間になっています。人気商品は、あんぱん。売り切れてしまうこともあるので、お買い求めはお早めに。
【ぱんやムムス 基本情報】
公式サイト: http://panya-mums.com/
住所: 〒307-0001 茨城県結城市結城1319
電話番号: 0296-48-6065
営業時間: 11:00-18:00
定休日: 日曜・月曜・木曜
日本酒蔵「結城酒造」
江戸時代に創業した歴史ある酒蔵・結城酒造。鬼怒川系伏流水を生かした柔らかな口当たりと、ふくよかな味わいが特徴です。ラベルは、結城市の書家、・三木翠耿氏によるデザイン。結城紬の「糸」の輪の中に、おめでたい「吉」が入った、おしゃれなラベルで、お土産やギフトにもぴったりです。※見学は要予約。
【結城酒造 基本情報】
公式サイト: http://www.yuki-sake.com/
住所: 〒307-0001 茨城県結城市結城1589
電話番号: 0296-33-3344
営業時間: 9:00~17:00
味噌の製造販売「秋葉糀味噌醸造」
創業天保3(1832)年の秋葉糀味噌醸造。のれんのロゴがかわいい「つむぎみそ」をはじめ、結城市のお土産にぴったりな味噌を製造・販売しています。現在は味噌の販売に利用されている、大正13(1924)年に建てられた見世蔵も見所です。
【秋葉糀味噌醸造 基本情報】
公式サイト: http://www.tsumugi-miso.co.jp/
住所: 〒307-0000 茨城県結城市結城174
電話番号: 0296-32-3923
営業時間: 9:00〜18:00
定休日: 日曜
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