海に浮かぶ朱色の鳥居が印象的な「厳島神社」。世界遺産に登録されているし、ペットとの参拝は難しいのでは…というイメージがありませんか? 実は、意外にもペットフレンドリーな側面が…! 嬉しい驚きですね。
今回は、私の相棒である愛猫「うちゅうねこ」を連れ、厳島神社を訪れた際の体験談をご紹介。さらに、出会った現地の人々や厳島神社スタッフの、動物や参拝者が連れているペットへの寛大さや優しさはどこから来ているのかについて徹底調査してみました。宮島の文化の1つにもなっている鹿との関係にも焦点を当てながら迫ってみます。
長靴を履いた猫と猫耳を付けた人
ネットが付いた乳母車や袋式のキャリーバッグなど、ペット用品を状況に応じて使い分けたりしっかり抱っこしたり…。観光を愛猫と一緒に楽しめるよう、マナーを守りながら様々な工夫をしていても、日本の観光地の多くは、入場はできても建物内等は一緒に入れないことが多いのも事実です。これは、ペットと共に旅行をする人たちの共通の悩みではないでしょうか。
ペットも家族の一員なのに、動物だからという理由で、「ルールに反するので一緒の入場はできません!」と、マナーをしっかり守っていても断られてしまうことがあります。その度に私が思うこと。いっそのこと、私の愛猫が長靴を履いて猫人になれば、一緒に入場できるかしら?。それでもだめなら、私が猫耳付けて、「猫の大人1名!」ってチケット売り場で入場券を買って、猫として入場してみようかしら。
長靴を履いた猫のお話に出てくる長靴(ブーツ)は、履いていれば、見かけや社会的地位に関わらず対等に見える姿になれるもの。つまり、うちの愛猫がこの長靴さえ履いていれば、人間として扱ってもらえるのではないか。そんなことまで考えてしまいます。
しかし、世界遺産にもなっている宮島の厳島神社は違いました。
宮島へ向かうフェリーは船内もペットに優しい!
世界遺産に登録されている厳島神社に行くには、宮島口からフェリーに乗船して宮島へ上陸。なんと、このフェリーは、ペットと一緒に乗船可能となっていました。
しかも、ペットの乗船料は無料。さらに、乗船中も、リードをつけてしっかり管理していればキャリーケースなどを使用せずに解放していてOK!という寛大さ。この様な環境は、ペットも家族の一員として一緒に旅している人々にとって、非常にありがたいことです。
「猫ちゃんも一緒にどうぞ!」優しい厳島神社のスタッフの声に救われる
宮島に上陸後、島内はリードをつけていれば、お散歩させながら探索することが可能です。我が相棒うちゅうねこは足が汚れるのが嫌なので、お気に入りの通称、カンガルー袋に入って、顔を覗かせていました。もちろん、万が一のことも考えて、リードもつけています。
厳島神社に到着し、社殿へと続く長い回廊の前の入り口付近には、厳島神社のスタッフが立っています。これまでの旅の経験から、世界遺産だし、また、この入り口で愛猫と一緒の入場を断られるのか…と、トホホな気分を抑えながら、我が相棒うちゅうねこと一緒に入り口付近で、せめてもの記念写真を撮影しました。
すると、「あら、可愛い猫ちゃん!猫ちゃんもどうぞ!!一緒に回廊を歩いたりはできないけど、抱っこしたり、キャリーバックなどに入っていてもらえば、一緒に参拝できますよ。」と優しい厳島神社スタッフの救いの一声!
この島の動物にも寛大な優しさは、宮島文化の鹿とも関係あるの?
愛用のカンガルー袋に入ったまま、我が相棒も厳島神社を一緒に参拝! 御朱印も快く授与していただき、授与所では我が愛猫にも「よくいらっしゃいましたネ」と優しく話しかけていただきました。
厳島神社では、これまでの旅で訪れた神社仏閣の中では経験したことが無いほど、一緒に旅をしている我が愛猫に対しても優しくフレンドリーに接してもらえました。
また、この宮島で働くお店の方や地元の人々も同様で、皆、まるで人と接するように、我が愛猫とコミュニケーションをとってくださいました。
この島の人々の動物や参拝者が連れたペットにも寛大な優しさは、どこから来るんだろうという疑問が。この島の文化の1つにもなっている鹿とも関係があるのでしょうか。
そもそも、宮島にいる鹿はどこからやって来たの?
宮島と言えば、鹿がたくさん住んでいることでも有名。この鹿は、かなり昔からこの地に住みついていたと言われています。
群れが大きくなりすぎて住みついている土地を狭く感じると、より良い環境を求めて他のエリアに移動するという習性がある鹿。その際には、泳いで新しい地へ移動することもあり、宮島に住んでいる鹿も、その昔には海を渡ってやって来たと伝えられています。
更に遡ってみると、地球の地殻変動の際に、宮島の周囲の海水の高さが上昇し隔離状態となってしまった鹿が、そのまま宮島に住みついたのではないかという説もあります。どちらにせよ、宮島に観光業が栄える前、人間よりも先に鹿が住みついていたというのは事実のようです。
島全部がご神体の宮島
宮島は、厳島という呼び名で呼ばれることも多いですが、この厳島という言葉には、「心身の穢れ(けがれ)を清めて取り除き、神様に仕える島」という意味があります。この名前からも想像できるように、厳島は、厳島神社が建てられる前から島全体がご神体となっている信仰の対象にもなっていた神聖な島です。
神鹿ではなくても神鹿のように扱う日本の文化と歴史
厳島神社には、主祭神として宗像三女神が祀られています。宮島の鹿たちは、神社で飼われている神鹿(しんろく)か? と思われがちですが、この3柱の神様たちには使いの動物が一切いないので、神社とはまったく関係のない野生の鹿とのこと。
鹿はもともと山に生息している動物ですが、古来の日本人にとって山は神聖な場所であったので、そこに住む動物も神様の使いのような存在とされてきました。
そして、宮島の鹿たちには、人間よりも先に「神聖な島」に住みついていた動物としての歴史もあります。
こうした背景もあり、宮島の人々にとって鹿は、神鹿のような存在。しかし、宮島(厳島)の鹿が大切に扱われてきたのには、こうした理由だけに起因するものではないようです。
血や死も穢れとなる厳島の独自文化
野生環境とは異なる宮島には、鹿の天敵もいません。人間が危害を加えることもありませんし、古くから観光地にもなっていた宮島では、鹿が食いっぱぐれて餓死することも滅多にありません。
その結果、長い年月の間に、鹿が増えすぎてしまった時もありましたが、日本人は人為的に厳島の鹿を殺傷したり、減らしたりすることもしませんでした。
その理由のひとつに、「血や死によって島が穢れることはご法度」という、宮島の独自文化がありました。今でも、宮島にはお墓がひとつもないそうです。
絶滅危惧種生物もいて、生態系の多様性にも富んでいる宮島
宮島は、調べれば調べる程、特異な独自文化や風習に溢れていました。この島の鹿の歴史を知り、島の人々の鹿との接し方を見て、人間と同じ命ある生き物に対しての寛大な優しさや愛に通じるものを感じました。
たとえ入り口は、宗教的なことや土着文化等によって行われてきた慣わしや文化であったとしても、この島の鹿をはじめとした動物に対する愛は、宗教的なことなども超えたところにも存在している様に思いました。
こんなところも、ペットも家族の一員として連れてきている観光客に、わずかな条件付きで厳島神社の社殿内でのペットとの参拝を許してくれている寛大さや優しさにもつながっているのではないでしょうか。
それを感じた時、同時にこんなことを思い出しました。まだ3歳か4歳ほどの小さな時に見た私の好きな画家の1人のマルク・シャガールの色々な作品。人も動物も植物も目に見えるものも見えないものも登場し、それら全てが皆、宙を舞っており、ある意味、目線の高さが同じ空間に存在しています。言い換えれば、人間の一方的な上から目線での世界ではない本当の意味での多様性と愛に満ち溢れた世界。
多様性に溢れる宮島には、この島のみに生息するミヤジマトンボなどの絶滅危惧種生物もおり、この島の独自の生態系を見ても非常に多様性に富んでいます。このように多様性に富んだ生態をはぐくめる島の環境も広い意味では、万物に対する島自体の寛大さの現れの1つを垣間見れている様に思います。
我が相棒うちゅうねこもステキな時間をいっぱい満喫
現在は、厳島神社の関連施設の有料エリアに限り、ペットとの入場は不可能となっているようですが、マナーが良いペット連れの参拝者が増加すれば、今後、またこうしたルールも変化していくかもしれません。
私は、世界遺産にもなっている厳島神社の社殿の中で、我が相棒うちゅうねこも一緒に参拝できただけで満足。ベンチが沢山あり景色も最高の宮島内で、フレンドリーな島の人々の会話も交えながら、私も相棒もステキな時間をいっぱい満喫。
多様性に溢れる宮島にある世界遺産の厳島神社は、動物や参拝者と一緒のペットにも優しい神社でした。
厳島神社 基本情報
住所: 739-0588 広島県廿日市市宮島町1-1
拝観時間: 全日 6:00~18:30(ただし、拝観終了時間は時期によって異なる)
定休日: なし
公式webサイト:厳島神社