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2019.10.08

実は占いの聖地? 日本一古い学校「足利学校」見どころ・歴史を紹介!

この記事を書いた人

日本で最も古い学校とされる、栃木県の足利(あしかが)学校。元号の由来となった書物を多く所蔵することから、新元号発表時には各種メディアにたびたび登場していました。そんな足利学校、年末に向かって気になってくる「来年の運勢占い」の聖地でもあるってご存じでしたか?

足利学校はどこにある? どんな場所?

足利学校は、栃木県足利市昌平町にあります。この「昌平」という地名にピンときた方もいるのでは? そう、中国の聖人・孔子の故郷に由来する名前です。東京都文京区にも、孔子を祀る昌平坂学問所(湯島聖堂)があります。

足利学校では中国から伝えられた儒学を教えていました。足利学校は大正10年(1921)に、孔子廟(こうしびょう)、学校門などの建物を含め国指定史跡となり、平成27年(2015)には日本遺産に認定されました。建物や美しい庭を見て歩くだけでも楽しいですが、興味を引くポイントを見つけました。なんとここは、占いを教えたり、大名や庶民のために占いをする場所でもあったらしい!

そもそも足利学校ってなんの学校?

足利学校の学問は、中国から伝えられた儒学が中心。学徒は日本全国からやってきて、学校近くの民家やお寺などに寄宿し、学校の敷地内で作物や薬草の栽培も行いました。僧侶が多かったそうですが、基本的には規制はなく、多くの人に開かれていました。なんと、学費は無料。

天文18年(1549)には、フランシスコ・ザビエルなどのイエズス会士が、「日本国中最も大にして最も有名な坂東の大学」と海外に紹介し、「学徒三千」といわれるほど繁栄しましたが、明治5年(1872)に役目を終えました。現在は敷地や建物を公開し、論語の素読や孔子を祀る行事などを続け、足利学校の精神を今に伝えています。

足利学校での勉強は、「三註・四書・六経・列子・荘子・史記・文選(さんちゅう・ししょ・りくけい・れっし・そうし・しき・もんぜん)」。呪文のようですが、すべて儒学関連の重要な書物・学問です。戦国時代になると、戦争に勝つために欠かせない占いや兵学、医学、天文学なども盛んに学ばれます。

特に占いは、出陣に最適な日取りを割り出したり、方角の吉凶を判断したりするのに役立つ学問。前述の「六経」に含まれる、易経(占いや哲学の書)は最重要視され、占いは戦争に役立つ道具として別格の扱いとされました。

いまや社会科の教科書にも出てくる足利学校ですが、まだわからないことは少なくないそうです。そのはじまりについても謎は多く、「奈良時代の国学にルーツがある」、「平安時代、漢学者で歌人の小野篁(おののたかむら)が創建した」、「鎌倉時代、足利義兼(よしかね)が建てた」など、さまざまな説があります。歴史がはっきりしてくるのは、室町時代に上杉憲実(のりざね)が学校を整備してからのことです。

占いを教え、占いもしていた!?

儒学の中で、易経は最も尊いものとされています。これは、「占いをする者は世の中のあらゆる学問に通じなければ、吉凶や気運を判断できない」という考えに基づきます。「孔子も綴じ紐が3回ちぎれるほど、易を読み込んだ」という伝説があります。

足利学校では、易に関する実践的な教育を行い、卒業生は占術のできる軍師として戦国武将に仕える例も少なくなかったそうです。それから、教育以外での足利学校の重要な仕事が、「年筮(ねんぜい)」。毎年冬至の日に、翌年の吉凶や運勢を判断すべく易占いを行います。足利学校は江戸幕府のために年筮を行い、献上するのが習わしでした。大名や庶民からの占い相談に応じることもあったそうです。ちなみに、私も易占をしており、毎年冬至の日(か、その前後)には年筮を立てます。

残念ながら現在は、足利学校の職員で易占を行う人はいないそうですが、易を感じられるスポットはあちこちにあります。まずは、易をモチーフにしたマンホール。「学校門」の手前あたりに設置されています。

このマンホールの外周に、易占いにちなむ開運メッセージを見つけました。「地天泰(ちてんたい)」と「風山漸(ふうざんぜん)」です。

・地天泰…64ある易の中で最もめでたいもの。理想的な状態が続くよう、気を緩めないように。
・風山漸…手順を踏んで物事を進めるとき。「結婚」の意味があるので、婚活や縁談に大吉。

意味とメッセージは上記の通り。ぜひ、参考にしてください。このラッキーなマンホールをデザインした「マンホールカード」があります。

足利学校から徒歩数分の「足利まちなか遊学館」(足利市通1-2673-1)で配布されていますので、お土産にいかがでしょうか(※数に限りがあります)。

また、「宥座之器(ゆうざのき)」という展示物も見もの。

孔子の教え「中庸(ちゅうよう)=何事もほどほどが良い」の通りに、 「器が空だと傾くが、水をいっぱいに入れるとひっくり返る。ほどよい量だと安定する」という仕掛けになっています。

足利学校の見どころと行事

これまで紹介した以外にも、見どころはたくさんあり、さまざまな行事も行われています。

釈奠(せきてん)

毎年11月23日に実施。孔子の教えを説く学校ということで、孔子とその弟子の顔子(がんし)、曽子(そうし)、子思(ししし)、孟子(もうし)にお供えものを差し上げます。この儀式「釈奠」は、足利市重要文化財(民俗文化財)指定。事前申込により、儀式を観覧することができます。

釈奠に使う道具(祭器)は、庫裏展示室で見られます。日本の寺社のものと趣向が異なる装飾が興味深い……。

論語の素読(そどく)

原則として、4月中旬~7月・9月~11月下旬の毎週日曜日に開催。13時30分~13時50分、14時10分~14時30分の1日2回。素読とは、声に出して読むこと。漢文の授業で「子(し)、曰(いわ)く……」のような音読をした記憶があるかもしれません。大人になってやるのも、また違う良さがあるものです。足利学校の参観者は無料で体験できます。

曝書(ばくしょ)

秋になると、気候の良い日に古書を広げて虫干しを行います。綴じ紐の状態や、カビや傷みなどはないかなどのチェックをし、清掃をします。江戸時代にも行われており、秋の風物詩となっています。2019年度は9月25日・26日、10月1・2・3・5・11・15・17・30、11月6・8・12・13・14・16・25・26・27・28・29日を予定(午前10時~14時30分)。※天候や湿度により変更あり

取材時、思いがけず曝書の見学ができました。

易に関する貴重な本に、思わず息を呑みます。間近に見られて感動。

足利学校 アクセス

住所 栃木県足利市昌平町2338番地
受付時間 4~9月:9時~16時30分、10~3月:9時~16時
定休日 第3月曜日、年末年始、その他臨時休業あり
足利学校サイト

書いた人

出版社勤務後、編プロ「ミトシロ書房」創業。著書に『入りにくいけど素敵な店』『似ている動物「見分け方」事典』など。民謡、盆踊り、俗信、食文化など、人の営みや祈りを感じさせるものが好き。四柱推命・易占を行い、わりと当たる。