秘湯や古湯好きの私がずっと入ってみたかった温泉の1つ「つぼ湯」。
熊野本宮大社から車で10分ほどの場所に位置している和歌山県田辺市本宮町の湯の峰温泉(ゆのみねおんせん)にあります。
「蘇り(よみがえり)の湯」としての伝説もあり、自然に岩の中にあいた穴から湧き上がる源泉かけ流しの風変わりな岩風呂温泉。
念願かなって入湯! 蘇りの湯とも言われるその泉質も非常に素晴らしく、心身共に軽くなったような確かな実感にも感動。
おまけに、肌もスベスベになり、その後、数日ほど化粧水いらずだったので、肌もまさに「よみがえり~!」とIKKOさん風に絶好調の声を上げて大喜びでした。
今回は、歴史も魅力も風変りさも満載の「湯の峰温泉 つぼ湯」へご案内いたします。
熊野詣にも欠かせない歴史溢れる古湯「つぼ湯」
湯の峰温泉は、4世紀ごろに熊野で国を治めていた大阿刀足尼(おおあとのすくね)により発見された温泉でしたが、この温泉が有名になったのはその後のことで、歴代の上皇による熊野への御幸によって有名になりました。
つぼ湯は、温泉が混じった小川の中にある大きな岩の中にあり、この岩に自然にあいた小ぶりの穴から温泉が湧き出て「つぼ湯」となっています。当時は、野湯の露天風呂でしたが、現在は、小屋で覆われていますので、入浴中に丸見えになる心配もなく安心です。
そして、目と鼻の先には、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)へ通じている熊野古道の中辺路(なかへち)もあります。昔は熊野古道を歩いて熊野詣が行われていましたので、こうした立地からも「つぼ湯」は、疲れを癒す休憩の場としてや、熊野詣を行う人々が参詣前に身を清める湯垢離(ゆごり)の場として、平安時代から利用されてきた長い歴史もあります。
早わかり!「つぼ湯」の5つの魅力!!
その1:1800年以上もの歴史がある日本最古の共同浴場
「つぼ湯」がある湯の峰温泉は、日本三古湯として知られている兵庫県「有馬温泉」、愛媛県「道後温泉」、和歌山県「白浜温泉」、もしくは、福島県「いわき湯本温泉」よりも古い、開湯1800年以上もの歴史を持っています。そして、つぼ湯は、なんと、日本で1番古い共同浴場でもあるのです。
その2: 世界で唯一! 入浴可能な世界遺産温泉!!
熊野信仰に深い関わり合いがある「つぼ湯」は、2004年7月に和歌山県、奈良県、三重県にまたがった「紀伊山地の霊場と参詣道」を構成する資産の1つとして、世界遺産に登録されました。
温泉で世界遺産に登録されているのは世界でも非常に珍しいことなのですが、世界遺産に登録されていながら、現在も公衆浴場として誰もが入浴することができるのは、世界でもココだけ!という貴重な温泉なのです。
その3:あら、不思議!七変化の湯!!
つぼ湯は、1日に何度も湯の色が変化し、日によっては7回も変化するとまで言われているので、「七変化の湯」としてもその名が知られている温泉です。
私が入ったのは早朝6時台で、その日の1番湯。色は、写真では分かりづらいかもしれませんが、青系と紫系の間。入浴中、どちらの色にも見えました。お昼ごろには、大抵、湯の花での濁りが増して白濁が強くなってくるとのこと。
つぼ湯の色が七変化する理由
湯の色が七変化するのは、つぼ湯のすぐ底から直に源泉が湧き出ており、地中から地表へ湧き出たばかりのフレッシュな源泉!だからこそ。その瞬間に化学変化を起こし、色の変化を楽しめるようです。底石の砂利の隙間からも次々と湧き上がってくる源泉を体感できます。
行く度に異なった色を楽しめるかもしれなかったり、入浴中に色が変わるのを楽しめるかもしれないのも、この温泉のお楽しみポイントの1つ。
その4:みなぎる自然の神秘とパワーで泉質も素晴らしい「よみがえりの湯」
大きな岩にぽっかり穴が空いたような岩風呂の「つぼ湯」は、大人が2人から3人入ればいっぱいになってしまう程のサイズですが、この穴は自然にできた穴とのこと。さらに、その穴の底からは温泉が常にこんこんと湧き続けていますので、まさに自然の神秘とパワーもひしひしと感じられます。
自然にあいた岩穴は人が入浴するには少し深かったので、底に石や砂利が敷かれて入浴しやすい深さになっています。しかし、前述しましたように、砂利の隙間からも沢山の温泉が絶え間なく湧き上がっていますので、常に良質の湯が源泉かけ流し状態となっています。
そんな一種のパワースポット的な神秘を感じる「つぼ湯」には、やはり伝説も残っていました! つぼ湯につかりながら読めるように壁にかかっていたのは「小栗判官物語」の伝承の説明の掲示物。
つぼ湯の伝説「小栗判官物語」
この伝承は、歌舞伎や浄瑠璃で行われる演目としても有名な物語で、つぼ湯は、まさにその物語の舞台となっています。この伝説の時代設定は室町時代で、主人公の小栗判官は伝説上の人物となっています。
大まかなこの話の内容をまとめますと、小栗判官は美しい照手姫と恋に落ち、彼女の父親の許しを得ないまま結婚。怒り狂ったその父親により毒殺されますが、あの世で閻魔大王の情けをかけられ再び現世へ。
しかし、その姿は現代でいうゾンビのような存在の餓鬼阿弥(がきあみ)。そんな姿でありながらも高僧に助けられ、台車に乗せられ熊野にある湯の峰へ向かいます。餓鬼阿弥の首からぶら下げられた札には、「この台車を引けば供養ができる」と書かれていました。
故郷から追放され、愛する夫を失った悲しみに暮れていた照手姫は、この餓鬼阿弥を目にし、小栗判官の供養になればとこの台車を引いて湯の峰へ。長い旅路の果てに無事に到着後、つぼ湯にこの餓鬼阿弥を入湯させると、小栗判官の元の姿に戻ることができたという伝承です。
この伝説により、つぼ湯は、「よみがえりの湯」としても有名になりました。
まさに、パワースポット的な神秘にも満ち溢れている「つぼ湯」。
つぼ湯からは少し距離がありますが、小栗判官の史跡もあります。
その5:つぼ湯に入るとオマケの温泉も付いてくる!
つぼ湯の入湯チケットを購入すると、湯の峰温泉公衆浴場の「一般湯」もしくは、「くすり湯」に1回入湯することができます。
おすすめは、断然、「くすり湯」!
一般湯
温度が高いことで有名な湯の峰温泉の湯が、加水されて適温に調整されている源泉かけ流しの温泉です。
くすり湯
「一般湯」と同じ源泉ですが、熱交換器使用してお湯の温度を適温にしているので、加水がされていません。このため、濃度が濃いので温泉の効能をしっかり堪能できることから「くすり湯」と呼ばれています。「一般湯」よりは、お湯の温度が高めの源泉かけ流し温泉です。
メタケイ酸で美肌もよみがえり~!
泉質は、どちらも、「つぼ湯」と同様の含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉で、弱アルカリ性。しかし、「くすり湯」は、加水されていないこともあり、化粧水などにも含まれている美肌成分のメタケイ酸がかなり豊富に含まれているので、非常に高い美肌効果!も期待できます。特に女性におすすめ!!
私が「くすり湯」を訪れた時は、朝1番のフレッシュな入れたてのお湯でしたので、湯の色は透明(写真上)。お昼頃になると、つぼ湯と同様に湯の花で溢れ、湯の色が白濁して白くなるとのこと。
早起きは三文の徳!朝一の「つぼ湯」は最高だった!!
つぼ湯が世界遺産に登録された後、口コミで人気が年々上昇。事前予約もできませんので、当日、窓口近くの券売機で入湯チケットを買って、窓口で受付をし、受付け順に番号札をもらうしかありません。
時期によっては平日でも混んでいるという情報も小耳にはさんでいたので、平日の朝1番の6時頃に、待つのを覚悟で受付へ。
「今日は混んでますか?」と聞くと、「今日1番のお客様ですよ。」と笑顔で優しく答えてくれた受付のおじ様。
すぐに入湯チケットを購入。ありがたいことに、この日1番湯となる「つぼ湯」や「くすり湯」を楽しませていただくことができ、温泉自体の素晴らしい「気」もたっぷり授けていただけたと思います。
その後、湯筒エリアも楽しみ、それでもたっぷり時間があったので、次の日に予定していた熊野三山巡りも行い、実り多い有意義な1日となりました。
日本国内のみならず、海外からも「つぼ湯」を目当てに観光客が訪れているので、週末や祝日などは、やはり、かなりの待ち時間になるとのこと。混雑時は、1組の入浴時間が20分になってしまうこともあるそうです。
ちょっと風変りな「つぼ湯」のシステムと入り方
色々な面で普通の温泉とは異なっている「つぼ湯」。つぼ湯は男女混浴可能な貸切湯のシステムで運営されており、受付け順に1組最大30分まで貸し切りで入浴できます。ただし、料金は、1組あたりではなく、1人あたりの料金となっています。
それでは、「つぼ湯」の入り方をご案内します。
1. まず、湯の峰温泉公衆浴場へ向かいます。この建物の受付窓口の前には、つぼ湯の入湯チケットを購入できる券売機があります。チケットを購入して窓口で受付を済ますと、つぼ湯の為の番号札をもらえます。
待ち時間が長い時には、ベンチがある屋根付きの待合スペース(写真上)で待つこともできますし、目の前の小川の反対岸にある湯筒エリア(写真下)で温泉玉子や温泉蒸し野菜を作り、食べながら待つこともできます。
湯筒エリアは地面も温泉熱でポカポカなので、裸足になって地面に座っているだけでも冷え性の改善等にも効果が期待できます。ただし、湯筒自体は90度程の高温ですので、この点には十分ご注意を。
近くには、この他にも和喫茶、お食事処、お寺などもありましたので、軽いお散歩をしながら立ち寄ってみるのもおすすめです。
2. 順番が来ましたら、湯の峰温泉公衆浴場から歩いて30秒くらいのところにある「つぼ湯」がある小屋へ向かいます。小屋の入り口のドアには、「中で入浴中」という意味を示す為に、必ず番号札をかけてください。また、ドアにかかっている錠前も忘れずに取りましょう。中に入った際にロックするために使用します。
3. 中に入ったら、先ほど手にした錠前でドアを必ずロックしましょう。これは、意外と忘れる方が多いらしく、受付の方も念を押して「中に入ったら、必ずドアをロックしてください」と言っていました。ロックし忘れると、次に待っている方が、ドアが開くので間違って入ってきてしまうこともあるそうです。
4. 「つぼ湯」の小屋の中は、脱衣できる小スペース、掛け湯エリア、つぼ湯のみのシンプルな作りです。貴金属類は変色しますので、外すか、最初から身に着けて行かないことをおすすめします。こじんまりとした脱衣スペースには、脱衣かごも置かれていました。
つぼ湯の温度を触ってみて、熱いようでしたら加水して、しっかりかき混ぜましょう。そして、掛け湯をしてから入ります。つぼ湯は、湯垢離(ゆごり)の場でもありますので、通常の温泉とは異なります。シャンプーやボディソープなどは使用できません。
5. 入浴を終えたら、元あった場所に錠前を戻し、ドアにかけてあった番号札を外し、受付へ返します。次の方が待っていますので、番号札は、すぐに返しましょう。
湯の峰温泉 つぼ湯 基本情報
入浴料金:大人780円、12歳未満の子供470円
営業時間:6:00~22:00
定休日:なし
住所:和歌山県田辺市本宮町湯峯110
電話:0735-42-0074(湯の峰温泉公衆浴場)
駐車場:民宿瀧よしの横側にあります。(最大収容台数46台)
WEB:湯の峰温泉公衆浴場 つぼ湯