佐賀県を旅をしていると、非常に良心的で太っ腹な価格設定のスポットが多いのも嬉しい驚き。中には「本当に無料でいいんですか!」という様なスポットに遭遇することも。そんな中、「え!入園料、無料なんですか!!」と再び嬉しい驚きに遭遇したのがココ「有田ポーセリンパーク」!
我が相棒の愛猫「うちゅうねこ」も記念撮影!
写真に全てを収めきれない程のあまりのスケールの大きさと素晴らしさ。
「うちゅうねこちゃんとドイツ行ってきたの?」と、この記念写真(冒頭の写真)を見た友人に言われてしまいました。
ドイツの「ツヴィンガー宮殿」が、なぜ、こんな場所に?
ここは、佐賀県有田町の山奥。陶芸体験ができると聞いていたので、私はこの日、有田で窯元巡りをした後、有田ポーセリンパークにも立ち寄ったのでした。
もちろん、最初の写真で登場している我が相棒も一緒。
駐車場から300メートルくらい離れたところに、上の写真にある半端なく本気で再現された巨大なツヴィンガー宮殿と立派なバロック庭園が!
こんなにも凄い!とは思っていなかったので、かなり遅めの時間に到着したことを後悔…。
ところで、有田町は、本家のツヴィンガー宮殿があるドイツのドレスデンから北西30kmほどの所にあるマイセンと陶磁器によって長い歴史でつながっていることから、姉妹都市となっています。そのゆかりで、有田町のこの場所に再現されたツヴィンガー宮殿がシンボルとなっている有田ポーセリンパークが平成5(1993)年に誕生しました。
ツヴィンガー宮殿とは?
ツヴィンガー宮殿は、ドイツのザクセン州の州都のドレスデンに位置する、バロック建築の華とまで評された豪華で巨大な建築物。1709年より23年もの歳月をかけてアウグスト王によって建てられました。
この当時のヨーロッパには、陶磁器を製作できる技術が全くありませんでした。それ故に、東洋から輸入された陶磁器は、宝石などと同様の価値があるものとして非常に高く評価されていたので、王侯貴族のコレクターも大勢いました。
その中でもアウグスト王は、当時、ヨーロッパ全土で最大数の東洋陶磁器を持つコレクターだったことでも有名。ツヴィンガー宮殿内には、その膨大な数のコレクションが収蔵されていました。
ヨーロッパの陶磁器技術に大きな影響を与えた有田の陶磁器
佐賀県有田町と言えば、世界を代表する誰もが知る陶磁器の街。
この町の陶磁器は17世紀ころから輸出されており、その素晴らしいスタイルや技術は、ヨーロッパの陶磁器技術に大きな影響を与えました。
その証拠に、東洋陶磁器好きのアウグスト王に命じられて製作されたこの当時のヨーロッパ式の陶磁器は、有田焼きの古伊万里や柿右衛門のデザインのスタイルに類似したものが非常にたくさん見つかっています。
日本美術において西洋で最初に認められたのは陶磁器
日本の陶磁器は、日本美術の歴史の中で、浮世絵よりも早く西洋で最初に認められた日本美術です。
磁器の技術はもともとは中国が発祥でしたので、初めは、中国の陶磁器がヨーロッパへ輸出されていました。しかし、中国の明朝が滅んでしまったのと同時に、陶磁器のヨーロッパへの輸出も無くなってしまいました。
そこで、その代わりに17世紀頃から輸出したのが日本だったのです。
この当時、日本では、古伊万里、柿右衛門、色鍋島等のスタイルが誕生していました。中でも、白磁の上に鮮やかな赤の色を使った斬新なデザインで高い人気と評価を既に国内で得ていた柿右衛門様式は、ヨーロッパの王侯貴族の間でも大人気でした。
ちなみに、西洋で日本の浮世絵に注目が集まったきっかけを作ったのは、なんと、西洋諸国への陶磁器の輸出の際に梱包材として詰め物で使われていた北斎漫画だったのです。そして、この価値をいち早く発見したのは、フランスの版画家のフェリックス・ブラックモン氏でした。その後、フランスで浮世絵が注目され始めたのですが、この事実を見ても浮世絵が日本美術として西洋で認められたのは、ずっと後のことです。
白磁の街マイセン
有田から輸出された様々な陶磁器は、ヨーロッパの陶磁器技術に大きな影響を与え、今日においても伝統としてヨーロッパの陶磁器技術に継承されています。
特にそれを顕著に見て取れるのが、ツヴィンガー宮殿があるドレスデンから北西方向に30kmほどの場所にあるマイセン。現在、世界でも有数の白磁の街として有名です。
マイセンは、東洋で生まれた白磁をヨーロッパで作ることを目的として白磁産業をスタートした街でした。当時、日本から輸出された肥前国有田や伊万里の様々な陶磁器のデザインや技術に大きな影響を受け、この街の陶磁器の技術は大きく発展していきました。
有田町の姉妹都市マイセン
マイセンと有田町は、陶磁器の歴史で古くからつながっていましたが、実際に姉妹都市になったのは昭和54(1979)年。昭和50(1975)年にドレスデン博物館に秘蔵されていた有田の陶磁器が里帰したのを機に、マイセンと有田町は姉妹都市となりました。現在、ドイツのツヴィンガー宮殿は、2万点以上ものアウグスト王の当時の東洋陶磁器コレクションも鑑賞できる美術館などになっています。
陶磁器でつながった、有田とマイセン。こうした由縁から、ツヴィンガー宮殿が忠実に再現されシンボルとなっている、「有田ポーセリンパーク」が誕生したというわけです。
凄いのは外観だけではありません。宮殿の中にも入れます!
有田ポーセリンパークのシンボルにもなっている忠実に再現されたツヴィンガー宮殿。外観も度肝を抜くほど立派ですが、この宮殿の右ウィング・エリアの中は、有田焼の歴史的にも貴重な陶磁器が色々と収蔵されている展示館となっています。この展示館は入館料がかかり、大人600円、中高生300円、小学生以下の料金は無料となっています。有田エリアの陶磁器が好きな方は、目からうろこの色々なアイテムに遭遇できることでしょう。
館内では、初期の有田焼にはじまり、有田焼の最盛期となる江戸時代や明治時代の古伊万里、柿右衛門、鍋島藩窯のスタイルの貴重な作品の数々を楽しむことができます。
中でも、明治3(1870)年のウィーン万博で展示をして世界中から大絶賛された1メートル80センチ以上もある巨大な花瓶は、この展示館の目玉となっており見逃せません。
美しい巨大バロック庭園
上の写真の様にツヴィンガー宮殿のセンターにかかっている橋を渡り、建物にあるアーチをくぐると、目の前に広がる広大な美しいバロック庭園(写真下)の美しさとスケールの大きさに目を奪われます。
庭園をお散歩するだけでもかなりの距離がありますが、所々にベンチや椅子等の休憩エリアもあるので、のんびりと美しい庭園を探索できます。
また、この庭園は、映画のロケ地などでも使用されたこともあり、美しいフォトジェニックスポットも満載。
一緒にお散歩を楽しんだ相棒のうちゅうねこも私もステキな時間を満喫できました。この宮殿の周囲は美しいガーデンが続いていて、ペアで寄り添う仲良しのカモたちも沢山おり、皆、散歩中の足を思わず止めて微笑みながら見入っていました。
陶芸・絵付け体験も忘れてはいけない!
有田ポーセリンパーク内の広大な敷地内には、ツヴィンガー宮殿を中心としたドイツエリアから少し外れたところに「有田焼工房」があります。手ひねりやろくろでの陶芸体験やお皿やコップへの絵付け体験も行えます。
そもそも、陶芸体験ができると聞いてここへやって来た私。到着時間が遅くなってしまったことや圧巻のツヴィンガー宮殿に目を奪われたりと、この日の陶芸体験の受付時間は既に終了しており、トホホ…でした。
唯一、この日できると言われたのは、絵付け体験のみ。しかも、「閉館30分前には終了となりますのでご了承ください。」と言われ、実質30分の短い時間制限付きとなってしまいましたが、せっかく来たのでチャレンジ。
あわただしい絵付け体験となってしまい、ほとんど一筆描き状態。一筆描きでも全面、猫!猫!猫!(写真上)です。
あ~、もっとじっくり描き込みたかった…。
くれぐれも時間に余裕をもって訪れることをおすすめします!
天狗谷古窯の再現も圧巻
前述の有田焼工房をさらに奥へ進んでいきますと「登り窯」もあります。全長55メートルほどの長さもあるこの登り窯は、有田焼の生みの親としても知られる李 参平(り さんぺい)氏が有田町で陶器を初めて焼いた「天狗谷古窯」を再現したもの。年に2度、この窯は実際に火入れして焼成に利用されているとのこと。
ドイツエリア以外にも楽しめるスポットが色々!
この他にも、ドイツエリアから少し外れた場所には、有田ポーセリンパークの現在の運営者である伊万里市の酒造メーカーの宗政酒造株式会社による酒造見学を楽しめるスポット、お土産などを買えるショッピング街、レストランなどもあります。また、不定期にイベントも開催されているようです。
開園当時は入園料が非常に高かったらしいのですが、運営者が変わって無料に。さらに、園内のペットの散歩もOK!となったので、家族の一員としてペットも連れて旅されている方でも一緒に楽しめる点も嬉しいポイント。
園内は日本人観光客がほとんどいなかったので、佐賀県有田町にいながら海外旅行気分も満喫。
海外からの団体客がいても結構空いていたので、人混みが苦手な私や愛猫ものんびり園内を楽しめました。
今度こそは、陶芸体験もするぞ!
◆有田ポーセリンパーク 基本情報
住所:佐賀県西松浦郡有田町戸矢乙340-28
電話番号:0955-41-0030
営業時間:9:00~17:00
定休日:なし
WEB:有田ポーセリンパーク