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2020.01.10

日本で唯一!東京「防災専門図書館」とは?資料・展示・アクセス情報などを紹介

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災害の備えはしていますか?
2018年を表す漢字が「災」であったように、2018年は6月18日の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、9月6日の北海道胆振東部地震(ほっかいどういぶりとうぶじしん)など、自然災害が多い年でした。それ以降も、豪雨・台風などの自然災害が多発しています。

自分自身が災害を体験したことによって、「防災について、改めて考えるきっかけになった」という人も少なくないのではないでしょうか。一方で、災害に備えて、実際に何らかの防災対策をとっているという人は約4割というデータもあります。「災害への対策も、防災の知識も必要」だと思っているものの、半数以上の人が「自分は、大丈夫(のはず? )」「対策が必要なことはわかっているけど、何をしたらいいかわからない! 」と、何も対策をしていないのが現状なのです。

そんな、自然災害の多い国・日本の政治の中心地である永田町の近くに、防災の情報拠点があるのです! それは、日本で唯一の防災の専門図書館である「防災専門図書館」。館内には、災害に関する資料だけではなく、防災に関する情報があふれていました。

防災専門図書館とは?

防災専門図書館は、「防災、災害等に関する資料の収集とその活用・発信を通じて、住民のセーフティネットとして貢献する」ため、公益社団法人全国市有物件災害共済会により運営されている専門図書館で、昭和31(1956)年7月に開設されました。

設置母体である公益社団法人全国市有物件災害共済会は、地方自治法第263条の2の規定に基づいて、昭和24(1949)年1月、全国の各市が地方自治の発展と住民福祉の向上を目指し、相互救済事業を実施するために共同で設立されました。

どんな人が利用しているの?

防災専門図書館は、東京メトロ・永田町駅から徒歩約4分の日本都市センター会館の8階にあり、誰でも利用することができます。

日本都市センター会館のビル内には、会議室、宿泊施設などもあります。入口に「防災専門図書館」の名前もあります。

防災専門図書館の利用者は、防災・災害について、研究をしている人や調べている学生のほか、宿泊や会議の合間にふらりと立ち寄る人も多いそう。
また、自治体や企業、あるいはマンションや自治会で防災の業務に関わることになった人が、防災やBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の情報、災害対策のノウハウを求めて来館することも。公共図書館や学校図書館から、「防災について、子ども向けのわかりやすい資料を紹介して欲しい」といった要望も寄せられます。
夏休みの自由研究で、防災専門図書館を訪れる親子もいるとか。
中には、「自分の家は、地震があった時に大丈夫な場所なのか? 」といった問合わせも!

来館者は、1日10人程度ですが(月140人前後)、災害が起きると利用が増える傾向があり、実際、2019年10月と11月は、いつもよりも利用が多かったそうです。

災害・防災に関する様々な資料があります!

所蔵資料数は約16万冊。
防災専門図書館では、「災害」を「人に災いを及ぼすもの」と広く定義しており、地震や水害などの自然災害だけではなく、交通事故、公害、労働災害、農業災害、戦災といった人為災害に関する資料もあります。

閲覧室にある、調査用の各種事典類。事務室には、この他にも、様々な事典類があります。

例えば、「地震」という分野では、地震の被害状況の報告書や記録だけではなく、震災対応、心のケア、震災支援、ボランティア、関係法令、耐震技術などの幅広い資料を揃えることで、多角的な視点から調査ができるようにしています。

市販されている本だけではなく、「灰色文献」と呼ばれる、一般には流通しない、地方自治体・団体等の出版物も積極的に収集しています。
そのため、日々のニュースだけではなく、専門雑誌の情報や論文の引用元となっている情報、さらには消防庁のホームページや内閣府の防災情報のページなどのインターネット情報もチェックしているそうです。

最近は、紙では出版されず、インターネット上のみに公開されている資料もあります。インターネット情報は、いつ消えてしまうかわからないため、プリントアウトをして館内で製本し、資料として受け入れています。

「マイ・タイムライン」とは、台風接近時に慌てることがないように、平常時に自分に合った避難行動計画を立て、台風による洪水・浸水などの被害にあう前に避難するためのツールです。早めに避難することにより、「逃げ遅れゼロ」を目指した取り組みです。

ちなみに、東日本大震災に関する資料について、様々な視点の資料を被災地以外で一番まとまって所蔵しているのは、防災専門図書館なのだそう。

「東日本大震災」関係資料は、事務室内の奥の書架に並んでいます。

東日本大震災後は、子ども向けの本も積極的に集めているとか。

子ども向けの絵本もあります!

独自の資料分類

収集した資料は、独自に作成した分類を使っています。これにより、災害・防災に関する資料を、より細かいテーマに分類しているのです。

所蔵している資料は、館内の蔵書検索パソコンだけではなく、ホームページの「蔵書検索」からも検索することができます。
 

右側が蔵書検索パソコン。左側のパソコンでは、伊勢湾台風の映像が上映中でした。蔵書検索パソコンは、入口すぐの、カウンター横にあります。

災害の情報・経験と防災知識を持ち帰ってもらうための企画展示の実施

災害対応の第一は「備え」です。
防災グッズ・災害食の準備や耐震のための家具の固定などの物理的なものの「備え」はもちろんですが、過去の災害の経験や最新の情報といった「知の備え」も不可欠。企画展示は、「物理的備え」と「知の備え」の両方を、所蔵資料を活用して伝える機会と考えているそうです。
そこで、展示された資料を見た方が、災害が自分にも起こりうることととらえ、その準備と「災害にあった時に、自分はどのように対応すべきか? 」を考えることができるよう、蔵書を展示するだけではなく、解説パネルを多用して、視覚的にわかりやすい構成にするよう心がけているそうです。

防災グッズの準備は、100円ショップも活用できます! 

防災食の実物と、関連する本を一緒に展示しています。

企画展示「スーパー台風襲来!? ~高潮災害を考える 伊勢湾台風から60年~」

現在は、企画展示「スーパー台風襲来!? ~高潮災害を考える 伊勢湾台風から60年~」を実施中。閲覧室内だけではなく、エレベーターホールや廊下も活用して、資料や解説パネルを展示しています。

エレベーターを降りると、すぐに展示が目に入ります。ここに置かれたパンフレットやチラシは、自由に持ち帰ることができます。

伊勢湾台風が和歌山県の潮岬(しおのみさき)に上陸したのは、昭和34(1959)年9月26日。この台風により、伊勢湾では高潮が発生し、全国では死者・行方不明者が5,000人を超えました。この人数は、台風によるものとしては、現在でも最多です。そして、この台風を契機に「災害対策基本法」が制定されました。

「伊勢湾台風」時のような高潮災害は、最近も発生しています。例えば、平成30(2018)年の台風21号では、関西国際空港や神戸市が被害を受けました。

今回の展示では、東京にスーパー台風が襲来し、高潮災害が発生した場合の対策や備えを考えるきっかけとなるような内容にしたとか。

壁には、各自治体のハザードマップを活用して作成したという「洪水ハザードマップ(荒川版)」が掲示されていました。

各区の「ハザードマップ(荒川版)」をつなげて作ったオリジナルの広域のハザードマップ。ハザードマップなど、防災情報は、「住んでいる自治体のものだけではなく、周辺自治体の情報も知っていた方がよい」とのこと。

ハザードマップのそばには、3D地図が。どのあたりの土地が低く、水没しやすいかが一目瞭然!

2019年10月の、台風19号を特集した雑誌

周年災害のテーマ展示を行っています

企画展示は、防災専門図書館が持っている資料を活用して行っています。
大型の企画展示は、年に1、2回実施していて、これまで「阪神・淡路大震災から20年-都市で起こりうる災害を考える」「首都圏水没!?-カスリーン台風から70年」「震度7の連鎖:首都直下型地震を考える-福井地震から70年」など、「災害から〇年目」という周年災害をテーマに実施してきました。
事前に足りない資料があれば寄贈依頼や購入をしたり、視覚的にわかりやすい大型の掲示物を作成したり、関連機関から配布用のパンフレットをもらうなど、3、4か月前から準備を始めているとか。

今後、「東日本大震災から10年」(東日本大震災は、平成23(2011)年3月11日発生)、「関東大震災から100年」(関東大震災は、大正12(1923)年9月1日発生)などの周年災害の展示を考えているそうです。

防災・災害情報の水先案内人としての役割

防災専門図書館では、閲覧スペースが限られていることもあり、雑誌や一部の図書のほかは、ほとんどの資料が書庫の中にあるため、すぐに手に取って内容を確認することができません。資料名からでは内容がわかりにくい資料も多いため、目次情報を入力するだけではなく、キーワードや同義語なども付与することで、蔵書検索をした時に探しやすくしているそうです。

もし、探している情報がどんな資料に載っているかわからない時や、自分が知りたいことが漠然としている時は、「ぜひ司書に問合せてください! 」とのこと。防災専門図書館の司書の皆さんは、「災害から身を守るためには、正しい情報を伝え、活用していただくこと」を使命と考え、日々、防災の最新情報の収集に努めているのです!

レファレンスサービスは、来館だけではなく、メールや電話でも受付けしています。災害や防災の情報やデータを探していて「困った!」という時は、防災専門図書館に問合せてみてはどうでしょうか。

書庫の中には貴重な資料も!

防災専門図書館のほとんどの資料は書庫の中にあります。
今回、特別に書庫の中を見せていただきました。

書庫は、電動式の集密書庫で、分類別に本が収蔵されています。

集密書庫には、主題別に、様々な本が並んでいます。

古い調査報告書類もあります。

江戸時代のかわら版もあります!

江戸時代の、火災や地震の被害を伝えるかわら版も所蔵しており、これらはホームページのデジタルアーカイブで画像をみることができます。

「大都会不尽 (おおつゑぶし)」
安政の大地震以降のかわら版に見られる鯰絵(なまずえ)の一つ。
鯰絵とは、地震を起こすと信じられていたナマズを描いた錦絵。安政2(1855)年10月の安政江戸地震をきっかけに、江戸で大量に流布しました。鯰絵には、ナマズを懲らしめる様子などを描いたユーモラスな図柄もあります。

「江戸大地震并ニ大火(えどおおじしんならびにたいか)」 安政2(1855)年頃
安政2年10月2日(1855年11月11日)午後10時頃、東京湾北部から現在の江東区あたりの内陸が震源と推測されている安政江戸地震が発生しました。地震の規模はマグニチュード7程度と推定されており、被害状況からみて、山の手の台地では震度5相当、下町の低地では震度6弱~震度6強相当の揺れであったと考えられています。

「火之用心 大阪今昔三度の大火 文久三亥年大火 天保八酉年大火 享保九辰年大火」
文久3(1863)年の大火に際して出版されたかわら版。享保9(1724)年の「妙知焼(みょうちやけ)」、天保8(1837)年の「大塩焼(おおしおやけ)」とあわせて3つの大火の焼失地域を図示し、火災への注意を呼びかけるもの。

「防災いろはかるた」の作成

防災専門図書館では、防災を身近に感じてもらうことを目的に、オリジナルの「防災いろはかるた」を作成しています。誰でも知っていることわざを、言葉遊びでちょっとひとひねりしているので、思わず「クスッ」としてしまいます。

「防災いろはかるた」

「防災いろはかるた」は、図書館のホームページで公開中。いろいろな場面で活用して欲しいという思いから、自由に利用していただいているそうです。(だたし、商用利用は不可)。来館者がお土産にお持ち帰りできるよう、しおりバージョンもあります。

しおりになった「防災いろはかるた」は、カウンターに置いています。来館者の中には、全種類もらっていく人もいるとか。

災害は忘れてなくてもやってくる

「災害」は、誰にとっても嫌なこと。嫌なことは、自然に忘れようとしがちです。
防災についても、つい後回しにしがちですが、誰にも襲ってくるのが災害です。災害が起こった時に、平常心で落ち着いて行動するためにも、防災の知識は不可欠なのです! 

防災や災害に関する資料は公共図書館にもありますが、もっと詳しく調べたい・知りたい時は、防災専門図書館を利用してみてはいかがでしょうか。
展示もとても見ごたえがあり、防災について学ぶことができますよ。

防災専門図書館 基本情報

施設名: 公益社団法人全国市有物件災害共済会 防災専門図書館
住所: 102-0093 東京都千代田区平河町2-4-1(日本都市センター会館8階)
開館時間: 9:00-17:00
休館日: 土曜日、日曜日、国民の祝日、年末・年始、館内整理日
webサイト: https://www.city-net.or.jp/library/

書いた人

秋田県大仙市出身。大学の実習をきっかけに、公共図書館に興味を持ち、図書館司書になる。元号が変わるのを機に、30年勤めた図書館を退職してフリーに。「日本のことを聞かれたら、『ニッポニカ』(=小学館の百科事典『日本大百科全書』)を調べるように。」という先輩職員の教えは、退職後も励行中。