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2020.05.24

近所の散歩がもっと楽しくなる!江戸時代の遊びをヒントに「道草遊び」しよう

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どこか遠くに行かなくても、身近な自然環境を歩いていると、発見や驚きがいっぱい。ジブリ映画「となりのトトロ」の名曲「さんぽ」を口ずさんでいると、そんな子どもの頃の懐かしい感覚がよみがえってきます。

外出自粛という初めての事態によって「自分の近くにある楽しみに気が付いた」という人は多いと思いますが、近所のお散歩もそのひとつ。

我が家では、道端で見つけた植物を使って「道草遊び」をするようになってから、散歩が今までの何倍も楽しくなりました。そこで、子どもと一緒に過ごす時間が増えて「どう過ごしたらいいのか分からない」「遊びがマンネリ化してきた」という方にもぜひご紹介したいと思い、今回記事を書くことにしました。

かくいう私自身も、元気な2歳児の子育て真っ最中。「今日は何をして遊ぼうかな」と毎朝考えていましたが、そんな時にある疑問が湧いてきたんです。

「江戸時代の子どもたちは、どんな遊びをしていたんだろう」

この疑問が、道草遊びへの小さな扉を開けてくれました。

江戸時代の「しょうぶ刀」で大盛り上がり!

江戸時代の子どもの遊びは、浮世絵などから知ることができます。凧揚げやこま回し、竹馬、金魚すくい、何かの真似をする「ごっこ遊び」など、遊びの種類も多種多様。いろんな知恵を絞って遊んでいたようで、まさに「遊びの天才」。車による交通事故の心配が少なかったので、路上で遊ぶことも多かったようです。

玩具が購入できるようになったのは、江戸時代中期。価格は安いものから高いものまでさまざまだったようですが、既製品の玩具を使わない遊びも多く、安い玩具を買って自分で細工して楽しむなど、お金をかけなくても上手に遊んでいたのだとか。

季節ごとの遊びもたくさんありました。例えば、5月5日の端午の節句によく用いられる植物「しょうぶ」を使った「しょうぶ刀」は、江戸時代の男の子にとても人気があったのだそう。しょうぶの葉を束ねたものを腰に差して、刀のように「エイ、ヤ~」と振り回して遊ぶというもので、しょうぶの形状を上手く利用したシンプルな遊びです(葉が尖っているので、ケガなどには注意してくださいね)。

かぶとの横に飾っている「しょうぶ」を少し拝借して、しょうぶ刀に。

というは我が家でも子どもと一緒に、当時の真似をして遊んでみたのですが、想像以上に大盛り上がり! ただ眺めているだけよりも、実際に触ったり遊んだりしたほうが楽しいですし、大切な思い出として心に残ります。

この出来事がきっかけで、身近な植物を使った遊びをもっと体験したいと思うようになりました。

身近な植物で「道草」しよう

外出自粛が始まってから、運動不足解消や気分転換を目的として、少人数で近所の散歩を習慣としている方が増えています。私も半径200~300mほどのエリアをよく歩いていますが、春から梅雨入り前のこの時期は、自然界は生命力に満ち満ちていて、いろんな植物や虫たちに出くわします。

季節はどんどん変わっていくので、ほんとうに見飽きることがありません。道草遊びは、親子で楽しむのはもちろん、散歩や植物が好きな方にもおすすめです。

ではさっそく、出かけてみましょう!今回は、5月に出会った植物のなかから5種類を紹介しますね。

1. ヤハズエンドウ(カラスノエンドウ)の草笛

紫色の花を咲かせるマメ科の植物。一般的には「カラスノエンドウ」と呼ばれることが多く、春先の柔らかいものは料理に使って食べることもできます。

豆の部分は、タネや筋をきれいに取れば「草笛」にもなります。その音色から「ピーピー笛」とも呼ばれており、子どもの頃に遊んだ経験がある方も多いかもしれません。私も試してみましたが、意外と難しい! しっかりと音を出すためには、ふっくらと膨らんだ実を選ぶことがポイントです。アブラムシが付いていることも多いので、よく確認してから使ってくださいね。

2.オオバコ相撲

道端などでもよく見かける野草。放射線状に出た葉の中心部分から、花穂をつけた数本の茎が出ます。葉は漢方薬にも使われています。

まずは太くて丈夫そうなオオバコを2本探します。それをUの形になるように絡ませて、引っ張り合い。切れてしまったら負け、という遊びです。「ハッケヨイ、ノコッタ、ノコッタ」と掛け声をかけると、さらに盛り上がります。オオバコが見つからない場合には、松の葉など他の植物でも楽しめますよ。

3.コバンソウの楽器

穂の形が小判に似ていることから、この名前が付いたとされるイネ科の植物。その独特の姿から、生け花やドライフラワーなどでも楽しまれています。

風が吹くとゆらゆらと揺れる姿が可愛らしい、コバンソウ。やさしく振ると、「カシャカシャ」と静かで心地よい音がします。穂の付き方によっても少しずつ音が変わります。コバンソウよりも小さな穂を付ける「ヒメコバンソウ」などでも楽しめます。

4.笹(ササ)舟

繫殖力が強く、道端の隙間などからもよく生えている笹。葉には抗菌作用があるとされ、古くから「笹の葉寿司」などにも利用されてきました。

コップに浮かべたかったので、小さな笹を使った笹舟に。

笹の葉に手で切り込みを入れて組み合わせると、笹舟ができます。水を張った入れ物に浮かべてみると、涼が感じられます。遊びだけでなく、暑い時期のインテリアにも良さそうですね。クマザサやオカメザサなどいろいろな種類があるので、好みに合わせて使い分けしてみてはいかがでしょう。

5.四つ葉のクローバー探し/シロツメクサの花冠

クローバーは、別名シロツメクサとも呼ばれています。「四つ葉のクローバーを見つけると幸せが訪れる」という言い伝えがあり、子どもの頃に夢中で探した経験のある方も多いと思います。4~6月の花期には、シロツメクサを編んで花冠を作ってみるのもいいですね。

ちなみに、クローバーによく間違われる植物として「カタバミ」があります。三つ葉で這うように成長していく姿はたしかによく似ていますが、花や葉っぱの形は全く違います。ぜひ違いを見つけてみてくださいね。

こちらがカタバミ。いくつか種類があり、黄色や紫色の花が咲く。

薬草もそこかしこに発見!

植物を意識しながら歩いていると「こんなにいろいろな植物があったんだなぁ」と気が付きます。そして、遊びに使える植物だけでなく、古くから人々に親しまれてきた薬草も見付けられることを知っていましたか?

近所のどこに生えているかをチェックしておくと、いざという時(!?)にも役立つかもしれません。



よもぎ(右)とドクダミ(左)。乾燥させると「よもぎ茶」や「ドクダミ茶」などの薬草茶になります。どちらも日本を代表する薬草のひとつで、よもぎは草餅やお灸のもぐさの原料でもあります。

ドクダミをアルコールに漬けた「ドクダミチンキ」は、虫刺されの痒み止めにも使用できます。私は庭先のものを摘んで毎年手作りしていますが、これからの季節にはとても重宝! 安心できる環境で育ったものが手に入れば、試作してみるのもおすすめです。

身近な自然を、五感で自由に楽しもう

植物を眺めていると、どんな植物にも個性があって面白いですね。道草遊びは、創造力も鍛えてくれるので、子どもの遊びにもぴったりだなぁと感じます。

先に紹介した植物はほんの一例で、その時に出会った植物で遊ぶことができます。名前が分からなくても、ノープロブレム!自由な発想で楽しめますし、自分なりにあれこれ考えることこそが道草遊びの醍醐味だと思っています。

変わった形の植物を見つけたら「これな~んだ」と手に乗せて、中身をイメージするのも面白い。植物を使った遊びは無限大!

ちなみに道草遊びは頭を使うので、お腹がグゥ~ッと空いてきます。つまり、ごはんが美味しく食べられるという、嬉しいおまけも付いてきます(笑)。

緊急事態宣言が解除された地域もありますが、今までのように屋外で自由に過ごせるようになるのには、まだしばらく時間がかかりそう。江戸時代の遊びに思いを馳せながら、道端の植物を使った「道草遊び」で、いつものお散歩をもっともっと楽しんでみませんか。

<参考>
・『江戸の躾と子育て』中江克己著

書いた人

バックパッカー時代に世界35カ国を旅したことがきっかけで、日本文化に関心を持つ。大学卒業後、まちづくりの仕事に10年以上関わるなかで食の大切さを再確認し、「養生ふうど」を立ち上げる。現在は、郷土料理をのこす・つくる・伝える活動をしている。好奇心が旺盛だが、おっちょこちょい。主な資格は、国際薬膳師と登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。https://yojofudo.com/