焼き鳥、いなりずし、オムライス…文化人が愛した昭和の味7選

焼き鳥、いなりずし、オムライス…文化人が愛した昭和の味7選

江戸時代や明治時代を語るように、すでに「昭和時代」と呼ばれるあのころ…。ていねいな暮らし、シンプルな暮らしが見直されている今、〝昭和の食〟も注目されています。決して「今はなき…」ではないけれど、懐かしくてあたたかい、そんな〝昭和の食〟は、文豪や文化人など、たくさんの食いしん坊たちによってにぎわい、書き残されました。今回は、文化人たちが愛した昭和の味7選をご紹介します。

1.伊勢廣 本店【京橋】

高層ビルがそびえるオフィス街の谷間、中央通りの裏路地にある、まるで小津映画の舞台にでもなりそうな風情ある木造2階建て。それこそが焼き鳥屋の「伊勢廣(いせひろ)」です。大正10(1921)年、鶏肉の専門店としてスタート。昭和初期には、当時では珍しい焼き鳥屋を営み始めました。たった4席の小さな店でしたが、毎朝にわとりを丸ごとさばくため、品質と鮮度はどこにも負けない。しかも鶏肉以外の食材にもとことんこだわり、ねぎは千住のねぎ専門問屋から、しいたけやししとうは築地の料亭に卸す八百屋で、塩も自ら探した静岡の職人による塩を使用。すべての食材を鶏肉の水準に合わせた最高級のものに揃えたところ、たちまち評判を呼んですぐに4席では足りなくなりました。

小津安二郎がひいきにした、東京・京橋の焼き鳥

小津安二郎が『伊勢廣』に通ったのは昭和28(1953)年ごろ。好んだ席は、店の奥にあった畳の小上がりだったと当代は語ります。「昭和27年に嫁いできた母が小津先生とお会いしています。いつも静かに召し上がって、静かにお帰りになっていたようです」

伊勢廣

創業時から「焼鳥フル・コース」は変わりません。1本目は火の通りが早くて客を待たせずに出せるお通し代わりの笹身。上にのせたおろしたてのわさびの香りが鼻に抜けます。そしてレバー、砂肝、ねぎ巻き、団子、かわ、もも肉、合鴨、手羽と続きます。一番人気は団子です。串に刺せないおいしいすべての部位を、つなぎを使わずに少量の塩と麻の実を入れて、1本に旨味を凝縮しています。食材に関するこだわりは、よき時代の「ほぼ原形どおりです」と、当代は姿勢を正します。きびきび立ち働く店員と昭和の美味。小津安二郎が食したコースもそのまま。カウンターでその焼き鳥とお酒をやっているうちに、常連に愛され続けている理由がわかるような気がします。

◆伊勢廣 本店
住所:東京都中央区京橋1-5-4
TEL:03-3281-5864
営業時間 [ランチ]11:30~14:00[ディナ-]16:30~21:00
※土曜のみ16:30~20:30
定休日:日・祝
公式ホームページ

2.光泉【北鎌倉】


小津監督の好物は、北鎌倉にもありました。 「小津先生の印象は、大きくてこわいおじさんでした」と笑うのは、JR北鎌倉駅前「光泉(こうせん)」店主の高井洋子さん。女学生のころの思い出だそう。

小津安二郎の鎌倉でのお気に入りは…

「光泉」のいなりずしは、甘みが控えめな油揚げと、まろやかな酸味の酢飯の組み合わせが品のよい印象。小津作品によく出演した俳優・笠智衆(りゅうちしゅう)も、ここのいなりずしが好物でした。「もともと、小津先生のお母様がお好きで、先生がお求めくださるようになりました」(高井さん)

――森と昌子ちやんくる光泉から稲荷すしをとつて麦酒をのむ――『全日記 小津安二郎』(フィルムアート社より)小津の日記のように、いなりずしでビールを飲めば、昭和がよみがえってくるに違いありません。

◆光泉
住所:神奈川県鎌倉市山ノ内501
TEL:0467-22-1719
参考サイト:食べログ

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