夏という季節に大人も子供も心が浮き立つのは、全世界共通。澄んだ海、乾いた風がひときわ心地よく感じるころ、時間に余裕があるのなら、本島のその先にある離島を目ざしてみませんか?今月のINTOJAPANでは、『佐渡』『対馬』『大三島』を3週にわたってご紹介します。
北前船の寄港地は、町人文化の街でした
薄く剝いだ板の上に重石を並べた『石置き木羽葺屋根』
島には、佐渡金山に代表される武家文化や、北前船がもたらした豊かな町人文化が。そして何より郷愁をかき立てるノスタルジックな風景こそが、佐渡に大人世代が惹きつけられる最大の理由なのかもしれません。
造船技術の発達により、大きな船を造ることができるようになった江戸後期から明治初期にかけて、北前船が大活躍していました。北前船とは、北海道や日本海の港から、西廻りの航路で京都や大阪へ物資を運んだ船のこと。宿根木は北前船の往来の拠点として、海運業に携わる人が多く住み、入り江の奥の奥にまで、ぎっしりと家屋が建てられたのです。
左/宿根木のシンボル的な公開民家『三角家』右/板壁の外観からは想像できない贅沢な内装の公開民家『清九郎』
しかしその後、開発から取り残されていた宿根木は、近年になってその美しさが再評価され、平成3(1991)年、新潟県で唯一、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。石畳の路地の両脇には、古い板壁の民家が軒を連ねています。
その数、100余棟。路地をのぞくたびに、時間をさかのぼるような感覚に襲われます。北前文化の繁栄を物語る公開民家が数軒あり、そのひとつ『清九郎』は、廻船2隻を所有した元廻船主の家です。大黒柱から戸板にいたるまで、目につくところ全部が、見事な漆塗りの内装。また、訪れた人が必ず写真を撮りたくなる公開民家『三角家』は、CM撮影に使われて有名になったところ。名前のとおり、家のかたちが実に独創的なのです。
宿根木から車で10分ほどの小木にも足を延ばしてみましょう。小木港は金銀の積出港として、また風待港として、幕末まで繁栄していました。現在は、太鼓芸能集団『鼓童』の活動拠点として知られています。一本奥に入れば、ゆるやかに弧を描いた曲線の通りが広がっています。そして、かつての宿屋や商家、廻船問屋、貸座席だった多くの歴史的な建物が、当時のにぎわいを伝えているのです。
『北村薬品』店内
そのなかの一軒『北村薬品』は昭和初期に建てられた洋風外観の薬局。古い薬棚が並ぶレトロな雰囲気がたまりません。小木は町家と呼ばれる建物に特徴があり、2階が張り出した『出鼻づくり』といわれる様式や、特徴的な手すり(高欄)、軒下飾りなど、いろいろな発見が街歩きの楽しみとなっています。
佐渡の方言で「ゆっくり、のんびり」は「しなしな」。魅力あふれる宿根木や小木を「しなしな」歩く。そんな時間こそが旅の醍醐味かもしれません。
佐渡をもっと楽しむ旅案内!
【訪れる】
史跡 佐渡金山
幕府の財源を強力に支えた佐渡金山の鉱山跡。江戸初期から昭和までの採掘跡を見学できる。車で7分ほどの北沢浮遊選鉱場(右上の写真)は、某アニメ映画の遺跡のよう。朽ち果てかけた姿に圧倒される。
webサイト:史跡 佐渡金山
『佐渡乳業』の乳製品
トキパック牛乳の愛らしさにひと目ぼれ!牛乳の売り上げの一部は、トキの森づくりに寄付されるそう。島内で生産される生乳を使った佐渡バターは少数生産で、販売個数が制限されるほど。ミルクのほのかな甘みがたまらない。
webサイト:佐渡乳業
『無名異焼』の作品
佐渡金山から見つかった無名異土は、酸化鉄を多量に含んだ赤土で、昔は止血剤など薬用にもされてきた。キメが細かく、丈夫なやきものになる。現在は地元在住の5代伊藤赤水さんが人間国宝に認定されている。市内のいろいろな観光スポットで購入可。
『しまふうみ』のガトーバスク
真野湾が一望できるところにある、心地よいベーカリーカフェ。具だくさんのキッシュやケーキが併設のテラスでいただける。地元産の貴重な佐渡バターを使った焼菓子やパン、ベーグルなども美味。地元の人がひっきりなしに訪れる人気店だ。
webサイト:しまふうみ