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2023.10.10

独自製法のヒントはチョコレート!? 柏屋光貞「おゝきに」【秋めく京都の干菓子図鑑・陸】

京都の自然の景色や、みやこびとが愛した文様や物語が、指先にのる大きさに表現されている干菓子は、京都の美意識そのもの。そんな京都の老舗の干菓子から、お取り寄せ可能な8作を6回に分けてご紹介します。

最終回の第6回は【柏屋光貞「おゝきに」】です。

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50年ぶりの新作菓子が10年を経て、今では看板商品に
柏屋光貞の「おゝきに」

さいの目に切られたひと口大の半生菓子。クリームのようになめらかで、さらさらした口どけ。後味のよさに驚きます。和の製菓材を使い、添加物はなし。何をどうしたら、洋菓子と和菓子のいいとこ取りのような食感に? 

干菓子の分類でいえば、「おゝきに」は「すり琥珀(こはく)」に入ります。「すり琥珀」とは、煮溶かした寒天に砂糖・水を加え、液が熱いうちに空気を送り込むようにすり混ぜて、乳白色になったものを固めて乾燥させたもの。しゃりしゃりとした味わいが特徴のはずが…? 

「製法は秘密ですわ(笑)。ヒントは、エア・イン・チョコレートかな。空気をたっぷり含ませると、別物になりますでしょう?」と茶目っ気あふれる表情を見せる10代目・中川タ津也(たつや)さんは80代半ばの今も現役の職人。9代目が考案した夏の名物「京氷室(きょうひむろ)」という茶席用の寒天菓子を、もっと気楽に食べやすくと11代目の喜博さんが製法の開発に励み、10代目が菓子のコンセプトを固め、この菓子が生まれました。

4つに染め分けた色は、味の違い(白はプレーン、ピンクは梅、緑が柚子、茶が黒糖)であり、四季と「四神相応(しじんそうおう)の地」として造営された京の街の移ろいを映したもの。そして、四畳半の茶室でもある。菓銘も京都弁の4文字という遊び心! 文化3(1806)年の創業以来の、京菓子の真髄である見立てのこころが詰まった逸品です。

色それぞれに味が異なります

1箱1,435円(税込)。通年販売商品で、49個の「すり琥珀」と季節に応じたモチーフの「生砂糖(きざとう)」、あわせて50個の干菓子が化粧箱に収められている。日もちは5日。

すり琥珀「おゝきに」はつまみやすくて、食べすぎ注意。緑色は香り高い四国産の柚子が味わえる。

往く秋を惜しむような菊の侘びた姿をそっとうつわに描く

「おゝきに」と並ぶ定番の半生菓子「音羽山(おとわやま)」は、中煎りの大豆粉の落雁(らくがん)で中にこしあん入り。同じ材料で東菊(あずまぎく)を模した型で打ったのがこの「残菊(ざんぎく)」。煎った豆のそのままの色が、盛りを過ぎた菊の佇まいに似て。※誂え菓子につき要相談。

店舗情報

柏屋光貞(かしわやみつさだ)
住所:京都府京都市東山区安井毘沙門町33-2 
電話:075-561-2263
営業時間:9時~18時
休み:日曜・祝日 
●お取り寄せ:電話で受け付ける

撮影/石井宏明 構成/藤田優
※本記事は雑誌『和樂(2021年10・11月号)』の転載です。掲載データは2023年9月現在のものですが、お出かけの際は最新情報をご確認ください。

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和樂web編集部

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