芸術品のようなひと皿に京都の季節と伝統、文化をのせて
カラン、コロン。静かな店内に響く下駄の音。調理場とカウンターを行き来する店主のきびきびとした所作が心地いい日本料理店「杦 SEN」。
店主の杉澤 健(すぎさわ たけし)さんは、料亭「菊乃井」や「室町和久傳(むろまちわくでん)」で腕を磨いた後、「祇園ろはん」で料理長を務め、定食割烹という新しいジャンルを生み出した実力派。ロンドンで1年ほどプライベートシェフとしても活躍し、日本料理の可能性を実感したとか。
2018年のオープン以来、確かな腕前と豊かな発想力、まっすぐな人柄で地元の方はもちろん、国内外から多くのファンが訪れるというのも納得です。
コースは、先付けやお造り、お椀、八寸(はっすん)など8種ほどの正統派懐石料理。京都の旬を芯でとらえたシンプルかつ、芸術品のような美しいひと皿が続きます。
なかでも、四季折々のテーマが光る八寸はひときわ華やか! 春は花見、秋は紅葉狩り、夏は祇園祭…など、月ごとにかわるプレゼンテーションは、見るだけで心浮き立ちます。
もうひとつ人気なのは、「和久傳」仕込みの選べる〝シメ〟。白ご飯、のり茶漬け、あぶり鯖寿司、冷たいそば、温かいやなぎそば(ラーメン)、炊き込みご飯にかき揚げ丼、たまごとじ丼…など、季節によってかわるものの常時8種から好きなものを好きなだけ選べるとあって、これを楽しみに訪れる常連さんも多数(全種類を少しずつ、とオーダーされる方もいるとか!)。ラストはお菓子とお抹茶でほっとひと息。
「料理はできてあたりまえ。季節感はもちろん、伝統や文化まで、料理をとおして気負わず楽しんでいただくことが、ここ京都で料理人をやらせてもらっている私のおもてなしだと思っています。料理をお出ししたときの、お客さまたちの驚きや喜びをカウンター越しに見ることができるのは、こちらもうれしいこと。記憶に残るひと皿をと、日々精進しています」
カウンター名店DATA
「杦 SEN」(せん)
住所:京都府京都市下京区五条通柳馬場上ル塩竈町379
電話:075-361-8873
営業時間:昼12時~15時(火・水・土・日のみ)、夜18時~22時 要予約
休み:木曜、ほか不定休あり
料金:コース14,850円(昼のみ)、33,000円、焼蟹コース49,500~60,500円(サービス料別)
公式サイト:kyoto-sen.com
撮影/長谷川潤 構成/田中美保
※本記事は雑誌『和樂(2024年4・5月号)』の転載です。
※営業時間や休みなどが変更になっている場合があります。お出かけの前に最新情報を確認してください。