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2024.11.04

数々の名店で腕を磨いた正統派懐石料理の、雅と手仕事を特等席で!「杦 SEN」【京都、カウンターの名店1】

料理人自ら目の前で新鮮な食材を調理して出すスタイルのカウンター店。刺身を引く、焼く、煮る、器に盛り付ける…。カウンター越しに見る料理人の姿は実に美しく、その佇まいや所作は、こだわりの料理と共に〝食の文化遺産〟といってもいいかもしれません。カウンター文化の聖地ともいうべき京都で「料理人の手仕事」を堪能できる様々な名店を5軒ご紹介します。

芸術品のようなひと皿に京都の季節と伝統、文化をのせて

カラン、コロン。静かな店内に響く下駄の音。調理場とカウンターを行き来する店主のきびきびとした所作が心地いい日本料理店「杦 SEN」。

店主の杉澤 健(すぎさわ たけし)さんは、料亭「菊乃井」や「室町和久傳(むろまちわくでん)」で腕を磨いた後、「祇園ろはん」で料理長を務め、定食割烹という新しいジャンルを生み出した実力派。ロンドンで1年ほどプライベートシェフとしても活躍し、日本料理の可能性を実感したとか。

2018年のオープン以来、確かな腕前と豊かな発想力、まっすぐな人柄で地元の方はもちろん、国内外から多くのファンが訪れるというのも納得です。

左/春のお椀はハマグリ仕立て。京都・大原野産の白子筍、うるいの茎、うどと共に。季節ごとにかわる越前塗のお椀はすべてオーダー品。蓋の表面は透かしの桜の花びら、開けると内側には満開の桜が。粋! 右/お造りは120年前のバカラの器に。この日は初鰹の藁焼き、あおりいか、うに。土佐醬油と塩、玉ねぎポン酢でいただく。各人の前には小さな桜の枝が。作家ものやアンティーク。器も料理です!

コースは、先付けやお造り、お椀、八寸(はっすん)など8種ほどの正統派懐石料理。京都の旬を芯でとらえたシンプルかつ、芸術品のような美しいひと皿が続きます。

なかでも、四季折々のテーマが光る八寸はひときわ華やか! 春は花見、秋は紅葉狩り、夏は祇園祭…など、月ごとにかわるプレゼンテーションは、見るだけで心浮き立ちます。

左/4月の八寸。笹の葉に包まれていたのは車海老と白甘鯛の手毬寿司。ぼんぼり型の器の中には菜の花の白和え。蒸し鮑のゼリーがけに、白エビとほたるいかの梅醬(うめびしお)はさくらの香合に。華やかな逸品。右/先付けの毛蟹の飯蒸(いいむ)し。生姜が効いたあんがしみじみおいしい。清涼感のある器は、霰文(あられもん)に金縁が美しい〝春海(はるみ)バカラ〟。器好きな杉澤さんが長年かけて集めた器を楽しみにしているゲストも多い。

もうひとつ人気なのは、「和久傳」仕込みの選べる〝シメ〟。白ご飯、のり茶漬け、あぶり鯖寿司、冷たいそば、温かいやなぎそば(ラーメン)、炊き込みご飯にかき揚げ丼、たまごとじ丼…など、季節によってかわるものの常時8種から好きなものを好きなだけ選べるとあって、これを楽しみに訪れる常連さんも多数(全種類を少しずつ、とオーダーされる方もいるとか!)。ラストはお菓子とお抹茶でほっとひと息。

左/4月のお造り、初鰹の藁焼き。カウンター越しに見える焼き場からは、鮮やかな炎とともに香ばしい藁の香りが漂う。香りづけられたあぶり鰹はさらに旨みが増して、なんとも美味。右/コース後半に登場する鍋、4月はふきのとう鍋。牛肉、鴨肉、熊肉から選ぶことができる(写真は牛肉)。出汁にくぐらせた肉と黄ニラやクレソンなどの春野菜に、熱々のふきのとうのほろ苦いあんをかけ、黒胡椒で仕上げ。

「料理はできてあたりまえ。季節感はもちろん、伝統や文化まで、料理をとおして気負わず楽しんでいただくことが、ここ京都で料理人をやらせてもらっている私のおもてなしだと思っています。料理をお出ししたときの、お客さまたちの驚きや喜びをカウンター越しに見ることができるのは、こちらもうれしいこと。記憶に残るひと皿をと、日々精進しています」

名店で腕を磨いた店主・杉澤 健さんの、麗しき正統派懐石料理をコース仕立てでいただける。アイキャッチ写真は、シャープなラインが印象的なカウンターに、朱色の折敷(おしき)が映える。ゆったりと座れるモダンな北欧調の椅子は特注品。

カウンター名店DATA

「杦 SEN」(せん)
住所:京都府京都市下京区五条通柳馬場上ル塩竈町379
電話:075-361-8873
営業時間:昼12時~15時(火・水・土・日のみ)、夜18時~22時 要予約
休み:木曜、ほか不定休あり
料金:コース14,850円(昼のみ)、33,000円、焼蟹コース49,500~60,500円(サービス料別) 
公式サイト:kyoto-sen.com

撮影/長谷川潤 構成/田中美保
※本記事は雑誌『和樂(2024年4・5月号)』の転載です。
※営業時間や休みなどが変更になっている場合があります。お出かけの前に最新情報を確認してください。

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和樂web編集部

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