取材は2025年3月中旬に行った。 尚、聞き手はオフィスの給湯室で抹茶をたてる茶道ユニット「給湯流茶道(きゅうとうりゅうさどう)」。「給湯流」と表記させていただく。
金閣寺の庭が好き。お寺に行って自然を浴びたい!
給湯流茶道(以下、給湯流):阿部さんは、京都によく行かれるのですか?
阿部顕嵐(以下、阿部):そうですね、京都は大好きで何度も訪れています。
給湯流:独演会のタイトル「風姿花伝」は、能楽師・世阿弥(ぜあみ)の書物。当時、世阿弥のパトロン的立場であった、足利義満(あしかが よしみつ)の金閣寺も行ったことがありますか?
阿部:はい。金閣寺は庭が素晴らしいですね。
給湯流:金閣寺は金色の建物が有名ですが、阿部さんにとっては庭の方が魅力的なのですね。
阿部:そうですね。金閣自体ももちろん美しいですが、庭の美しさが僕には特に魅力的です。金閣寺といえば、金閣の輝きや重厚な佇まいを想像する人も多いと思いますが、僕は自然を浴びに行っている感覚です。
金閣寺…もともとは鎌倉時代の公家・西園寺公経(さいおんじ きんつね)が作った山荘だった。後に西園寺家が没落して山荘は荒廃。それを足利義満が譲り受け自分の山荘、住まいとして“リノベーション”したのが金閣寺のルーツだ。
金閣寺の敷地は東京ドームの2.8倍、約132,000㎡と広大。さらにその7割は庭園になっている。鏡湖池(きょうこち)といわれる大きな池があり、ここに大小の島々に見立てられた奇岩名石がいくつも配されている。
阿部:でもじつは僕、銀閣寺の方が好きなのです。7,8回は行ったかなあ。
給湯流:そんなに何度も訪れているのですか! どの季節の銀閣寺がお好きですか?
阿部:自然のエネルギーを感じる春が好きですね。まだ冬は行ったことがないのですが、雪の降る季節に、水墨画のような景色も見に行きたいです。
利益を度外視? 京都での独演会「風姿花伝」開催を決意
給湯流:2025年の独演会「風姿花伝」は、なぜ京都での開催を決めたのでしょうか?
阿部:実は、初期から「いつかは京都で開催したい」とスタッフのみなさんと話していたのです。今回、京都の劇場が空いていてタイミングも良かったので、思い切って決めました。
給湯流:京都には特別な思い入れがあるのですね。
阿部:そうですね。「和」といえば京都が思い浮かびますし、僕自身も京都が大好きですから。東京で開催するより制作費がかかるのですが、そこは利益を度外視してファンの方と京都で楽しもう、という気持ちで企画しています。
給湯流:利益を度外視! 「自分の地元・京都で開催されるのがうれしい」といった、ファンの方々のSNS投稿も拝見しました。
阿部:地元が京都なんて、うらやましいな。
ファンの期待をいい意味で裏切りたい。これは世阿弥の教え
給湯流:独演会「風姿花伝」が三年目に入るということで、初演からの変化についてもお聞きしたいです。どんなことを意識して公演に臨まれていますか?
阿部:観客の皆さんに楽しんでもらうことを第一に考えています。最初から変わらないのはそこですね。毎年新しい要素を加えて、どうすれば飽きさせずに楽しんでもらえるか、そればかり考えています。
給湯流:お客さんファーストの姿勢が変わらないのは素晴らしいですね。
阿部:ありがとうございます。京都という特別な場所で行う公演なので、これまでとは全く違う形にしたいと思っています。ファンの方々の期待を良い意味で裏切るようにしたいです。
給湯流:ファンの期待をいい意味で裏切り、飽きさせない。まさに、世阿弥が「風姿花伝」で書いていたことですね! 最後に、公演に参加されるファンの方々にメッセージをお願いできますか?
阿部:ただただ、楽しみに待っていてください。もし時間があれば、「風姿花伝」とあわせて、僕の大好きな京都巡りも楽しんでもらえたら嬉しいです。
給湯流:今日はお話をありがとうございました。
阿部顕嵐お知らせ
独演会『風姿花伝』第三期公演
2025年5/3(土・祝)~5/4(日・祝)
会場 京都・京都劇場