新潟県魚沼市内にある2つの酒造も、異なるベクトルをもって歩み続けている。今回は「玉川酒造 越後ゆきくら館」へ。
玉川酒造のユニークなリキュールたち
玉川酒造のコーヒー酒「ゆきくら珈琲」は、ブラックで、いやストレートで楽しみたいと思った。上質なコーヒーの香りとコクが豊かに広がり、なにかで割ってしまうのがもったいなくなる。アルコール度数12パーセントと平均的なコーヒーリキュールより度数が低めだから、「般若湯」や「麦茶」「麦ジュース」のような言い分で昼間から飲んでいても……いや、そういう悪だくみはやめておこう、ミスをやらかして困るのは自分自身だ。
そういえば、コーヒーリキュールは飲むと「目が冴える」のだろうか、「眠くなる」のだろうか。まあ、どちらでもいい、この美酒を楽しもう。

ゆず酒「UZ」も秀逸だ。柚子の爽やかな果実感が前面に出ていて、口あたりも飲んだあともすっきり。女性からの支持が非常に高いというが、アルコール度数10パーセントで果汁ベースのカクテルのような軽やかさだから納得だ。我が家では、そこまで強い酒を飲みたい気分ではないが、少しだけさっぱりと楽しみたい、というときにも活躍してくれている。
最も衝撃を受けたのは、日本酒ベースの「越後武士(えちごさむらい)」だ。アルコール度数46度。ウォッカに匹敵するほどの高アルコール度数にもかかわらず、喉を通り抜けても焼けつくような痛みはない。ストレートでの飲用を推奨しているわけではないが、試飲ではあえて「そのまま」を提供する、その意味を理解できた気がした。純粋に、美味い。

お酒ってこんな楽しみかたがあったのか、こんなに楽しいのか! そんな驚きとわくわくが、玉川酒造の商品にはある。

徳川第4代将軍家綱公の時代から続く伝統、そして未来へ
ただ、玉川酒造イコール変わり種だけ、ではない。
角のない、丸い味。しかし確かな個性が光る。その絶妙な加減を成立させるために、どれほどの工夫と苦労があったか計り知れない。

玉川酒造の歴史は、寛文13(1673)年に6代目 目黒五郎助が藩主より酒造りの許可を得たことに始まる。実に創業350年を誇る老舗中の老舗だ。酒蔵は地元の豪農・目黒邸を大正元年に移築したものを現在でも使用しており、内部を見学することもできる。

2025年の新商品「ガラパゴス」は、「古い酒蔵の中で進化し続けるお酒」を目指したという。前進をやめたなら、停滞ではなく退化が襲いくる。もちろん「前進」の形は一様ではないが、ものづくりに妥協が混ざれば消費者はすぐに勘付く。そんな、どこか背水の陣を思わせる心地よい緊張感が、玉川酒造にも漂っていた。

能楽や歌舞伎にも、ベースは残しながら新しい表現を求めた「スーパー能」「スーパー狂言」「スーパー歌舞伎」といったものがある。とある演者いわく、伝統的な形式の魅力を知ってほしいからこそ、新たな表現を探っているのだそうだ。
基本的に、「よいものがただそこにあれば売れる」わけではない。変化球にも魅力はあるが、長きにわたって受け継がれてきた「直球」の魅力を知るきっかけになってほしい。
玉川酒造にもきっと、そうした思いがあるのではないか。だからこそ、令和の時代にあっても目新しいものと350年の伝統とが、生き生きと並び立っているのだろう。
玉川酒造 越後ゆきくら館 基本情報
所在地:新潟県魚沼市須原1643
駐車場:あり
営業時間:9:00~16:00(見学受付15:30まで)
休日:1月1日、12月~2月は臨時休業の可能性有り
電話:025-797-2777
※酒蔵見学は無料、10名以上の団体の場合は要予約
公式サイト:http://www.yukikura.com/yukikurakan.html
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取材協力:小千谷観光バス株式会社http://www.ojiya-kanko.com

