豊かな山間の自然に抱かれた信州・小布施には、江戸時代の天才絵師・葛飾北斎の名残が今も色濃くただよっています。北斎の足跡から美味しいものまで、コンパクトにまとまった秋の小布施。ちょっと旅してみたいときに最適な場所です。芸術の秋、食欲の秋を存分に味わいましょう!
秋の小布施へ、北斎の面影と季節の味を求めて…
信州らしい景色に囲まれた小布施の街。桜井甘精堂「北斎亭」の暖簾に北斎筆の絵手本を発見!
位置関係を説明すると、「岩松院」が多少離れているものの、「北斎館」と「高井鴻山記念館」は中心街に隣接。そこでおすすめしたいのが、午前中に岩松院を参拝してから「八方睨み鳳凰図」を拝観し、午後に中心街を散策するというコースです。小布施駅から岩松院まではタクシーですぐ。そこから北斎館と高井鴻山記念館がある中心街までは、ゆっくり歩いてみてください。リンゴ畑やブドウ畑、栗の林を眺めながらの散歩道は、小布施の土地柄を知るのにちょうどいい道のりとなってくれるはずです。この栗こそ、小布施を有名にしている名産で、栗が旬を迎える秋は小布施が最もにぎわう時期。小さなエリアは活気に溢れます。
小布施で知る、北斎と鴻山の功績
この繁栄の礎を築いたのは、だれあろう高井鴻山その人。北斎との交流で小布施の名を広く知らしめた鴻山は実は、現在も続く人気菓子店「小布施堂」と「枡一市村酒造場」を経営してきた市村家の12代目の当主。昨今では和モダンを極めた宿泊施設「桝一客殿」でも知られています。鴻山は幕末から明治維新の動乱期に、高井家の財力をつぎ込んで街を支え、飢饉の際には困窮者を救済し、慈善家として社会に深く関わるなど、地元の発展に尽くしました。その尽力があったからこそ、小布施は現在、北斎の街、栗の街として全国的に知られる存在となりえたのです。
北斎の足跡がここに!
北斎と鴻山にゆかりの深い「小布施堂」。本店の正門は北斎が逗留していた当時のもので、この門をくぐって北斎が鴻山に会いに来ていたとか。
小布施堂本店は高井鴻山記念館に隣接していて、正門は葛飾北斎が滞在していた当時からのもの。鴻山を訪ねて北斎が通ったことを想像すると、北斎がいっそう身近に感じられます。また、小布施堂の商品パッケージには、北斎がデッサンした動植物がセンスよく用いられていて、北斎の旅のおみやげにもぴったりです。
小布施堂本店のレストランでぜひ味わいたい、「まろやかのこ」と抹茶のセット。小布施堂の菓子には、北斎が描いた絵が用いられている。獅子の絵柄は栗羊羹
北斎も堪能!? 小布施自慢の“栗”
「竹風堂」のできたて栗強飯。食事処・喫茶も併設。
秋の小布施でぜひ味わいたいのが絶品の“栗”です。小布施の栗は粒が大きくふくよかな甘みが特徴で、自然な味わいを生かした美味は小布施堂をはじめ、竹風堂、桜井甘精堂など、古くからこの地で店を構える老舗で独自の美味に仕上げられていて、目移りしそうなほどです。
並んでも食べたい! 栗モンブラン
北斎館の向かい側に位置する「傘風楼」で旬の時季だけ提供される「栗の点心 朱雀」お茶付き。中心街に立つ露店で売られている焼き栗も絶品!
「傘風楼」では秋の一時期だけ、栗だけを用いたモンブラン「栗の点心 朱雀」を提供していて行列必至で、露店の焼き栗も見逃せません。
酒蔵の一部を改装した和風レストラン「蔵部」
オープンキッチンの店内では炉端焼きやかまど炊きのごはんなど、日替わりメニューが多彩。この地ならではの味覚を堪能することができ、酒蔵でつくられた日本酒もそろっているので、ついつい長居してしまいそう。
写真/篠原宏明
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