国宝に指定されている『源氏物語絵巻』は、紫式部の書いた『源氏物語』を題材にした日本最古の絵巻です。今回はこの絵巻の中から問題です!
下の絵の中で、光源氏はどれでしょうか?よ~く見て当ててくださいね。
気になる正解は!?
正解を発表します!
答えは
……
……
3番です!
「え?どれも顔一緒じゃん!」と思った方。そうです。どれも一緒です。ごめんなさい。
ちなみに1は、柏木(かしわぎ)という、光源氏の妻と不倫した男性。2は、匂宮(におうのみや)という光源氏の孫です。
どうして全員顔が同じなの?
ここまで顔が似ている(ほぼ同じ)なのは、どうしてなのでしょう。その理由のひとつに「高貴な方々をリアルに描写してはいけない」という考えがあったことが挙げられます。また、あまりリアルに顔を描き分けてしまうと、お話のイメージが崩れてしまうという理由もあるようです。清少納言の書いた『枕草子』には、このように書かれています。
絵にかきおとりするもの、なでしこ、さうぶ、さくら。物がたりにめでたしといひたるおとこ女のかたち。
訳:絵に描くと残念なもの。撫子・菖蒲・桜。物語で美しいと言われる男と女の容貌。
物語の登場人物の姿が詳細に描かれていると、自分の中のイメージが崩れてしまうことは今でもありますよね。顔に特徴をもたせないのは、読者の夢を守るためでもあったのでしょう。
表情はしっかり描き分けられている
顔のつくりは全員ほぼ同じですが、よく見ると表情は細かく書き分けられています。
1枚目の柏木は、病の床に臥せっている姿。弱々しく物憂げな表情をしています。
2枚目の匂宮は、美人な妻と結婚してご満悦な姿。おちょぼ口がちょっとほころんでいる様子から、思わず「んふふっ」と笑みがこぼれちゃうような喜びが伝わります。
3枚目の光源氏は、妻と浮気相手の間に生まれた子どもを、わが子として抱き上げなければならなかったシーン。複雑な胸中が伺い知れる表情です。髭がないだけで、赤ちゃんもすでに同じ顔をしていますね。
『源氏物語絵巻』の登場人物の顔立ち自体はほとんど同じ。しかし、よく見ると細かな心の動きを表現しているのです。その緻密な心理描写もぜひお楽しみください。
画像:『源氏物語』国立国会デジタルコレクションより
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