日本を代表する名店にはその数だけ美しいストーリーがありました
数百年という時代を超えて、現代の私たちの心に響く名品を手がける老舗は、優れた長距離ランナーのように片時も努力と研鑽(けんさん)を惜しんではいません。またその多くが、暮らしの道具から食、服飾品まで、住々にしてその分野のトップランナーであることも、偶然ではないでしょう。驚きの技とセンスを磨き続けた老舗だからこそ到達できた、時代を超えて愛されるものづくりの境地があるのです。ここでは日本全国に点在する江戸時代以前の創業を誇る名店をご紹介します。老舗は技と美と物語の宝庫でもあるのです。
1 創業 一五七七年
『古梅園』
「墨の香や 奈良の都の 古梅園」と、夏目漱石が詠んだ墨匠「古梅園」は、今も興福寺にほど近い一角でその香りを漂わせています。
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2 創業 一八〇四年
『三谷製糖羽根さぬき本舗』
口に入れた瞬間ホロホロと溶けるやわらかな砂糖。「雪のように白く甘い」と称される讃岐(さぬき)の和三盆(わさんぼん)は、香川県の東端、瀬戸内海を臨む町でつくられています。
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3 創業 一五八二年
『印傳屋上原勇七』
山梨県に古くから伝わる甲州印伝は、漆を塗り付けて防水性を高めた鹿革を用いた工芸品。戦国時代の1582(天正10)年にこれを始め、人気を博したのが「印傳屋」遠祖の上原勇七です。
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4 創業 二八四年
『藤戸饅頭』
倉敷川に架かる盛綱橋と藤戸寺にはさまれた住宅地に、堂々とした風情の2階建て木造建築が。その起源を源平合戦に由来するという藤戸饅頭の本店です。
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5 創業 一五五〇年ごろ
『森野吉野葛本舗』
葛の本場奈良県の宇陀に、創業450年以上というまさに「ニッポンの老舗」というべきが葛屋があります。純度の高い地下水と冷涼な気候を求め、吉野川流域から1616年に当地に移った『森野吉野葛本舗』、白洲正子さんの名著「かくれ里」にも登場する老舗です。
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6 創業 室町時代後期
『とらや』
今をさかのぼること約500年前、室町時代の後期に京都の地で創業した和菓子の老舗が「とらや」です。16世紀の終わりごろには、禁裏御用菓子屋として既に御所御用を勤める存在となり、以来、歴代天皇や皇族をはじめとして、徳川将軍家や歴史上に名を刻むあまたの文人たちに愛され、和菓子界のトップブランドであり続けています。
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7 創業 一五三二年
『山路酒造』
滋賀県長浜の木之本町は、江戸時代の宿場町。近江と北陸を結ぶ陸路として栄えた“北國街道”沿いにあります。情緒あふれるこの街道で、行きかう旅人を480年以上昔から見守り続けてきたのが「山路酒造」。日本で5番目に古い酒蔵です。
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8 創業 一八七九年
『吉野鮨本店』
かつて魚河岸のあった日本橋で、屋台寿司から始まった「吉野鮨」。あらかじめネタは煮たり酢で締めるなど “仕事” を施し、客を迎える昔ながらの江戸前寿司屋です。
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9 創業 一八九三年
『うさみ亭マツバヤ』
300年以上もの歴史をもつ商人街の中心地、船場。伝統的な商家は主の家族に加え、番頭や丁稚(でっち)などの使用人が寝食を共にしていました。そんな大所帯の商家の暮らしを食で支えたひとつがこの店。
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10 創業 一九〇二年
『大黒』
「食い味をつける」とは大阪を代表する調理法。素材の持ち味を活かし、それを引き出すために味を施し、複合のうま味を生みます。「大黒」はそんな“浪速(なにわ)の食い味”が味わえるかやくご飯の専門店。