日本文化の入り口マガジン和樂web
5月15日(土)
「カレーの辿ってきた道」と「日本のお茶の歴史」は似ている
(タケナカリー)映画「HOKUSAI」公式サイトはこちら
日本文化の入り口マガジン 和樂web
日本文化の入り口マガジン 和樂web
5月13日(木)

「カレーの辿ってきた道」と「日本のお茶の歴史」は似ている
(タケナカリー)映画「HOKUSAI」公式サイトはこちら

読み物
Culture
2021.02.26

青春は単気筒エンジンの鼓動音と共に。40年以上の超ロングセラーバイクヤマハ「SR400」が生産終了へ

この記事を書いた人

40年以上もの間、日本のライダーの「親友」として走り続けたバイクが存在する。

ヤマハ・SR400である。

このバイクの発売は、1978年3月。実に43年前の出来事だ。空冷単気筒エンジンを搭載したSR400は、発表当時の水準で見ても決して「突出したマシン」ではなかった。70年代後半から80年代に至るまで、市販二輪車は熾烈な馬力向上競争とカンブリア爆発を繰り広げていた。2ストローク車と4ストローク車、250cc車と400cc車、2気筒車と4気筒車が複雑に入り乱れる中、SR400は移り変わる時代の狭間を快走した。

ライダーたちの夢と在りし日の思い出は、SR400と共にあったのだ。

40年前のバイクが大人気!

中古二輪車の売買を手がける株式会社バイク王&カンパニーが、こんなランキングを発表した。

『再び売却した際、高値の付くバイク』=『“リセール・プライス”の高いバイク』上位10車種である。リセール・プライスの高さは、そのバイクの人気の高さを表す。※Bike Life Lab調べ

対象期間は2020年9月~2020年11月。原付二種や大型二輪を含めた総合ランキングで1位に輝いたのは、ヤマハ・SR400だった。2位は2020年に発売されたばかりのホンダ・CT125ハンターカブ。

驚くべきことに、中古車市場では40年以上前の車種がトップに君臨しているのだ。

冒頭で書いたように、SR400は発表当時からも決して目立つ車種ではなかった。バイク雑誌ライダーズクラブ(エイ出版社)の1978年6月号に、同年2月11日に行われたヤマハの新車発表試乗会の記事が掲載されている。

SR500の走り振りは、ビッグシングル特有の力強さで、スタートは強引に走り出すが、マルチのフィーリングが身についていると、32PS/6500rpmというパワー特性が物足りなくなるかもしれない。

だが、1回毎の爆発行程が体に伝わる感じは、まさにビッグシングルそのものの味で、この車も本来はサーキット向きの車ではないことを知らされる。(中略)その点では、より高速型のエンジンと、ショートハンドルを組み合わせたSR400は、出力こそ27PS/7000rpmと小さいが、ピッタリ決まるライディングポジションと、軽快に回るエンジン特性に支えられよりサーキット向きのロードスポーツといえるフィーリングを示し、走り屋の好みそうな性格の車といえそうだ。

(ライダーズクラブ1978年6月号・エイ出版社)

この記事ではSR400よりも、同時に発表された上位版SR500に紙幅が費やされている。それもそうだろう。SR500とは欧米でセンセーショナルを巻き起こしたビッグシングルオフロードXT500のオンロード版という位置付けで、SR400は日本とヨーロッパ一部の法規制に適合させるためにスケールダウンされたマシンだ。あくまでも主役は500である。400はその弟分に過ぎない。

しかし、400のエンジンのストロークは500のそれよりも短い分、意外な高回転を発揮した。これがSR400独自の乗り味を生み出し、「500の弟分」から脱却する要因となった。

単気筒エンジンの特性

ここで、自動車のエンジンの「気筒」について説明しよう。

ガソリンエンジンは燃料の爆発がシリンダー内のピストンを上下させ、その運動がクランクに伝わる。このシリンダーの数が一つであれば単気筒、二つなら2気筒、四つなら4気筒と呼ばれる。

バイクの400cc車の単気筒とは、400cc分のシリンダーがエンジン内部に一つあるということだ。2気筒であれば、200cc分のシリンダーが二つ内蔵されている。では、シリンダーを細分化することにより何が違ってくるのか?

地面に木の杭が立っている。これをより深く、地中に刺し込みたい。そこで1人の人間が4kgのハンマーを振り回して杭を叩く。しかし1kgのハンマーを持った4人が交互にリズム良く杭を叩けば、4kgハンマーの者よりも短時間で作業を終えられるのではないか?

つまり4kgハンマーの1人が単気筒エンジン、1kgハンマーの4人が4気筒エンジンである。

気筒数が多ければ、そのエンジンは高回転を発揮することができるし馬力も上がる。では単気筒エンジンは低性能なのか? 決してそうではない。単気筒エンジンは加速の伸びが一定で、低速時のトルクに満ちている。停止した状態からの走り出しが容易ということだ。これはMT車では大事な要素である。

SR400の登場からすぐ、日本のモータートレンドはレーシング志向にひた走っていく。より速く、より大馬力を有し、より戦闘力に満ちたマシンがバイク雑誌の主役になった。が、SR400はそれとは一線を画す「カスタム性の高いバイク」としてのポジションを得ることに成功した。さらに単気筒エンジンならではの「気取らない、無理をしない」乗り心地は、永遠のスタンダードと呼ぶに相応しいものだった。

が、時代はやはり変わっていくのだ。

国内最終モデルが3月から

今年3月15日、ヤマハ発動機はSR400 Final Editionを発売する。これがSR400の国内最終モデルになる。タイ向けの生産は継続されるが、いずれにせよ日本におけるSR400の歴史は終焉を迎える。新しく施行される環境規制に、空冷単気筒エンジンでは対応が難しいためだ。

SR400は、変化する日本の光景を見つめ続けた。そして明るい夢と未来に胸を焦がすライダーを乗せ、日本中を疾走し続けた。

あの日の記憶は、単気筒エンジンの鼓動音と共に——。

【参考】
「SR400 Final Edition」を発売 ~43年変わらない“SRらしい”個性が人気のロングセラーモデル~ヤマハ発動機
Bike Life Lab supported by バイク王 『リセール・プライス』ランキングを発表『ヤマハ・SR400』が首位獲得!-PR TIMES
ライダーズクラブ1978年6月号・エイ出版社

書いた人

ノンフィクションライター、グラップリング選手、刀剣評論家。各メディアでテクノロジー、ガジェット、ライフハック、ナイフ評論、スタートアップビジネス等の記事を手がける。