夏の暑い時期に、野菜にあやかって、乗り切ろうとする儀式があるのをご存知ですか。
ここで、問題です!
その儀式に使う野菜は、何でしょう?
川や池などに住むという、あの妖怪!
河童が、だーい好きな野菜。
さて、答えは…….。
きゅうりでした!
伝えたのは、弘法大師!
きゅうりが使われる行事は、「きゅうり封じ」と呼ばれます。無病息災を願う寺の伝統行事で、「きゅうり加持(かじ)」とも呼ばれています。約1200年前に弘法大師が唐から持ち帰った厄除けの術と伝えられ、きゅうりに病魔を封じ込めて、人々の苦しみと病を取り除いたのが由来となっています。
どうしてきゅうりなの?
参拝者は「病気平癒」などの願いが書かれた紙をきゅうりに巻き付け、祈祷を受けます。人の体に見立てたきゅうりの中には、護符が挟み込まれています。その後家に持ち帰り、体の悪い部分をそのきゅうりで撫でて土に埋めます。病を封じ込めたきゅうりを地中に埋めて土に返すことで、病がなくなるという訳です。
どうして儀式にきゅうりを使うのでしょう? きゅうりは水分が多くてみずみずしい分、腐りやすい性質を持っています。土の中できゅうりが腐って、病もろとも一緒に自然に還ると信じられてきたようです。
家に持ち帰っても土に埋めることができない参拝者には、代わりに境内で埋めてくれる寺もあります。
土用の丑の日に開催!
きゅうり封じは、京都府や愛媛県、福岡県など各地で行われています。体力が低下する夏、とりわけ土用の丑の日に開催されることが多いです。夏の盛りで一番暑い時期、冷房もなく薬も豊富でなかった時代は、体調を崩すと命取りになりました。健康を祈る切実な思いは、昔も今も変わらないですね。
参考文献:『日本まじない食図鑑』吉野りり花著 青弓社
アイキャッチ画像:国立国会図書館デジタルコレクションより『水虎十弐品之圖』(江戸後期)