多くの人が毎日使う、文房具。アイデア満載の楽しい商品もたくさん販売されていて、コレクターも少なくないとか。工夫の凝らされた文房具は、見ているだけでもわくわくしてきます。
それにしても、具体的にはどんなものを「文房具」と呼ぶのでしょう? そして、文の房ってなに?
文房具ってどんなもの?
文房具って、なんとなくのイメージはあっても、どこまでを範囲に含めるのか、ちょっと悩んだりしませんか?
なにかを書くときに必要な道具を文房具と呼び、おもに鉛筆やペン類・消しゴム・ノート・定規などを指します。また、筆を使うのが一般的だった時代には筆・紙・墨・硯(すずり)・文鎮(ぶんちん)などがメインとなっていました。
『日本大百科全書(ニッポニカ)』によると、文房具は大きく以下のように分けられるそう。
〔1〕万年筆、ボールペン、鉛筆などの筆記用品
〔2〕インキ、字消し、筆入れなどの筆記関連用品
〔3〕ノート、帳簿、便箋、封筒、アルバムなどの紙製品
〔4〕画材用品
〔5〕書道用品
〔6〕デザインを描くのに用いるデザイン用品
〔7〕定規や製図器などの製図測定用品
〔8〕糊、接着剤をはじめ画鋲、テープ類、各種ファイルなどの整理用品
〔9〕スタンプ台、チェックライター、ナンバリングなどの印字用品
〔10〕そろばん、電卓などの計算用品
また、ペーパーナイフやはさみなどを文房具に含める考え方もあるようです。
文の房の具って?
文房具は文具とも呼びますが、じゃあ真ん中の「房」って何なのでしょう?
房は「厨房(ちゅうぼう=料理をする・部屋)」などと同じ「部屋」の意味を持つ単語で、「文房=書斎」で使う道具、という意味。
文房具は、もともとは中国の文人の書斎で使われていた用具を指した言葉です。そのため、古代中国では文房に置かれる琴・屏風・書画・陶器・玉器・銅器なども文房具に含めていたのだとか。
文房具は凝って当たり前?
文房具には昔から名品が多く、中国では唐の時代にすでに文房具を鑑賞の対象とする考え方がありました。宋の時代には筆・墨・硯・紙が「文房四宝」としてとても大切にされたといいます。
日本では平安時代以降に独自の文房具が生まれ、見事な細工の施された硯箱や文箱(文書を運ぶための箱)を現在でも美術館などで見ることができます。
手になじむ使い勝手のいいものを、といった要望が多い文房具には、小型で精巧でありながらある程度自由な形が取れるという側面もあります。そんな理由で、文房具は洋の東西を問わず、古くから趣味の道具となってきたのでした。
アイキャッチ画像:八島岳亭(岳亭春信)画、メトロポリタン美術館より
参考文献:
・『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館
・『世界大百科事典』平凡社
・『デジタル大辞泉』小学館
・『日本国語大辞典』小学館