正月を迎え、立春を過ぎると、新茶が待ち遠しい季節が訪れます。「夏も近づく八十八夜」という茶摘み歌があります。ところで八十八夜ってどんなものなのでしょう? お茶との関係は? 3分で読める紹介記事はこちらです!
二十四節気の基礎と八十八夜のおさらい
季節は、大づかみに説明すると、太陽の高さと地球の位置により決まります。太陽には黄道(こうどう)と呼ばれる、天球上の通り道があります。
黄道は24分割され、その分点に対応する形で二十四節気(にじゅうしせっき)が定められています。そのうち、毎年2月4日頃に当たるのが立春。
この立春から数えて88日目が、「八十八夜」です。
現在の暦では、毎年5月2日ごろが八十八夜となります。立春の日は年によって変わりますが、具体的には以下のとおりです。
立春:2022、2023年は2月4日
八十八夜:2022、2023年は5月2日・2024~2026年は5月1日
八十八夜に摘んだ新茶で健康長寿
「八十八夜の別れ霜」という言葉があります。これは、「立春から88日目=八十八夜のころは霜が降りる最後」という意味です。忘れ霜、別れ霜、霜の果(はて)などとも言います。
つまり、寒い季節が完全に終わり、これ以後は降霜の心配がなくなったことを意味します。農家ではかつて、田んぼの苗代を作ったり、畑の種まきや苗の移植をしたりといった農作業の目安日にしていました。
それから、茶摘みの適期でもあります。特に、八十八夜に摘んだお茶は、「病気にならない」「健康で長生きできる」などといった言い伝えのある縁起物です。確かに、お茶にはカテキン、テアニン、ビタミン類などの成分が含まれており、健康効果は科学的に証明されています。味や香りによるリラックス効果も見逃せません。
また、八十八夜ごろに摘まれたお茶は、「一芯二葉(いっしんによう)」といって、その年に育った若い芽2枚と芯芽だけで作るもの。フレッシュな味わいが楽しめる極上品です。
とはいえ、南北に長い日本では、八十八夜のころでもまだ寒い地方があります。全国的に暦通り、八十八夜を目安として作業を行っているわけではありません。
農業だけでなく漁業にも重要?
農業だけでなく、八十八夜を漁の目安とするところもあります。瀬戸内海のある地方では、豊漁期を指す「魚島時(うおじまどき)」という言葉があります。これは、「八十八夜の前後、産卵のためにタイやタコなどが集まり、たくさん獲れて、味もよい時期である」といった意味です。
旬のおいしいものとともに、季節の移ろいを教えてくれる二十四節気。1杯の新茶とともに、暮らしのリズムを楽しみたいものです。
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大日本物産圖會 第1帖 国立国会図書館デジタルコレクション
主要参考文献:
デジタル版「日本大百科全書(ニッポニカ)」
デジタル版「世界大百科事典」
デジタル版「世界大百科事典」
デジタル大辞泉