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〝大阪寿司の神様〟が築いた味が復活
たこ竹の「上ちらし」
生ネタがのらないのが大阪のちらし寿司。となれば、どんな具か気になるところですが、なんと、箱寿司のネタとほぼ同じ。よその店と競うところは錦糸玉子と寿司飯ぐらい。その違いだけでも十分に店の個性が出るのですが、「たこ竹」のちらしは別格です。
まずはこの贅沢な「あしらい」に注目ください。「むらめ」とも呼ばれる芽紫蘇(めじそ)に木の芽、三つ葉。季節によっては「むらめ」の代わりに大葉が入るそうですが、それぞれの香りと刺激が食欲をかきたてます。
「昔は手ごろに入手できたようですが、今は一定量をそろえるのに苦労しています。『むらめ』に似た色のあしらいとして『紅(べに)たで』もありますが、あれは辛くて使えませんね」と店長の岡山 正さん。「店の命ですから」と語る錦糸玉子は、白身魚のすり身入りで厚みも十分。銅の玉子焼器で表面を焼き、中はレアな状態でグリルに移して焼き上げます。しっとりした錦糸玉子に寿司飯を包んで口に入れる喜びといったら!
唯一無二のちらし寿司を考案したのは「たこ竹」の3代目。〝寿司の神様〟と同業者から呼ばれた腕利きの主人でした。しかしこの味も一度は街から消えることに。天保2(1831)年から続いたのれんは2018年、6代目の奥様によっていったんは下げられましたが、6代目の下で右腕として働いていた岡山さんにより、縁があって現在の場所で再びのれんを掲げ、「たこ竹」の味を復活させたのです。
店舗情報
たこ竹(たこたけ)
住所:大阪府大阪市北区天神橋3-8-1 シンワビル1F
電話:06-6881-2200
営業時間:11時~19時30分
休み:木曜
※冬季に限り、「さば棒すし」などの棒すしや「箱すし」を発送。電話にて相談を。
撮影/石井宏明 構成/藤田 優
※本記事は雑誌『和樂(2021年12・1月号)』の転載です。