気軽に芸術に触れあえる場『PLATFORM13』
JR東日本は「アート」を軸とした新しいサービス・価値の提供を目指して、2023年に東京藝術大学と包括連携協定を締結。その取り組みとして、壁面にデジタルアート映像を大きく投映する『PLATFORM13』を、私たちが気軽に芸術に触れ合える場として上野駅13番線ホームに設置しました。
JR東日本マーケティング本部 まちづくり部門長の高木造一さんによると、「現在25メートルのこのアート空間が来年度は4倍の100メートルに規模を拡大します」とのことですので、力の入れようが伝わってきます。
東京藝術大学学長 日比野克彦さんは、「上野駅、私もよく使っております。私が藝大を受験する時、初めてこの駅の公園口に降りて、上野公園を横切って大学に行きました。なじみのある上野駅がこのようなアートの拠点となったことは感慨深く、これからも東京藝術大学、小学館、JR東日本で連携しさまざまなアートを発信していきます。今日はホームでの授賞式ということで、受賞者のみなさんは、これから上野駅に来るたびに『ここで授賞式があったな』と思い出すことでしょう」とコメントしました。
授賞式レポート
美術作品部門
大賞を受賞した間瀬春日さんは、日比野克彦学長から賞状を受け取りました。
間瀬 春日(作品名:はろう)
美術部門受賞者を代表した間瀬さんのスピーチの中で、印象的だったのは次の言葉です。
「皆さんに問いたいのですが、ご自身の作品が100年後どうなっているか、考えた事はありますか? 自分自身がいなくなった後も“遺したい”と思わせる作品をつくることが、私たち作家の使命ではないかと考えています。これからもそういう思いを持ちながら修復や制作を続けていきたいと思います」
文化財保存学という、修理や保存を専門とした研究室で漆芸品の保存修復を研究している間瀬さんは、学部生時代にお世話になった輪島塗の工房の先生にも言及。今回の受賞にお祝いの言葉を寄せてくれたその先生は、被災地・輪島から「作る人を絶やしてはいけない」というメッセージも彼女に伝えたそうです。間瀬さんは、それも作品を保存する1つの方法だと考え、漆に関わる者として、制作の手を止めることなく、しかるべき時が来たら輪島や社会に還元できるように学んでいきたいと語りました。
続いて、準大賞の柿沼美侑さん、futabaさん、小学館賞の白井雪音さん、審査員特別賞のRo Kikoさん、河崎海斗さんが表彰されました。
小学館CLOUDEAR「GEIDAI ARTPLAZA ART AWARD 2024」にてデジタルカタログを公開!
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デジタルアート部門
小学館賞を受賞した諏訪葵さんは、小学館代表取締役社長 相賀信宏さんから賞状を受け取りました。
諏訪葵(作品名:ガラス玉をひとつ)
デジタルアート部門受賞者を代表したスピーチの中で、諏訪さんは次のように語りました。
「学部は油画ですが、インスタレーション作品を作ることが多く、今回デジタル部門が新設されると聞いて興味を持って応募しました。インスタレーションは写真や映像で撮影しないとなくなってしまう、一回性が強いものが多いので、大切なものを遺す方法ついて考えることがあります。今回の作品は、ガラス玉の向こうに映像が流れているというものですが、そこに流れている作品は2020年のコロナの禍のときのもの。インスタレーション作品を、無人・無観客の状態で展示して、映像だけをオンライン配信しました。ですので、ここにある作品は、その時の映像を今の目でもう一回見るという構図になっています。そういった、アーカイブされた映像がもう一回現れてくるような感覚が非常に大事だと思って制作しました。今回、このような駅の構内に展示させていただくことで、かつて撮影した光が空間に立ち返ってくるような充実した経験ができました」
JR東日本賞
武田萌花(作品名:Day Tripper (2023) )
審査員特別賞(エプソン販売株式会社)
藤本陸斗(作品名:Emerged Colors 00)
デジタル部門の作品は小学館メタバース「S-PACE(スペース)」にて公開中!
作品をみる
藝大アートプラザを駅のような場に
式の最後には、藝大アートプラザ所長である箭内道彦さんからのスピーチもありました。
「今日このようなステキな場所で授賞式をさせていただき、藝大アートプラザは駅にも似ているなと思いました。多くの人々が行き来し、集まり、そこから出発していく人がいれば帰ってくる人もいる。藝大アートプラザが、もっともっと駅のような場所になっていくように新しい取り組みをしていけたら良いなと感じております。そして、今日受賞された皆さんおめでとうございます。スピーチもすごく良かったですね。背伸びせず思っていることを率直に話してくれた様子が、作品と繋がっていることを感じさせてくれました。今年から新しい部門もできたこの賞が、藝大やアートの可能性をもっと広げ、社会を良くしていけると良いなと思います」
上野駅を行き交うたくさんの人々が、公園を横切って東京藝術大学を訪れ、藝大アートプラザや構内の美術館で新しいクリエイティビティーに出会うきっかけになる!『PLATFORM13』でのアートアワード授賞式は、そのような希望に満ちあふれていました。
アイキャッチ撮影:永田忠彦