“丁寧な時間”を味わうなら、着物がぴったり
今回の着物旅は、心ときめくアフタヌーンティーへ! なぜ着物でアフタヌーンティー? と思いましたか??
着物を着ると、自然と全ての動作がゆっくりしますよね。袂を押さえたり、つまをあげたり……そんな動作から生まれるゆったり感と、時間をかけて色々なお菓子を楽しむアフタヌーンティーの親和性って、とても高いと思うのです。
もちろんお洋服でオシャレしてアフタヌーンティーも最高ですが、オシャレに所作、ゆっくり流れる時間、そして美味しいお菓子まで……全てを味わって楽しむなら、着物が断然オススメなのです♪

今回、私が伺ったのは、横浜中華街の近くにある『フォリウム フロリス TAKARAZUKA』!
プライベートでも度々訪れている、私の激推しアフタヌーンティーです。駅からお店に行くまでは、馬車道という地名の通り、馬車のモチーフが散りばめられた通りを歩いていきます。すると、夢の世界への看板が……!

階段を上りフラワーアーチをくぐったらもうそこは非日常!お花やドレス、調度品……さまざまな“可愛いもの・美しいもの”で彩られた店内へ。
宝塚からロンドンへ。夢を形にしたパティシエ、みずき愛さん

迎えて下さったのはオーナーパティシエのみずき愛さん。みずきさんは1989年に宝塚歌劇団に入団、花組の娘役としてご活躍ののち、退団後1997年に単身渡英、ロンドンで10年間パティシエの修行をされました。
子供の頃からお菓子作りが大好きだったみずき愛さん。宝塚歌劇団を退団する時にパティシエを志し、イギリスでは国家資格となるシュガークラフトを専攻。「カレッジでシュガークラフトを学んだ日々は夢中で楽しかった」と話してくださいました。

専門学校を卒業後、イギリスの出版社が主催した大会で優勝し、作品集も出版されています。みずきさんの作品集は「綺麗」と「可愛い」がいっぱいに詰まっていて、ずっーっと眺めていると時間を忘れてしまうほど!
優勝作品は出版社に寄贈し、今でも展示されているそうです。シュガークラフトって、アートなのですね。
タレント・中山秀征さんと元タカラジェンヌ・白城あやかさんの結婚式の際には、ウェディングケーキを英国から日本に空輸したというエピソードも! その壮麗さでみずきさんのシュガークラフトは日本でも一躍有名になりました。
薔薇が紡ぐストーリー。テーマは「アンティーク・ローズ」

今回いただいたアフタヌーンティーは「アンティーク・ローズ」。見てください! ハイティースタンドに並ぶお菓子全てが薔薇のモチーフになっています。みずきさんの手にかかれば、パイ生地だけじゃなくサーモンも葡萄も、どんな食材だって薔薇に変身できるのですよ……! そして見た目だけじゃなく、味も最高に美味しいんです! まるで魔法のよう……。
「最後まで飽きないで食べてもらいたいから、一つ一つが甘すぎないように、全体のバランスを大切にしています」と、みずきさん。「宝塚時代に出演していたショーをイメージして、全体のテーマを決めた後に、ストーリーを一つ一つのお菓子に込めて表現しています」とも。視覚・味覚・嗅覚以外にも想像力までが満たされるアフタヌーンティーの満足度は唯一無二です。
実は私、『フォリウム フロリス TAKARAZUKA』でアフタヌーンティーを頂くのはもう4回目になるのですが、毎回、美味しさとストーリーに新鮮な感動を憶えるのです。いつも絶対に完食したいので、当日は朝からコンディションを整えて、アフタヌーンティーに臨んでいます。そのくらい、全てが美味しい!

そして、美しいお菓子に更に華を添えるのが、シュガーレースの存在。様々な柄が描かれたプレート状のお砂糖を、専用のスプーンで(もしくは指でつまんで)紅茶の表面に浮かべます。すると、時間と共にお砂糖の薄い部分が先に溶けて、柄がくっきり浮かびあがってくるのです。その儚く美しい様子を眺めながら、また美味しいお菓子をいただき、おしゃべりに華を咲かせる……最高の時間です♡
「ないなら作る!」特許も取得した情熱のかたち
「英国ではシュガークラフトはウェディングケーキなどの大型作品として知られていますが、日本ではあまり知られていませんでした。そこで、どうにか親しんでもらえる方法はないかと考えて、アフタヌーンティーの時に紅茶に浮かべて楽しめる“シュガーレース“を考案しました」

まさか! 紅茶に浮かべるシュガーレースはみずき愛さんがこの世に生み出したアイテムでした!! 「一番最初にお砂糖を紅茶に浮かべようとした人ってすごいな〜」と思ってましたが、ここにいたとは……。
「最初は手作業で一つ一つ作っていたのですが、大量生産できないかと考えて、全国の製造機メーカーを回って、シュガーレース専用の機械を作りました」と、みずきさん。なんと、シュガーレースの特許をお持ちだそうです。特許って本当に取れるんだ……!

さらに、ハイティースタンドやシュガーレースのためのスプーン、スタンドなどの銀製品も全てオリジナルの特注品なのだとか。「欲しいものがなかったから作ればいいと思っている」というみずきさんの言葉を聞いて、私はある言葉を思い出しました。
それはマリーアントワネットの「パンがなかったらお菓子を食べればいいじゃない」。ベクトルは全然違いますが、どちらもハイレベルな突き抜け方をしていらっしゃるのです。
「欲しいものがないのだったら、作ればいいじゃない!」
おっしゃる通りです!!! 大事なことは2回書く!!
美しいものに包まれる、“夢のようなアフタヌーンティー”の世界

『フォリウム フロリス TAKARAZUKA』の店内は、まさに夢の世界。フラワーウォールにレースのドレープカーテン、美しいドレスや調度品、どこにも隙がない完璧な世界観に酔いしれます。
メニューはもちろん、お店の内装やお花まで、全てオーナーシェフのみずき愛さんのプロデュース。シュガークラフトだけでなく、アフタヌーンティー、紅茶、フラワーアレンジメントの資格も取得しているそうです。「思ったよりも勉強が大変だったけど、宝塚時代に培った体力と気合いで意外と乗り越えられちゃうの」とサラッとした語り口。

みずきさんとお話していると、儚げな外見からは想像もできないようなバイタリティに、圧倒されます。ご実家が着物のデザインから仕立てまでを手がける製造業をなさっていて、子供の頃からお祖父様に「美味しいものや美しいもの、それを感じ取る五感は経験により培うもの」と教わってきたそう。「“ものづくりの精神”が自分の中にも流れている」ともおっしゃっていました。
“ものづくりの精神”と、またもやサラッと仰るみずきさん。あえて言語化させていただくと、「自身の中にある拘りを具現化するために、時間と労力と投資を惜しまない姿勢、そしてそれを実現する行動力」だと思うのですよね。どんなに大変なことか、想像もつかないほどのことを、実行できるってすごい……。
毎回変わるアフタヌーンティーのテーマ(ショーの演目!)と、一つ一つの美味しいお菓子、日常を忘れさせてくれる空間。そしてみずき愛さんのふんわりしたビジュアルとバイタリティ溢れるマインドのギャップに、クラクラするほど感銘を受け、お腹も心も満たされて、今回もお店を後にしました。
次はどんなテーマかな? どんな着物で行こうかな? お店を出ても、みずき愛さんの魔法は心に残るのでした♪
店舗情報
フォリウム フロリス タカラヅカ サロン・ド・馬車道
横浜市中区太田町5-63 EEL馬車道 2階
Tel. 045-263-6388
公式ウェブサイト
撮影/根本佳代子 構成/石川ともみ

