Craftsmanship

2026.07.04

【101年目の民藝】「無欲でつくられたものは、使っていて心地いい」スタジオ木瓜主宰・日野さんに伺う民藝の取り入れ方

「民藝」という言葉が生まれて100年の節目として、展覧会やイベントで盛り上がった2025年。101年目となる今、民藝はどこへ向かっているのでしょうか。新しい“何か”を探しに、民藝の現場を訪ねてきました。おふたり目は、ひとり問屋「スタジオ木瓜(ぼけ)」を主宰する、日野明子さんのお話です。

「101年目の民藝は“バランス”なのかもしれません」(日野明子さん)

インターネット、特にSNSの発達によって、民藝を取り巻く環境は大きく変わりました。どこでだれが何をつくっているのかはもちろん、話題性や希少性も可視化でき、自分の感性でものを選ぶことが難しくなりました。

私は、暮らしに馴染み、主張しすぎないものが好き。考えすぎず、作為なく、無欲でつくられたものは、使っていて心地いい。そういうものが民藝だと思います。
そんなふうに自分の感覚でいいなと思えるものを、生活環境にどう取り入れるのか。101年目の民藝は“バランス”が大切なのかもしれません。

一方で、その土地ならではの材料や、育まれてきた技術を継承して“つくり続ける”ことはこれからの民藝において重要な課題です。

「考えすぎず作為なく、すっとできたものは心地がいい」(日野さん)

たとえば、神奈川の中津箒(なかつほうき)。自分たちで材料のホウキモロコシを農薬不使用で育て、無理のない働き方で一度廃れた仕事を復活させました。

一度途絶えた伝統の手仕事を復活させ、現代の暮らしに沿うようつくられた神奈川の「中津箒」。「山型小箒20cm」5,500円(取り扱い店「中津箒/まちづくり山上」)

岩手で南部鉄器の鉄瓶を手がける佐々木奈美(ささきなみ)さんは、東日本大震災後に鉄瓶職人養成事業に応募し、独立。
若い感性を活かした、現代のキッチンに馴染む端正な鉄瓶が人気です。

岩手・南部鉄器の産地、水沢で制作する「奈の花」佐々木奈美さんの南部鉄器の鉄瓶は、伝統的な形を踏襲しながらもどこかモダンで、キッチンにすっと馴染む美しさ。「平筒形 梨地肌(なしじはだ)」66,000円(取り扱い店「夏至」)

それから、「民藝は使ってなんぼ!」を実感する平岡正弘(ひらおかまさひろ)さんの拭き漆のカトラリーは、持った感じも口当たりも素晴らしい。

使い心地抜群の拭き漆のカトラリーを手がけるのは岩手に工房を構える平岡正弘さん。「拭き漆カトラリー」テーブルスプーン、フォーク(18.8cm)各6,930円 デザートフォーク(16cm)5,830円 ケーキフォーク(14cm)5,500円(取り扱い店「THE STABLES」)

また、胡桃(くるみ)を心から愛し、納得する樹皮を選んで採り、樹皮の性質、表情に合わせた作品づくりを自分のペースで行っている山形の一景舎(いっけいしゃ)さんの作品もいい。(「工藝風向」https://foucault.tumblr.com/で取り扱われています)

それから、柳宗悦(やなぎむねよし)が朝市で見つけ、その美しさに感動し再興させた丹波布(たんばふ/たんばぬの)。
その思いを今に引き継ぐ織姫のひとり、閑林美圭(かんばやしみか)さんは本来の縞織を無地に見えるような格子で仕上げています。
いずれもずっと使っていきたい品ばかり。

閑林美圭「丹波布まふらー」約8cm×60cm 22,000円(取り扱い店「仙台光原社」)

101年目こそ、「いい仕事を長く続かせる」ために、自分の目で選び、使い続けましょう。(日野さん談)

日野明子さんprofile

ひの・あきこ 1967年生まれ。1999年「スタジオ木瓜」設立。百貨店やショップ、作家、産地をつなぐ問屋業を軸に、地場産業のアドバイスなども。インスタグラム:@a_hino

●日野さん推薦品の取り扱い店公式サイト

「夏至」https://www.geshi.jp/
「THE STABLES」https://thestables.jp/
「中津箒/ まちづくり山上」https://nakatsuhouki.jp/
「仙台光原社」https://kogensya.sakura.ne.jp/

※本記事は雑誌『和樂(2026年6・7月号)』の転載です。
※掲載している価格は、すべて税込価格です。
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和樂web編集部


撮影/鈴木静華 構成/田中美保、鈴木智恵(和樂)
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