地元木材を使った漆器づくりが評判!「木漆工とけし」の工房へ

緑が茂り光のあふれる仕事場で磨かれる感性
木地師(きじし)の渡慶次弘幸(とけしひろゆき)さんと塗師(ぬし)の愛(あい)さん夫妻は、地元沖縄の工芸指導所で学んだ後に、石川県輪島でそれぞれの師の元で修業を積みました。
故郷に戻り独立した当初は、輪島から木材を取り寄せて輪島塗の技法で漆器を制作したものの、違和感を覚えたのが最初の転換期だったとか。
「窓に広がる島の景色と食卓の上の輪島塗がしっくりこなくて困りました。上塗りがきっちり施された漆器がこっちでは重たく感じて」と弘幸さん。
そこで地元木材を使って沖縄の強い光にも合う漆器を、と試行錯誤した結果、「岳鉢(たけばち)」にたどり着いたそう。

材はセンダン。高温の沖縄は木の成長が早く、木肌は粗い。その木肌を生かすように、弘幸さんは挽き目を残した木地の仕上げを施しました。
続いて愛さんは漆を下塗り、そこに地の粉を蒔(ま)いて漆を重ねる蒔地(まきじ)の技法を使ってマットな肌目に仕上げました。
センスが光るのは、蒔地仕上げが生きるように、下地漆を調合して錆(さび)のような風合いを出したこと。
エイジングされたような漆の質感は、センダンの木肌と絶妙に調和しています。
「沖縄でつくる漆器と言えるものができたかな。やちむんの隣に置いても、なじみますよね」と愛さん。

輪島の学びを沖縄で。琉球漆器の技術を次世代に伝えたい
蒔地仕上げのシリーズの「錆」「錫(すず)」「金」「黒」といった色調とツヤのない肌が人気を得て、一躍脚光を浴びたふたり。ところが、ここで再び立ち止まります。
「僕たちの漆器がモダン、と言われることにモヤモヤして(苦笑)。たとえば黒と錫の組み合わせは、琉球時代の漆器を模したもの。沖縄の暮らしになじむ漆器がつくりたい僕たちとしては、それならば基本に戻って上塗(うわぬ)りの漆器を自分たちなりに追求しようかと」(弘幸さん)。
そこで完成したのが、“塗り込みすぎない”上塗りのお椀。
「沖縄に拠点を移して15年ほど。3年前の個展で、地元の方々が上塗りのお椀を求めてくださったことは、うれしかったです。上塗りにしかない口あたりのよさが伝わったんだと」と嚙み締めて語る弘幸さんと隣でうなずく愛さん。

今、取り組んでいるのは琉球漆器の復刻。
かつて献上品として重宝された琉球漆器を、現代の琉球漆器として再構築してみたいとか。
琉球漆器に伝わる手わざを次世代に伝えることも自分たちの役割と信じて、新たな道を歩むふたりです。


●「木漆工とけし」の漆器は那覇市の「ガーブ ドミンゴ」https://garb-online.com/、「ルフト ショップ」https://luftworks.jp/shop/で取り扱い中。
2026年の個展開催予定
9月(日程未定)京都「CIRCLE THE GALLERY」https://ctg-kyoto.com/
10月1日〜5日 沖縄「ルフト ショップ」https://luftworks.jp/shop/
11月6日〜15日 福岡「工藝風向」https://foucault.tumblr.com/
※掲載している価格は、すべて税込価格です。

