Craftsmanship

2026.07.08

沖縄の風土で生まれ、生きている、愛すべきもの。「木漆工とけし」の漆器

沖縄の民衆の共同作業から生まれる染織、漆器、焼物といった手仕事の美しさを、柳宗悦(やなぎむねよし)は“琉球の文化的富”と称え、その美は現在もさまざまな人の手で継承されています。そこで「最先端のものづくり」と、「時代を超えて人々が守る美しいもの」、ふたつの出合いを求めて、沖縄本島を旅してみました。旅の始まりは、民藝界を盛り上げる人気ユニット「木漆工(もくしっこう)とけし」の工房へ。沖縄の風土に根ざした漆器、木工品をつくるふたりが広く受け入れられる理由をひもときます。

地元木材を使った漆器づくりが評判!「木漆工とけし」の工房へ

左/渡慶次愛さん(右)と、弘幸さん(左)。右/工房は北部にあり、豊かな自然も創作の発想源に。2026年夏にそれぞれの工房を拡張して構える予定。

緑が茂り光のあふれる仕事場で磨かれる感性

木地師(きじし)の渡慶次弘幸(とけしひろゆき)さんと塗師(ぬし)の愛(あい)さん夫妻は、地元沖縄の工芸指導所で学んだ後に、石川県輪島でそれぞれの師の元で修業を積みました。
故郷に戻り独立した当初は、輪島から木材を取り寄せて輪島塗の技法で漆器を制作したものの、違和感を覚えたのが最初の転換期だったとか。

「窓に広がる島の景色と食卓の上の輪島塗がしっくりこなくて困りました。上塗りがきっちり施された漆器がこっちでは重たく感じて」と弘幸さん。
そこで地元木材を使って沖縄の強い光にも合う漆器を、と試行錯誤した結果、「岳鉢(たけばち)」にたどり着いたそう。

輪島塗の技法を、沖縄の光に合うものにするために試行錯誤して完成した「岳鉢」。

材はセンダン。高温の沖縄は木の成長が早く、木肌は粗い。その木肌を生かすように、弘幸さんは挽き目を残した木地の仕上げを施しました。
続いて愛さんは漆を下塗り、そこに地の粉を蒔(ま)いて漆を重ねる蒔地(まきじ)の技法を使ってマットな肌目に仕上げました。

センスが光るのは、蒔地仕上げが生きるように、下地漆を調合して錆(さび)のような風合いを出したこと。
エイジングされたような漆の質感は、センダンの木肌と絶妙に調和しています。

「沖縄でつくる漆器と言えるものができたかな。やちむんの隣に置いても、なじみますよね」と愛さん。

「岳椀(黒)」16,000円、「へら匙(小錫)」12,000円。

輪島の学びを沖縄で。琉球漆器の技術を次世代に伝えたい

蒔地仕上げのシリーズの「錆」「錫(すず)」「金」「黒」といった色調とツヤのない肌が人気を得て、一躍脚光を浴びたふたり。ところが、ここで再び立ち止まります。

「僕たちの漆器がモダン、と言われることにモヤモヤして(苦笑)。たとえば黒と錫の組み合わせは、琉球時代の漆器を模したもの。沖縄の暮らしになじむ漆器がつくりたい僕たちとしては、それならば基本に戻って上塗(うわぬ)りの漆器を自分たちなりに追求しようかと」(弘幸さん)。

そこで完成したのが、“塗り込みすぎない”上塗りのお椀。

「沖縄に拠点を移して15年ほど。3年前の個展で、地元の方々が上塗りのお椀を求めてくださったことは、うれしかったです。上塗りにしかない口あたりのよさが伝わったんだと」と嚙み締めて語る弘幸さんと隣でうなずく愛さん。

上塗りシリーズの「壺椀」(小低・赤)12,000円〜。材はクスノキ。

今、取り組んでいるのは琉球漆器の復刻。
かつて献上品として重宝された琉球漆器を、現代の琉球漆器として再構築してみたいとか。
琉球漆器に伝わる手わざを次世代に伝えることも自分たちの役割と信じて、新たな道を歩むふたりです。

琉球漆器の復刻プロジェクトを通して手がけた、螺鈿(らでん)の椀。夜光貝を膠(にかわ)で貼るなど、古い時代の技法にも発見があった。

左/ハマセンダンを鉋で削る弘幸さん。右/ハマセンダンの丸葉皿(まるばざら)に木地固めを施す愛さん。

●「木漆工とけし」の漆器は那覇市の「ガーブ ドミンゴ」https://garb-online.com/、「ルフト ショップ」https://luftworks.jp/shop/で取り扱い中。

2026年の個展開催予定

9月(日程未定)京都「CIRCLE THE GALLERY」https://ctg-kyoto.com/
10月1日〜5日 沖縄「ルフト ショップ」https://luftworks.jp/shop/
11月6日〜15日 福岡「工藝風向」https://foucault.tumblr.com/

※本記事は雑誌『和樂(2026年6・7月号)』の転載です。
※掲載している価格は、すべて税込価格です。
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和樂web編集部


撮影/長谷川 潤 構成/藤田 優、古里典子(和樂)
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